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ちっちゃい嫁と、さらにちっちゃくなった旦那のお話2

今日は久々にかぶったお休み。
寝坊しちゃおうと思って、二人で軽くお酒を飲んで
布団に入った。

「何でちっさくなってるんだろう…」

彩陽ちゃんの膝の上で、小さな手をぐーぱーぐーぱー

「んー、わかんないなー。でも、特に困ることは無いからいっかなー…
今日はお休みだし。」

眉を八の字にして頭を撫でてくれてる彩陽ちゃんを見上げ
にかっと笑う。
彩陽ちゃんの頬が少し赤くなった気がした。

「と、とりあえず!はるちゃんと美菜ちゃんに連絡しよう?」

そう彩陽ちゃんが提案すると同時に、玄関のチャイムが鳴る

「はぁーい」

いつも通りに玄関に向かおうとすると
彩陽ちゃんに抱きかかえられた。

「おぅ…彩陽ちゃん力持ちー」

「っ、い、いいからあきちゃんはちょっと待ってて?」

ソファーに座らされて、頭を軽く撫でると
彩陽ちゃんは玄関に向かってしまった。

数十秒もたたないうちに
美菜ちゃんの声が聞こえ、彩陽ちゃんの
驚く声が聞こえた。

「こ、こらはるちゃん!!」

「えぇ!?はるちゃん!?」

何となく予想はついていた。
けど、その予想は彼女の姿を見て確信に変わる。


「おぉ!あきちゃんもちっちゃい!!!」

「は、るちゃん…?」


目の前には黒髪の女の子が一人。
面影はある。
多分彼女が今回の事件の犯人だろう。

さあ、話を聞かせてもらおうか戸松遥。

頭を抱えてうなだれている美菜ちゃんと
どうしたらいいかわからないという、表情を浮かべている
彩陽ちゃんも一緒にね。

ちっちゃい嫁と、さらにちっちゃくなった旦那のお話1

今日は珍しくお休みの日曜日。
昨日は少し夜更かしをして、それからお昼まで寝ちゃおっかー
なんて言って2人でベッドへ。

「ん…」

隣を見ると愛生ちゃんはいなくて
もう起きたのかななんて思いながら、ベッドを抜けて
リビングへ。

「…あきちゃぁん…あれ…?」

いると思っていたリビングにはその姿はなくて
トイレにもお風呂にもいない。

「おでかけ…?」

ベッドの脇のテーブルに置いている携帯も見るもメールも何もなし。
こういう時必ずメールしてくれるから、おでかけの可能性はない。

「あきちゃん、どこ行ったんだろう…」


ふぅと一息つくとほぼ同時に
布団がもぞもぞと動いた。

身体を少し跳ねさせ、動く布団を見つめる。

(ど、泥棒…)

いやいや、それはありえない。
大きさ的に子供ぐらいだし
何より戸締りはしっかりしてる。


「あやひちゃん…起きた…?」

布団から出てきたのは
小さい女の子
多分幼稚園児ぐらい。
大人用のパジャマを着ているみたいだけど、そのパジャマには見覚えがあった。
2人で買い物に行った時に
お揃いだねー!
なんていいながら買ったうす緑のパジャマ。

それを着ているという事は…

「あ、あきちゃん…なの…?」

 

なになに?あやひちゃん寝ぼけてるのー?
なんて言いながら笑う、彼女の口元には
可愛い八重歯が見えていた。

visage souriant2

町外れにある、決して大きいとは言えないパン屋さん
従業員も4人と少なめでだけど、味は絶品と近所で評判のパン屋さん。

「はるちゃん!メロンパン、あんぱんを10ずつ追加!
愛生ちゃんはカツサンドとミックスサンドを15パックずつ追加ね!」

レジを打ちながら工房の方に向かって指示を出すのは
売り場担当の美菜ちゃん。


「マジンガー!?うわー、これは結構きついかも…」
「ほいほい、どんどん作ってくから出来たら持ってくねー」

眉を下げて、情けない声を出しながらパンの成型をしているのがはるちゃん
対照的に呑気に鼻歌を歌いながらサンドを作っているのが愛生ちゃん。

visage souriantのパンはこの2人が協力して作っているのです。
おじいちゃんがいた頃は、シンプルな菓子パンがメインだったんだけど
愛生ちゃんが入ってから、新商品も増えて
お客さんの数もぼちぼち増加中。

