この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。
ログイン |
日常のどうでもいいことをだらりと綴ったブログです。お菓子作りのこと、小説、イラストときどき腐要素入っていたりしますのでご了承を。
ひどい雨。
書きました。
まだ書き途中のお話。
そこまで長くないのですが、このブログの文字制限に引っかかってしまったので、続きはmoreにあります。
もし、暇で暇で何もすることない!という方、よろしければ読んでみてください。
↓
『星と月と楓』
そっくりな二人と、それからもう一人
-------------
『星と月と楓』
高科星子(たかしなほしこ)に初めて会ったときのことはよく覚えている。
一昨年の夏。
そのときは驚いた。
本当に似ていたから。
夏の日差しが小さなビルの2階にある俺の事務所を容赦なく照りつけていた。
それでも冷房が完備されている仕事場は、外のうだるような暑さを想像すると外に出たくなくなるくらい涼しかった。
『なあ、かき氷食べたくないか?』
電話越しからこの季節には似つかわしくないさわやかな声が聴こえた。
仕事中の俺に何の要件かと思ったら、近所の花屋からかき氷のお誘いだった。冗談かと思った。
「まさかそのために電話してきたんじゃないだろうな、仕事用の電話に」
『店の近くの麹屋が今日からレインボーっていう味のかき氷を販売するって言ってたからさ、食べたいんだよね』
顔が見えなくとも、花屋の悪びれた感のないすがすがしい笑顔が想像できる。
「一人で行けよ。俺、仕事あるから」
『じゃあ俺そっちまで持ってきてやるから一緒に食べよう。あ、冷房は消しとけよ。暑いところで食べるのが美味しいんだから』
事務所の近くにある花屋の小山三千(おやまみち)はどうしてもそのかき氷を俺と食べたかったらしい。強引に約束をこじつけ一方的に電話を切られてしまった。
たまたまその日花屋は休みで、暇を持て余した三千は俺の仕事の邪魔をしに来るとのことだった。
探偵という名目でなんでも屋を営んでいた俺は、それでもそこそこの仕事の依頼があり、その日も報告の書類作成に追われていた。
言われたとおり冷房のスイッチを消し、窓を開けた。
窓を開けると夏の乾いた風と共に蝉の鳴き声も事務所の中に入ってきた。この季節は蝉の声に気を取られてしまうからあまり窓は開けたくなかった。
その年の蝉も良く鳴いていた。
ガチャリといきなりノックもなしに、事務所の扉が開いた。
「三千?」
「こんにちは」
明らかに三千の声ではなかった。女の声だった。
訪れた女を見て俺は一瞬言葉を失った。
少し丸みを帯びた小さな顔、大きめの茶色がかった瞳、左目の下にある涙黒子、俺と同じくらいの背格好(男の中でも俺は華奢だとよく言われる)。
夏を感じさせない真っ白な腕がストローハットをとった。
女の顔がさらにはっきりとわかった。
さきほどまで涼しかった部屋で俺はいつの間にか汗をかいていた。
女の顔は鏡でよく見る顔だった。
事務所の扉を開けて入ってきた女は自分でも戸惑うくらい俺にそっくりだったのだ。
こんなことがあるのかと思うくらい。
女は薄紫のワンピースを軽やかになびかせ、ふわりと俺に近づいた。
「ここは、なんでも屋さん?」
「あ、ああ。なんでも」
「ふうん。私あなたを探していたの、美村月路(みむらつきじ)」
「俺を?」
女の雰囲気的に仕事の依頼ではなさそうだった。
昔からの女嫌いも相まって、俺は自分の名前を知っているこの怪しい女に警戒心を抱いた。
それでも追い出そうと思わなかったのは、こいつが、この女の顔が。
「あ、私、高科星子(たかしなほしこ)」
聞いたことのない名前だった。
親戚?
いや、違う。そもそもこれほど自分に似ている人間と会ったことがない。
動揺を隠せない俺を嘲笑うかのように、女はその良く知る顔に綺麗な笑みを浮かばせた。
「ねえ、知ってた?私たちクローンだってこと」
「は?何をまたバカなことを」
「でもそっくりだと思わない?」
ああ、本当に。
似すぎだ。
「よー!レインボー味のかき氷買ってきたよ、むらさん!」
こちらもノックなしに俺の事務所の扉を開けて入ってきた。先刻の電話の声の主、花屋の三千だった。
三千は俺達二人を交互に見て口をぽかんとあけた。
「あれ、むらさんが二人いる」
場が落ち着いたころにはレインボーのかき氷は半分ほどとけていた。
性 別 | 女性 |
誕生日 | 10月26日 |
血液型 | O型 |