piquant

赤い林檎の頬をして
眠っている奈々子。

お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いがふえた。

唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。



お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。


ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。


自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。


自分があるとき
他人があり
世界がある。


お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた。


苦労は
今は
お前にあげられない。


お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。

頭痛い
じんわり痛い
あたままわんない
ぐーるぐーる

接客できてるのかな
声出てるかな

自分の状況がわかんない
なんか全部ぼやけてるなんにも見えない
詩的表現でもなんでもなくそのまんま
「世界の輪郭がぼやけてる」

見えん。

結局一人。

うまく行かない。

私が悪いんだろうな
ぜんぶ

それ以外に予想がつかないから。

こんな時に限ってアスペ　気持ちがわからない

なんやねん

はやくしんでしまいたい
迷惑だけまき散らすゴミみたい



とか言ってちゃいけないわけで
それでも心配してくれる人はいて

もうわかんない
涙すら出ない

不必要な人間が不必要な企画動かして何のためになるのか
必要とされてないなら価値がないならそんなもの今すぐに燃やしてしまえよ

燃やしてくれよ
それすら許されないのかよ
倒れることすら許されないよ
不必要なのに忌み嫌われてるのに必要ってどういうことだよ

必要悪だなんて綺麗事抜かすのか
やだなあ
やめてくれ

もうやめてくれ

スーパームーンから２日経って
目を開けるともう外は明るかった

重たい瞼をこすりつつ上体を起こして
寝ぼけ眼でテレビを観る

内容なんて別に入って来ないけど

真っ赤な目覚まし時計は電池が抜けていて、
早く電池を入れてあげねばと思えど
買いに行くのも面倒で結局放置してしまっている。

ごめんね。

そのまましばらくたって
みんなは学校に行くのに私は行かず
ぼおっとしているとお腹が鳴ってきて、
でも食事を摂るのも面倒で

嘔き気がやってきたところでやっと立ち上がる

そのままキッチンに向かうわけでなく、
姿見に映る自分の姿に足を止める。

娼婦より酷い感じだわ
とか思っても別になにかするわけでなく
しばらくぼーっと見つめるけど

なんかもう

あんた誰だよ、

何もしたくない
誰にも会いたくない
体動かない
やる気もない
声も出ない
うまく行かない
全部うまく行かない
うまく行かない
うまく行かないんだよ
そんだけのことがうまく行かないんだよ
たったそんだけのことが
あなたと私は違うから
強要しないでよ
できないのはできないの
でもそれは許されないから
許されないから
駄目なんだよ
知ってるの
知ってるの
知ってるの
福田さんも叩かれた
許されないんだよ
「できない」のは「できない」し「してはいけない」
許されないんだ
できて当然、当たり前
できないこともできて当然
いやーさすがだねってはなし
出来てもそれが普通だから
褒められるわけでもなく
ほめて欲しいわけでもないが
もうあーあって
いなきゃいけないけどうっとうしがってんでしょあんたもあんたもあんたもあんたもそう
邪魔なんでしょ会いたくないんでしょ面倒なんでしょう
でもいなきゃいけないの分かってるから何も言えないからそうなんでしょう
無理して付き合わせてごめんね
ごめんなさい
最初から全部間違ってたんでしょ
分かってるんだよ
自分が面倒なやつだってのもわかってて
無理して付き合わせてんのもわかってて
全部分かってるから嫌なの
でもこんなクズを気にしてくれて
本気で心配してくれる人もいるから
だから頑張らなきゃって頑張って
でもうまく行かないんだよ
はいスタートライン

どうしたらいいがよ
どうしようもなかろうに
あぁもう

あー

逃げたいのにそれすら許されないのよ
バーカ