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下#タイヨウのうた
















ピンポーン


家の中に鳴り響く、インターフォンの音。
わたしはいち早く反応して、玄関のドアを開けて顔を覗かせれば「お待たせ。」と、ニッコリ笑う美瑠さん。


ギター持参なのは、美瑠さんのバイト先で使っているらしいから。
レトロな喫茶店でバイトしてる美瑠さんは、演奏したりするみたいで。
わたしもいつか美瑠さんのお店に行って演奏聴きたいなぁなんて。










「美瑠さん、ホンマにええの…?」
「もちろんや。気にせんとき!」
「ありがとう…。」
「ええよ?せやから、笑ってや!」
「…ありがとうっ。」
「うん、その笑顔や!」



誰かにご馳走してもらった事のないわたしは、何度も美瑠さんに「払う。」と言い続けた。
でも押しが固い美瑠さんに折れて、ご馳走してもらう事になった。

ご馳走してもらう事が申し訳ないから、眉を下げてたら頬を摘ままれ「笑って。」なんて言われ、わたしは笑顔を浮かべたら美瑠さんも笑顔を浮かべた。



そんな笑顔を見て、わたしは思う。
もっとこの人と居られたら、なんて。



わたし自身がずっと笑顔で居られるから。
明るい外を歩きたい、一緒に…。
でも現実では無理やから…。



「……ごめん、なさい。」



わたしが謝ると美瑠さんは不思議そうに「え?」と聞いて来た。



「わたしが病気やなかったら…昼間から出掛けられて、もっと色んな場所に行けるのに…。」
「ふぅちゃん…。」
「ごめんなさい…。」
「大丈夫やから。」


肩に触れた美瑠さんの手。
温かいその手を見つめ、顔を上げればニッコリ微笑む美瑠さんが「気にしてへんから。」と言ってくれた。


いつもの公園に差し掛かって、美瑠さんが「少し話そっか。」と言い、立ち寄る事に。
美瑠さんがギターを弾いてるベンチに座る。



少し続いた沈黙を破ったのは、美瑠さん。



「実は、夢を諦めようとした事があった。」
「え…。」



らしくない、その言葉に。
わたしは驚きが隠せず、暫く目を見開いたままやった。

美瑠さんの方を向いたままで居て。
また、口を開いた。


「誰も聴いてくれたりしないし、誰の心にも響かない。それなのに、歌い続けてええんかなって、思ってて…。」
「………。」
「それでも、歌い続けた。そしたら…ふぅちゃんに出会えた。」
「美瑠さん…。」
「初めてやねん。誰かが、美瑠の歌で楽しみに聴いてくれる人。それがホンマに嬉しくて…歌い続けて良かった、そう思えた。」



こんなわたしでも、誰かの役に立てた…。
嬉しくて、心が温かくなる。



「ふぅちゃん。実はな、ふぅちゃんの為に作った曲があるんやけど。」
「えっ?わたしの為に…?」



再び驚いた顔するわたしに、美瑠さんは優しく微笑んで、わたしの頭に手を置く。



「外に出られなくても、陽の光を浴びる事が出来なくても、これからは美瑠が夜だろうがどんな時だろうが、ふぅちゃんを照らす太陽になる。病気でも何でも、関係ない。」


頭に置かれていた手が、頬にと添えられる。
温かい美瑠さんの手。
わたしは、美瑠さんの真っ直ぐな瞳を見続けた。



「ふぅちゃんに隣に居てほしい。いつも笑っていてほしい。ふぅちゃんを笑顔にするのは、これからも自分でありたい。」
「………。」



わたしは無言のまま、自分の頬に置かれる温かい手の上に、自分の手を重ねれば。


にっこりと笑った美瑠さんに釣られ、わたしも笑う。





「ふぅちゃんが好き。」



わたしの返事を聞く前に、美瑠さんはギターを取り出した。
そしてこう言う。




「返事は、この曲が終わったら、聞かせてな。」




一度わたしを見つめた美瑠さんは、優しく微笑んで曲名を告げる。




「タイヨウのうた。」




2人だけのコンサートが、始まった。











……End

中#タイヨウのうた
















「美瑠さん。」
「あ、来た!ふぅちゃん、待っとったで。」



夜の公園のベンチにひとり。
外灯に照らされ、ギターを弾いていた美瑠さんに手を上げ、駆け足で寄る。
顔を上げてニッコリ笑う美瑠さん。
わたしを待っててくれてた。
嬉しかった。




初めて美瑠さんと出逢ってから、日々が経った。
いつもの散歩、寄り道して公園に寄り。
美瑠さんの歌を聴いて、暫く話して別れて。
こんな日々が続き、色々な話をしたけど、わたしはまだ言ってない事がある。
きっとそれは、美瑠さんも疑問に思っている事。



