ある日少年は、誰かの言葉で傷付いた。

暫く引きずり、少年は正しく日本語を使おうと学んだ。

ある日少年は、誰かを自分の正しい言葉で傷付けた。

辛そうに苦しむ誰かを見て、相手を思い遣る柔らかい言葉を使おうと意識した。

ある日少年は、誰かが誰かを罵声する声を聞いた。

なんて醜いんだろうと、その誰かを自分の反面教師にして、自分はそうなるまいと決意した。

ある日少年は、弱音を吐いて親友に心配を掛けてしまった。

心配することがどれだけ心を落ち着かせないものかを知っている少年は、申し訳なくなって弱音は吐くまいと決心した。

ある日少年は、弱音も吐かず罵声もせず、正しく柔らかな言葉で会話をしていると、怪しい、何か企んでいる。本性が見えないと次々に陰口を叩かれるようになった。







その日から少年は、言葉を発することをやめた。