家族で旅行をして、お土産を見てる時。
わたしはあるモノを見つけた。
それは…、
「…美瑠さんそっくりや。」
美瑠さんに似た、お猿さんのぬいぐるみを発見して、手に取って見れば美瑠さんにしか見えなくて、思わずそのぬいぐるみを撫でた。
早く会いたいな。
3日会えないだけで、泣き出したのは美瑠さんやったなぁ…。
「えっ、家族旅行?」
「うん。北海道に。」
「いつから?」
「来週、2泊3日で。」
「…その間…美瑠はふぅちゃんに会えないん…?」
「あっ、そうや。でもあっという間に、」
「嫌や!」
「…へ?美瑠、さん…?」
家族旅行をする事を告げたのは、旅行する1週間前。
どっか行こか〜なんてママが計画を立てた家族旅行をわたしと弟は楽しみにしてて。
美瑠さんに言っとかな。
学校帰り、公園に寄り道をして美瑠さんにこの事を話すと段々涙目になっていき、最終的には…。
「ふぅちゃんと3日も会えへんなんて…美瑠、耐えられん!嫌やぁ!」
「美瑠さん…。」
泣き出してしまった。
子供が泣くみたいにわんわん泣きじゃって。
でもわたしからしたら、そんな美瑠さんが可愛くって仕方なかった。
頬を緩ませながら頭をポンポン撫でてた事は美瑠さんにはバレてないはず。
「楓子〜、決まったん?」
「あっ…、うん!」
美瑠さんへのお土産を選ぶのに、結構時間を掛けてしまった。
雪だるまのキーホルダーにした。
付けてくれるかな。
ニヤニヤしながらわたしは雪だるまのキーホルダーと、自分用に…、
「それも買うん?」
「うんっ!」
お猿さんのぬいぐるみも買った。
袋には入れず、タグを外してぬいぐるみをギュッと抱き締めながら空港へ向かう。
飛行機に乗ってる間もずっとこうしとくねん。
はよ美瑠さんに会いたくて。
飛行機に乗り、美瑠さんを浮かべながら目を瞑るとすぐに眠りについた。
「楓子、着いたで。」
大阪国際空港に到着したみたいで、ママに肩を揺すられ目を覚ます。
お猿さんのぬいぐるみはわたしの腕の中に大人しく包まれたままやった。
もうすぐ、もうすぐで会える、美瑠さんに。
「ママ、わたし、美瑠さんに会いに行って来る。」
「え、今から?」
「うん。難波公園で待ち合わせしてん。」
「そっか。気ぃ付けてな?」
「はーいっ。」
一旦お家に帰って、荷物を置き。
美瑠さんへのお土産とお猿さんのぬいぐるみを持って家を出た。
歩いて向かう内に、気付けば走って向かっていた。
1秒でも早く会いたい。
「お帰り。」って、言ってもらいたい。
息を切らしながら公園へ入る。
辺りを見渡しても美瑠さんはいない。
早すぎたかな…。
シュンと肩を落とし、ベンチに座ろうとすると、誰かの手がわたしのお腹に回って来て、背中にはコツンと誰かの頭が乗せられた。
見なくても分かる。
わたしがずっとずっと、会いたかった人。
振り向こうとしても、ギュウとしがみついて離れようとしてくれへん。
「美瑠さん…?ただいまっ。」ってわたしの方から口を開いても返事がなくて。
おかしい。なんて、疑問に思ってたら鼻を啜る音がして理解した。
「泣いてますか…?」
「…泣いて、へんもん…。」
やっぱり。
お腹に回る手を優しく振りほどいて、振り返れば涙を堪えて唇を噛み締める美瑠さん。
アカンて。わたしまでもらい泣きしちゃいそう。
「ただいまっ…、」
「ふぅちゃぁん…会いたかってん…、」
「わたしも…。」
「お帰りぃ…。」
美瑠さんのせいや。
わたしまで頬に涙を溢し、二人で抱き合って泣いた。
泣き止んだのは何分経った頃やろ…。
最初にわたしから泣き止んで、また暫くして美瑠さんも泣き止やんだ。
お互い目を赤くさせ、「泣き過ぎやな。」って美瑠さんが笑った。
やっと美瑠さんの笑顔が見れて、わたしはまた泣きそうやったけど今度は堪えられた。
「あんな、美瑠さん。」
「なぁ、ふぅちゃん。」
お土産を渡そうとしたとこを美瑠さんに言葉を遮られて、止める。
「ん?」
「さっきからそのぬいぐるみ、ずっと抱えてるやん。」
「あっ、これは…美瑠さんです。」
「え、美瑠?」
「はい。美瑠さんやと思って、すぐ抱えました。」
「…何やふぅちゃん、むっちゃ可愛い事するんやな。」
お猿さんのぬいぐるみを美瑠さんが一度抱いた後、「でも美瑠の方がふぅちゃんを包めるもん。」って、お猿さんのぬいぐるみに嫉妬してわたしを抱き締めた。
「美瑠さん、このお猿さんの名前さるるんでもええ?」
「ええよ、ふぅちゃんが名付けてくれるなら何だってええ。」
「じゃあ、これ。」
「お土産…?わぁっ、キーホルダーやん!むっちゃ可愛い!」
キーホルダーの入った袋を渡すとその場で美瑠さんは開けて、ニコニコする。
「ふうこって名前付けたんで、大事にして下さいね?」
「うんっ。ふぅちゃんより大事にするな?」
「そ、それは嫌や。ふうこ没収するで?」
「嫌や。美瑠のふぅちゃんや!」
後日、雪だるまのキーホルダーをカバンにぶら下げた美瑠さんを見れて、わたしはとっても幸せやった。
「実はお揃いの、買ってました。」と言えたのは、1週間先のこと。
……End