「ふぅちゃん。答えたくなかったら答えんでええから。聞いてくれる?」
「…うん?」
「どうして、定時制の学校に通ってるん?昼間は何してるん?」



わたしは、定時制の学校に通ってる事は言ってあった。
でも、理由は言わなかった。
美瑠さんからも聞いてこなくて。
言わないでいたけど…。


言おうか、言わないか。
頭の中で必死に考えた。
話した事によって、わたしは嫌われたりしないだろうか。






太ももに置いてある拳に力が入り。
わたしは決意した。
この人になら、話しても良い。
わたしの事を、知ってほしいから。



「実はわたし…小さい頃から、太陽の光を浴びることが出来ない病気で…。」
「………。」
「昼間は何処にも出掛けられへん。家に居る…。」
「…そぉやったんや。話してくれて、ありがとうな。」
「美瑠さん…。」



意外にも、美瑠さんはアッサリしてて。
逆にわたしが驚かされた。
立ち上がる美瑠さんを見上げ、美瑠さんはわたしの目の前にソッと手を差し出す。
その差し出された手を握れば引っ張り、わたしを立たされて。


美瑠さんは、ニッコリと笑い。



「病気でも何でも、ふぅちゃんはふぅちゃんや。」
「っ……。」
「夜なら遊べるやろ?遊ぼ、ふぅちゃん!」



病気の事を打ち明けた事によって、わたしの心は軽くなり。
この人に話して良かったっと。
心の底から思い、わたしも笑顔を浮かべ、二人でブランコの方へ向かった。




それからも、美瑠さんはずっと変わらずにわたしに接してくれてた。
公園にわたしが来ると、笑顔で呼び掛けてくれて。
新しい曲が出来たら、「新曲出来てん!聴いてくれへん?」って首を傾げ聞いてくる美瑠さんにわたしも新しい曲を聴くのも楽しみで。


「どうやった!?」


なんて、興奮気味に聞いて来る美瑠さんに感想を伝えると嬉しそうに笑ってくれて。

そんな美瑠さんの姿を見てると、わたしまで嬉しくなって…。
何だかドキドキしてしまい、今まで感じたことない感情が沸いてるようだった。



「なぁ、ふぅちゃん。」
「ん?」



ギターを弾いてる手を止め、美瑠さんは口を開く。
隣に座る美瑠さんの横顔を見つめ、わたしは首を傾げていたら顔を赤くした美瑠さんが、「良かったら明日、夜ご飯食べ行かへん?」と。

急な誘いにわたしは嬉しくて。
「うん、行く。」と満面の笑みで返せば、「美瑠がバイト終わったら、ふぅちゃんの家に迎え行くな?」そう約束して、今日は別れた。



休みの日に誰かと会うのは、初めてや。
しかも……好き…な人と…。



「あーー!緊張する!」


前日でこんな心臓ばくばくやのに…明日大丈夫かな…。


枕に顔を埋め、わたしは美瑠さんの事を思い浮かべた。
あんなに人に優しい人…好きにならへん人、居らんて…。
美瑠さん絶対モテるんやろな…。
こんな事考えとったらモヤモヤして来た…止めよ止めよ…。



「明日、夜まで待ちきれへん…。」


ぬいぐるみをギュッと握り、わたしは目を瞑った。







……End

上#タイヨウのうた















窓の外をジーッと眺める。
わたしと同年代の子達がわいわい騒ぎながら学校から帰って来たのを見て、羨ましいなぁって思う日々。



わたしは幼い頃からある病気のせいで陽の光を浴びることが出来ず、日中は家で過ごす生活をして来た。
その為、友達も居ない。
ずっと独りぼっちやった。


現在通ってる夜間の定時制の学校には、同年代の子が居ない。
それに、女の子も少なくて、学校でも独り。

何も楽しくない暮らしを17年間過ごして来た。
もう高校3年生で、わたしやって一度くらい友達と何処かへ出掛けたりしてみたいのに。


友達すら出来ない。


きっと、これからもそう。
わたしは病気持ち。
一生独りの人生を歩んで行くんだ。




日が暮れれば、自由時間。
学校への送迎はいつもママがしてくれる。
一度もめんどくさがらないママに、わたしはいつも感謝の気持ちと、申し訳無い気持ちを伝えても「楓子は悪くないんやから。」って。


