暗闇の中にいるひとの気持ちは、現在進行形でいま暗闇の中にいるひとでなければ、分からないんじゃないかと思うんだ。

ぼくは苦しいんだよ。
どんなに暖かな光の中にいても、ぼくのお腹の中には飲み込んだ暗闇がいつまでも残っていて、内側からぼくを壊していく。

(一人で生きていくことと、独りになることとは、違うんだよ。きみが、自分自身のこを、もっと大切にできたら、きっと変わっていくから。)

ぼくはね、最低な人間だと思うよ。
大切なひとが一番に望むものを知っていて、知っているのに、
それを奪って、二度と手に入らないようにしようって言うんだから……。

(一番の望みはね、きみに幸せで笑ってもらうことなんだ。いつまでも。)

きみの望みを叶えてあげること、ぼくにはできない。

ずっとそうだった。
出会った全てのひとを、必ず傷つけた。
ぼくはそういう人間なんです。


さよなら。
ぼくを探しに来ないでね。
きっと最後は眠るように……とは、いかないだろうからさ。
きみを、怖がらせたくないからさ。
一番大切なもの、奪ってしまうんだから、せめて、
最後の景色くらいは、綺麗な方がいいよ。


たくさん考えて、
考えたんだけどね、
ぼくにはこうするしかないんだよ。
それがただ唯一、ぼくにできることなんだ。

悲しまないでくれなんて、言う資格はないだろうね。
ぼくはこうして、出会ってきたひとを、愛してくれたひとを、こんなふうに徹底的に傷つけて、打ちのめして、二度と立ち上がれなくするようなことでしか、自分を証明できないんだ。
悲しまないでくれといっても、叶わないだろうし、
ぼくが勝手にぼくのしたいようにしているのに、きみに傷付くな、なんていうのは、ぼくの勝手すぎるよね。

ごめんね。
きみのこと、大好きだった。
でもそれ以上に、きみはぼくに出会うべきではなかったし
ぼくも、生まれるべきではなかったんだよ。

何かを間違えて、生まれてきてしまったんだよ。
間違いだから、間違うことは誰にでもあるから、誰も悪くない。


さよなら。
いっそ最初から生まれなければ、誰のことも傷つけなかったのに
……いや、とうの昔から、こうするべきだと分かってはいたのに
きみを笑わせようと、きみを守ろうと、
一生懸命努力することにぼくは存在証明を見出してしまって
そんな時間がぼくは楽しくて
うれしくて
生きていけるような
赦されるような心地がして
でも、最後まで一緒にはいられないのなら、その優しさは必ず裏切りになると、気付いてはいたのに、
ぼくはどうしてもその日々を捨てきれなくて、
こんなに長々と引き伸ばしてしまった。
別れが辛くならないうちに、とは、いかなくなってしまったんだ。


さよなら。
きみが大好きだったよ。