*刑事パロ。シゲ25歳、竜也10歳。





コイツに出逢って、
真剣に生きてみてもいいかなって、ほんの少し思えるようになったんだ。

ごめんね、かみさま。
あの頃の僕らは、あなたを信じていなかった。







「シゲ!朝だぞ!早く起きろよ!」
「いった!!!」
甲高い声とともに頭に衝撃が走る。寝起きの身体にコレはキツイ。ただでさえ二日酔いなのに。
驚いて布団から顔を出せば、こちらを睨む少年。茶色い髪の隙間から覗く大きな瞳は、黙っていれば可愛らしいのだが。
「たつぼん…お前その手当たり次第にモノ投げる癖やめや…殺す気か?」
後頭部を摩りながら渋々身体を起こす。寝ている人の頭部を狙うとは何事か。クリーンヒットした漫画本はベッドの脇に転がった。
「お前が起きないのが悪いんだろ!俺もう学校行くからな!」
「あ、もうそんな時間か…」
壁に掛けられた時計を見遣ればこの歳に似合わずヒステリーな少年の登校時間。ということは自分もさっさと身支度を始めなければいけない時間だと今更気がつく。
「ごはんキッチンに置いてるから。」
「おおきに。お前はほんまにえぇ子やな〜。シゲちゃん感激。」
先に廊下を歩く少年の後に続き、目下の紅茶色の頭を撫でる。途端にこちらを見向きもせずに腕を振り払われる。子供扱いを嫌うこのボンはいつもこうだ。
「今日は?練習あるん?」
「今日はクラブの練習は休みだから、小島と河川敷行く約束してる。」
「さよか。ほな定時で上がったら迎え行くわ。知らん人に着いてったらあかんで。」
「わかってるよバカシゲ。行ってきます。」
「はい、いってらっしゃい。」
悪態を吐きながらも、行ってきますはちゃんと言うあどけなさに思わず笑みが零れる。ランドセルと大きなスポーツバックを肩に下げたその背中を見送るのが日々の日課だ。
「さて、と…」
自分も支度しなくては。日課が出来てから確実に遅刻は減ったが、元来朝が苦手な性分だ。足取りの重さを感じながらキッチンに向かえば、見慣れた朝ごはん。まだ小学生の彼が唯一作れる、目玉焼きとカリカリに焼いたベーコン、そして少し焦げたトースト。
「ほんまかわえぇなあ…」
クスッと笑ってトーストに噛り付いた。

彼、水野竜也10歳。小学5年生なので、冬が来れば11歳。どちらにしろあどけないサッカー少年の竜也は、ひょんなことから俺、藤村成樹の家に居候している。
長めの茶髪に整った顔立ちで一見女の子みたいに見えるが、サッカーの技術は大人顔負け。おまけに頭も良く小学生とは思えない落ち着きをしている。

子供なんて嫌いだった。
我儘で煩いだけだと思っていた。
しかし、自分の意に反して始まってしまったこの共同生活を思いの外楽しんでいる自分がいる。子を持つ親の気持ちはこんなものかと、物思いにふける自身に苦笑いすることも少なくない。
「あれからもう2年か…」
ふと見遣ったカレンダーに時の流れの速さを感じた。






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