「美菜ちゃんはさー、人使いが荒いんだよー
しかも、愛生ちゃんには優しいのに私には何か冷たいし…」
「あーそれは多分、愛情の裏返しだよー
ほら、美菜ちゃんって素直じゃないじゃん?」
「愛情!?そうか…美菜子が私に…よっしゃ!!気合入れてパン作ってくる!
待ってろ美菜子!今持って行くぞー!」


はるちゃんは美菜ちゃんの事が大好きみたいで
美菜ちゃんが絡むと、ちょっと頑張りすぎちゃう事があります。

 

「ちょっと!!!10ずつって言ったでしょ!
何で30ずつ作ってるの!?」
「えっと…が、頑張りすぎちゃいました…はは…」
「全く、どうするのよ…」

今は18時を回ったところ
主婦や学生さんを狙うには、少し遅い。

「どうしたらいいんだろう…」

お店を継いだには継いだけど
経営に関しては、まだまだ素人。
いいアイディアも浮かばないし、機転もきかない…


「んー…じゃあさ、お店の前にワゴン出してパンのセットにして
売ろうか。普通に売るよりはちょっと損になるけど
元は取れるし、何よりパンが売れ残っちゃうより全然いいから、ね?」


ふわっとした笑みを浮かべ、2人に提案する愛生ちゃん

「愛生ちゃんナイス!それで行こう!はるちゃんも
このくらい気が利けばなぁ…」
「うっ…ほ、ほら!さっさと準備しようぜー!!」
「ちょ、ちょっとはるちゃん!押さないでよ!!」

美菜ちゃんの背中を押しながら、はるちゃんは売り場の方に
消えていった。

「あーやーひーちゃん」
「え、な、何?」
「あんまり、真剣に考えすぎると疲れちゃうよー?
ほら笑顔笑顔」

そう言って、背が低い私に目線を合わせて
頭を撫でてくれる愛生ちゃん。

「ごめんね…愛生ちゃん…」
「んー?」
「私…店長なのに頼りないし、みんなにいつも助けてもらって…」
「彩陽ちゃんは気にしすぎ。はるちゃんも美菜ちゃんも、私も
彩陽ちゃんが、毎日遅くまで一生懸命頑張ってるの知ってるよ?
だから、私達はそんな彩陽ちゃんとこのお店をやっていきたいの。」

いつものふわふわした感じは全く無くて
真剣な顔で見つめる愛生ちゃんに、胸がちょっとだけ苦しくなった。

(愛生ちゃんって、こんな顔するんだ…)

「愛生ちゃん、彩陽ちゃん!準備できたよー!!!」

売り場の方から嬉しそうなはるちゃんの声が聞こえる

「ほいほい、今行くよー」

その声にいつものように返事を返して
愛生ちゃんは、厨房を出て行った。


visage souriant1

ここは都心から少し外れた街の
更に端の方にある、小さなパン屋さん
名前は"visage souriant"

少し前まで人のよさそうなおじいさんが
パンを作っていた。

食べる人の事を考えて
丁寧に丁寧に作られたパンはどれも絶品で
近所で評判のパン屋さん。

そんなパン屋のおじいさんが
亡くなったのはつい3ヶ月前の事。

残されたのはお店と、おじいさんの孫娘。
それにおじいさんと一緒にパンを作っていた幼馴染の遥。

孫娘の彩陽ちゃんは悩みました。
いくら遥がいるとはいっても、前みたいにお店をやっていく事は出来ないかもしれない。
彩陽ちゃんは、店を畳むか悩んでいる事を遥に話しました。

すると彼女は、近所に住む幼馴染を2人連れてきたのです。
1人は少し気の強そうな彩陽ちゃんと同じ歳ぐらいの女の子。
もう1人はふんわりと優しそうな雰囲気が伝わってくる女の子。

女の子は美菜子、もう一人は愛生
2人とも幼馴染で、最近まで隣町のパン屋で
働いていたのですが、不況によりそのパン屋が潰れてしまい
ちょうど新しい仕事先を探している。
と遥は彩陽に教えてくれました。

 

このお店を失いたくない。
その気持ちは遥も同じでした。
4人の幼馴染は毎日毎日遅くまで話し合い
ようやくお店を再スタートさせたのでした。

 

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