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となり。

あんなヤツよりもオレの方が

ずっとキミの隣が似合うと思うんだけど?








PM10:30ー
消灯時間30分前。

二段ベッドの上段に寝転びケータイゲームに夢中な俺と
学習机の椅子に座り、同じくケータイと睨めっこしてる君。
ただし、アナログな君のそれの画面は閉じられたまま。


俺がゲームしながら横目に見ていた限り、少なくとも20分以上は睨めっこ状態だよね?
優等生な君が明日の数学の課題をこなしている間も珍しく学習机の上に居座っていた水色のソイツ。(普段は使わないらしく、滅多にお目にかかることはない。それが君らしいと思っていたのに。)


夜、電話するな。


なんて、君から離れた場所にいるアイツに言われたんだろう、どうせ。
部活終わりはいつになく機嫌良さそうだったのに、日が沈むに連れて君の表情も沈んでしまった。


まあ、こんな光景もいつものこと。
君のカレシはいつも気まぐれ。いつも自由人。
いつだったか、軽口のつもりで彼のチャラさを揶揄ったら、そんなヤツじゃないよって否定された。(あれはきっと、怒ってたよね。)

サッカーセンスは抜群で身体能力もズバ抜けているしあんな見た目だから誤解される事が多いけど実は面倒見良いし頼りがいのあるヤツだよ。

照れたようにはにかんだように。そんな顔してヤツの話するのはやめてくれない?
(それ以上聞きたくないから、ふーん、て流してやったけど。)


君とヤツが離れて、俺と君の距離が近付いて。
(学校も部活も寮も。なんてったって相部屋だ。)

チャンスだと思った。
人見知りな君がココで一番頼ってくれるのも、一番一緒にいるのも俺。
君がパスを出して、俺がシュートを決める。相性もバッチリだと思わない?


だけど、近付けば近付く程、浮き彫りになる君とヤツの関係。
メールとか、電話とか、たったそれだけで愛想無しの君が笑う。穏やかな笑顔で。
代表の試合を待ち焦がれているのは、サッカーのため?ヤツに会えるから?
(それはきっと両方なんだろうけど。)


「ねぇ、水野。」

俺の方が近くにいるのに。

「ん?」
「寝ないの?」

眠気に微睡む表情で、いつまで待ってるの?

「ああ、悪い。眩しかったか?」
「いや、俺もゲームしてるから大丈夫だけど。」
「…液晶の光ってあんまり見てると良くないんだぞ。お前四六時中やってるよな。」
二段ベッドの俺を見上げ、渋沢キャプテンみたいな、母親みたいな小言。
(部屋でテレビゲームしてると君が嫌そうな顔するから、俺なりの気遣いだったのに。)


いつまで待ってるの?
俺がとなりに行っちゃダメ?

俺だったら君の隣にずっといる。
君を泣かせたりしないよ。
君を幸せにできると思うんだ。

あんなヤツよりも、オレの方がー。



「ねぇ、水野…」
「あ、」

俺と君と水色のソイツが、同時に声を出した。
ディスプレイを見て、一瞬にして明るくなる君の表情。

「ごめん藤代、ちょっと電話してくる!」
いつになく落ち着きのない君に

「…消灯10分前だから気を付けてね。」
こんなことしか言えない俺。(やっぱヘタレ…?)

「ありがとっ…」
「っ…」

静かにドアを締めながら俺を振り返った君の笑顔。


(ああ、やっぱり、綺麗だ。)





end.









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