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青年と豆腐小僧3


「僕は雷蔵、不破雷蔵っていうんだ」

「兵助…豆腐小僧の兵助…」

「ん、それじゃあ兵助、これからよろしくね」

「よろしく…」


二人は手を繋いで村をあとにします
結局誰が噂を流したのかわかりません
でももうそんなことはいいのです
豆腐小僧は初めて自分を頼ってくれる相手を見つけたのですから


二人の旅が始まりました








「あーあ…せっかくバカな人間に噂流したのに…だいなしじゃないか…まったく…次はどうしてやろうかな…」

二人を見つめながら
誰かが呟きます

しかし、二人は気付きません

青年と豆腐小僧2


「…僕以外の誰かが、この豆腐を食べたんですか?」


静かな声でしたが、青年の言葉は村人の耳に届きました
村人は黙ります、だって誰も豆腐小僧の豆腐を食べたことがないんですから

「カビがはえて崩れるというのも、本当に誰かカビがはえたんですか?崩れたんですか?もしそんな人が要たなら教えてください、このくらいの村なら、何処の誰がそうなったかくらいわかりますよね?」

ざわざわ

ざわざわざわ

「村長さん?」

青年は笑顔で村長を見つめます
呼ばれた村長は顔を青くして首を左右に振り、答えます

「ワシは知らん!!ワシはあいつから!」

「俺は○○から!!」

「自分は△△から!」

皆のなすりつけ合の始まりです

「僕、君の豆腐大好き」

騒ぐ村人を気にすることなく青年が言います

「ふえ?」

二人の前で騒ぐ村人は、もう二人の事を見てはいません
ただ、誰が言った、誰が悪いと騒いでいます

二人も、村人なんか見ていません

「いっぱい食べたいな」

「ありがとう、なのだ…」

「一緒に旅しない?そうすれば、君の豆腐をいろんな人に食べてもらえるし、僕も君の豆腐食べられるし、いいと思わない?」

「え、え?」

「無理にとは言わないよ、君がよければの話し」

豆腐小僧は今まで人に必要とされたことがありませんでした
誰かと一緒、というのもありませんでした

人間を信用してもいいのだろうか

喜びと不安が豆腐小僧を襲います

笑顔で差し延べられた手
豆腐小僧は勇気を振り絞って、その手を握りました

「一緒に行く…」

青年と豆腐小僧1

「たうふ…たうふはいりませんか?美味しいたうふ…」

「近寄るな!!」

「っ!!」

「お前達の豆腐は毒だ!!」

「食えば体中にカビがはえる!」
「そんなもの食えるか!何処かへいけ!!」


ただ、自分の作った豆腐を食べてもらいたいだけなのに
ただ、それだけなのに








『豆腐小僧』

あるところに、豆腐小僧という妖怪が居ました
人々は言います
「豆腐小僧の豆腐を食べれば、体にカビがはえ、崩れてしまう」

誰が言い始めたのかわかりません
それが本当なのかもわかりません
誰も豆腐小僧の豆腐を食べたことがないのです

「たうふ…いかがですか?」

小さい小さい豆腐小僧
成人の腰ほども身長はありません
一生懸命、人々に豆腐をすすめます
その度に怒鳴られます

「……」

ただ、美味しい豆腐を食べてほしい豆腐小僧の気持ちは、人々に伝わりません

「わぁ、美味しそうな豆腐だね!」

「!!」

豆腐小僧は驚きます、そんなことを言われたのは初めてでしたから

見上げれば笑顔の似合う青年

豆腐小僧の居る村では見たことのない顔です

「あげるのだ…」

「本当!?ありがと「あっ、ダメだ!!その豆腐食ったら、体にカビがはえるぞ!!」 え?」

村人は口々に言います
ありもしないことを言います
噂を本当のように言います
誰も本当のことを知らない、ただの噂を

「そんなことないのだ!!た、食べたことないくせに…!」

初めての豆腐小僧の反抗に村人は驚きます
大きな瞳に涙を溜めて、唇を噛み締める豆腐小僧に驚きます

「僕が食べて証明すればいいんですね」

青年は村人の言葉も聞かず、パクッと、豆腐を食べました

「……美味しい!!すっごく美味しいよ!!」

暫く黙っていた旅人は、満面の笑みでそう言います

「…!!」

嬉しそうに笑うのは豆腐小僧
疑いの眼差しを向けるのは村人

「美味しい、君はすごいね!こんな美味しいもの作れるなんて!!」

「えへへ…」

「そんなはずねぇ!!妖怪が作ったものがうめぇなんてあるわけねえ!!なにもないはずかねぇ!!」

一人の村人が叫ぶように言います
続けざまに多くの声が二人にふりかかります
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