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刹那を想う

風に砂が踊る。背を風に押されて、砂ばかりが足元を過ぎ去っていく。
砂に刻んだ足跡は風が消し去り、振り返れども最早残りはしない。頭上には冷たく光る丸い月。
街灯の一つすら無い空には満点の星。
遠目からでも分かる、天を貫くバベルの塔。
起動エレベーター。枯渇したエネルギー源の代わりにと絶えることの無い太陽の光をエネルギーに変える。

人類は言語で隔てられても、結局は天をも頂く3つの塔を作り上げた。人類の財産だと耳に心地の良い言葉だけを聞かせて、カードの裏には変わらない世界の覇権争い。

ソレスタルビーイングの成した傷跡が俄に残っても人は忘れる生き物。
人々が忘れたとしても忘れない。
新たな痛みが産まれても、気付かなければ痛みとすら感じない。気付いてからこその痛みへと変わる。
神はいない。バベルの塔を裁く神もいない。
世界はどうしようもなく歪んでいて、こんな世界を望んだわけではなかった。
あの日 宙で散ったロックオン・ストラトス 彼も、自分もこんな世界は望んでいない。
4年前よりも1回り大きくなった掌は年相応と言えるほど。声も低くなった。
もし、あの男が生きていたならば何と言ったのだろうか。
目の前で喪った痛みは今もまだ癒えていない。
「ロックオン・ストラトス…」
もしもを考える度に埒が明かないと頭を振って思考を霧散させる。
マイスターの中で、空席の名。
反連邦政府組織で働くならば、もしかしたらと一筋の光を感じずにはいられない。
あの酒場で出会ったあの男ならば、もしかしたら。
0と1の間を行き帰りして風に向かい歩き始める。道はまだ続く。

大好きで、大嫌いで

1つを分けて育む海は暖かくて、産まれた世界は眩しくて寒くて少し驚いたんだ
鏡に映した様な姿にもほんの少し驚いたけれど知っていた
ああやっと会えたね、待ってたんだ
君と話せる日をずっと、待っていた

2人で1つ、1つを分けて2人になった
なのにどうしてだろう
少しずつ、心は擦れ違ってもうこんなに遠い
2人で1つだったはずなのに

一緒に産まれて過ごした日々を愛している
嘘じゃない

勝手に1人で行くなんて、
ああなんて酷い裏切りなのだろうか
勿論大嫌いなのに心の底はR.I.P.を祈っている

いつかそっちに行った時には文句の1つや2つや3つに付き合ってもらうつもりだし、沢山の土産も持っていくから覚悟しておけ
兄さん
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ハロー 聞こえていますか

拝啓 兄さん
俺は元気でやっています
兄さんは、今何をしていますか
俺は今…いや、そっちで話せたらいいかな
その内そっちに会いに行こうと思っています


ほんの少し解けた心がペンを走らせる勇気を くれて、ポストに手紙を投函させた
「今日はいい天気だな」
もうあの頃の家はどこにもないけれど、たった一人の家族がいる場所が帰る場所なのだと郷愁に駆られた心が言っている
メールでも電話でもなく手紙にしたのは、世話焼きの兄と実際に手短に話してしまえば素直に話せなくなりそうだったから
手紙なら素直に話せるかと思ったから
いつ手紙が返ってくるだろうか。兄も働いていることだしのんびりと返事を待とう。
時間はたっぷりとあるのだから。

「今日は何をしようか」
ポストに背を向けて歩きながら見慣れた街並みを見て、らしくもなく踊る心を押さえつけることもなく歩く。

ああ、返事が来るのが楽しみだ。
同じ声、同じ顔だというのにあの声に名を呼ばれるのは確かに嫌ではなかった。
どうしても嫌だと思った頃もあったのに、今となってはそれが心待ちで溜まらない。
本当に話したいことが山の様にあるのだ。
どうせまた兄ぶったあの人は兄らしさを張り付けて話すのだろうが、別に構わない。
家族なのだから。
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その先を向けたのは

爆風に煽られて地面に叩きつけられた衝撃は強かで本能的に生命の危険に目を閉じる。

目を開けて突きつけられた現実を俄かには受け入れ難く、それでも明確に向けられた『しんでしまえ』という悪意を感じた。
思いやればあの時に初めて見ず知らずであればこそ、殺意を向けられたファーストコンタクトだった。
その殺意は自分以外の命を奪い取り、暖かな全ての世界を一つの爆弾で崩落させた。

双子の兄弟と競い合った射撃の腕
スコープ越しにターゲットを見つめる目
幼い頃に培ったそれは皮肉にも、殺意を以て他人の命を刈り取るスナイパーへと変貌した。
腕も視力も、世界を壊された怒りのどれもこれも衰える事はなく、スコープ越しに見えるターゲットを見てトリガーを引く。

一つの世界を壊すに値するには決して重くはないトリガー。


決して見つかる距離ではないが現場を離れるに越したことはない
ビルを下りてポケットから煙草を一つ取り出しくわえて、火をつけようとすると視界を掠めた滴
「降ってきたか」
ぽつぽつと地面に斑を描く、ゆっくりとした。徐々に数を増やして行く雨。
一仕事終えた後の一服を使用とするが徐々に濃厚になり始める雨の匂いと遠くから聞こえて来る人々の叫び、警察車両のサイレンの音。
教会の鐘の音、午後の讃美歌
それら全てが絶命した標的への手向けになるようにと胸中で十字を切り、喧噪に背を向けて地下街へと入る。

人の口に戸は立てられない。
地上ではまだ騒ぎになっているだろうと踏んで近場のカフェに入りコーヒーを一つ頼む。
程よい苦味が喉を潤して煙の代わりに胸を鎮めていく。
一つの依頼が有った、相応の金額は生活を送るには十分な金額。

据銃をする。最早慣れた動作、呼吸の一つも乱れはない。照準を合わせると今まさに覗き込まれていることも気付かないターゲットは隣人と笑い合っている。
世界は理不尽で残酷だ。幼い頃のKPSAのテロによって家族を失った自分はその理不尽さと残酷さを嫌というほど知っている。
全く見たこともない、どこかですれ違ったのかも知れないが記憶に引っかかるほどでもない。それでもターゲットはどこかの誰かと繋がっている。
理不尽で残酷な運命にターゲットの家族は慟哭を上げるかもしれないが、それでも相応の対価を懐に入れた以上、それらを加味する必要もない。
許されようとは思わない。

せめて願う、血を分けたたった一人の弟が自分の様に怒りを燻らせるのではなく光の中で生きられるようにと。

君に 花を

一つを分け合って産まれた筈だったのに、分かり合うことを諦めて背を向けた
背の向こう、どんな顔をしているかなんて知りたくもなかった
見なくても分かる。
鏡に映る顔は歪んで頬を伝い落ちる熱さが胸を焼く。

突然訪れた訃報に世界が崩れ落ちた
どれ程の時を1人で過ごしあっただろう

背中越しに感じた温もりも愛おしさも今は遠く
透き通る程清々しい空の向こう
どこかにいるのだろうか
何処かで生きていてくれさえいれば、それだけで良かった

流した涙は忘れない
刻まれた半身の名をなぞり目を閉じる

胸に抱いた花を添えて

「おやすみ、ニール」
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