学校が終わり、家に帰るとわたしはいつも散歩する。
活動出来る少ない時間を、使いたいから。




「ママ、散歩行って来るなー!」
「気ぃつけよ?」
「はーい!」



今日も散歩に行く。
一緒に散歩する相手が居れば楽しいんやろな。
わたしはひとりで歩いていると、通り掛かった公園から、歌声が聴こえた。


こんな時間に、誰やろう…。


その歌声に釣られるように、足を歌声の方へと進める。



いくつかの外灯に照らされ、ベンチに座りギターを抱え、歌ってる女の子がいた。
わたしより…年下に見えるけど…。


その子の歌声は、とっても優しい声で。
暫く聴き入ってると、顔を上げてわたしに気付いた。
弾くのを止め、わたしをジッと見つめて来る。


演奏の邪魔してもうたよな…。



「ご、ごめんなさい!」



慌てて、頭を下げて謝れば女の子は優しく笑いかけて空いてるベンチの隣をポンポン叩く。



「立ってないで、座ろ?おいで。」


声まで優しくて、わたしは頷いて少し離れて隣に座った。



「なぁ!今のどうやった!?」
「え…?」


急に質問をされ、わたしは驚いてしまった。
家族じゃない、先生じゃない人とこんな近い距離で話した事ないし、緊張してる。


思った事…素直に言えばええんかな…。

太ももの上で拳を作り、目をギュッて瞑りながら素直に答えた。



「とっても良かったです…。優しい声で聴き入ってしまいました…。あの、すみま、」
「嬉しい…。」
「…嬉しい?」
「めーっちゃ嬉しいで!!そんなん言われたの初めてや!」



良かった、喜んでくれた…。

ホッと安心してたら「あ、そや。」と口を開き、こんな事を聞いてきた。



「何でこんな遅い時間に居るん?何かあったら危ないやろ?」
「あ…散歩が日課なんです。そしたら歌声が聴こえて来て。」
「そっかぁ。散歩なぁ…こんな遅い時間に。」
「えと…何でここでギターを…?」


普通の女の子が、こんな時間に散歩してるのはおかしいみたいで。
表情を曇らせてたけど、わたしも質問を返した。



「バイトしながらシンガーソングライター目指してん。ちょっと前にこの近くのアパートに引っ越して来たんやけど、アパートじゃ弾けへんやん?」



地元の人やないんや…。
毎日通る公園に歌声がしたのは今日が初めてやから、ほんとに最近なんやろな。



「どっかないかなぁ思てたら人が居ない場所見つけてん。自分で作った曲を練習しとった。」



へへっと笑う女の子。
何故かわたしは、この人に興味を持ってしまい。



「あの…散歩で公園通るんで…また、聴きに来ても良いですか…?」
「もちろん!いつでも来てや。」



ニッコリと、満面な笑みを浮かべたその子に、わたしも笑顔で返す。



「あっ!そろそろ帰らんと…、」
「せやなぁ。明日も学校やし、朝早いんやろ?」
「…はい…。」
「良かったら、名前教えてくれへん?」



こんだけお話したのに、自己紹介が後になってしまった。

わたしは立ち上がって「矢倉楓子です。高校3年生です、よろしくお願いします。」とお辞儀をする。



「わたし、白間美瑠!18歳で今年19歳!」
「え…年上…?」
「あ、そうやなぁ。」



うっそ、見えへん…。

幼い顔立ちの彼女はヘラッと笑う。



「ふぅちゃん。よろしくなぁ。」



初めて呼ばれたニックネーム。
つい、嬉しくなり、笑顔を浮かべながら「こちらこそ、よろしくお願いします。美瑠さん。」なんて返した。


また夜の公園で会う約束をして、この日は別れた。
今日は中々寝付けなかった。
美瑠さんの優しい歌声が、耳から離れなずにリピートされ続けていたから。







……End

・コメント返信(5月分)






5/5 ふみさん:拍手コメントありがとうございます!!
お待たせしました(´;ω;`)ブワッ
そして読んで下さりありがとうございます(-人-)なむなむ

・コメント返信(4月分)

4/2まなぶさん:コメントありがとうございます!!
切ないのは苦手なんですけど頑張りました!
もっと文章力上げたいです、、、
でも好きと言って頂けて嬉しいです(^^)
これからも頑張ります!(^人^)


4/11ヾ(・∀・`o)ネェネェさん:たくさんの拍手、コメントありがとうございます(´;ω;`)
とってもうれしろまですヽ(・∀・)ノ
切ないのもMVを再現?したお話も頑張りました!
岸野さんは話題ですからね、登場させて頂いたのと、曲のやつ!
あの曲は一応聴きながら書いてた曲があったんですけど曲と話が逸れてしまいましたwww
ちなみに【CHIHIROさん の 片恋】です!
凄く良い曲なんで是非聴いてみて下さい\(^o^)/
ありがとうございましたー!!!!



4/19 めがねさん:拍手コメントありがとうございます!!
切ない話を書くのは苦手ですが、頑張りました。。。
これからも頑張ります(^人^)



4/24 ゆーこさん:拍手コメントありがとうございます!!
まさかその美瑠の心の台詞を褒めて下さるとは、、、
ありがとうございました(^人^)





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