その後トキハルさんと再会したい、なんて下心を持ちながら、空いた日なんかは直ぐBARに行くようになった。

そのせいかミチコさんとも凄く仲良くなって、常連さんなんかとも顔見知りくらいにはなれた気がする。

「じゃあアキちゃんはビアンってわけでもないんだねぇ」

「そうなりますね」

「それでも女の子選んじゃう気持ち分かるわ〜。女の子可愛いもんね。だからいろんな女の子と出会いたくてBAR始めたのがそもそもだもん」

「そうなんですか!?」

「そそ。まあ今となってはいろんな人の出会いの場になれて、隠さないで話せる憩いの場となってるからもうアタシ嬉しくってさぁ。マジで開いてよかったなって思ってるよ。」

そう話すミチコさんの笑顔がとても輝いていて、親のコネで妥協で入社した自分としては、そんなミチコさんに憧れのようなものを抱くようになっていた。

好きな事を稼ぎにしてる人って、こんなに輝いているんだ。
そう思うとわくわくすらした。
いいなぁ。
なんて、ほろ酔いでふわふわする頭で、他のお客さんの相手をしているミチコさんを眺めながらにんまり笑顔を浮かべていると、隣に誰かが座ってきた。
確かに今日は金曜で人も多い。
カウンター席の唯一の空席だったから仕方がなかったんだろうな。
ご挨拶くらいしなきゃ。
なんてへらりと笑顔を浮かべて隣を見ると、そこには会いたくて逢いたくて仕方がなかったトキハルさんその人がいた。

「トキハルさん!?」

「わあっ、びっくりした。そんな驚かなくても…」

「あ、すみません。ちょうど会いたいって思ってたから」

「あはは、俺に?そうなんだぁ、ありがとう」

酔ってるせいか素直に零れ落ちる言葉に、トキハルさんは少し照れ恥ずかしそうに笑った。
それがまた可愛くて、抱き締めたくなるのを必死に堪えてカクテルを一気飲みした。

「あ、トキハル久しぶり〜」

「最近仕事が立て込んじゃって。ミチコさん、適当にカクテルもらえる?あとアキちゃんにも」

「アキちゃんもう呑んだの!?強いねぇ。あはは、待っててね」

トキハルさんが僕のドリンクも頼んでくれた…!

なんだかドキドキが治らなくて、どうしていいか分からずにとりあえずありがとうございますだけ伝えた。

「アキちゃん、最近よく来てるの?」

「あ、はい。なんとなく居心地がよくて…」

それからトキハルさんとの会話が始まって、此処での過ごし方や、あと軽く仕事の話し、人間関係のグチ、過去の恋愛、様々な話で盛り上がった。
カクテルを飲みながら、スナックを時折挟みつつ、我ながら上出来だと思うくらいには話せたと思う。

まあ、トキハルさんが来る前から何回かお代わりしていたカクテルのおかげもあるのかもしれないけれど。

そんな会話の中で、ひとつだけ響いた言葉があった。


「俺さ、FTMなんだよね」


その言葉の衝撃で、目が丸くなったのは言うまでもない。