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21人の輪〜震災のなかの6年生と先生の日々〜(4)「仮設と夏休みとハンバーグ」

9月10日に放送があった
「21人の輪(4)」
レポートあげます





みんなで撮った輪の写真

この春
もう一度撮るはずだった


しかし
地震が起きたーーー



福島県相馬市

打ち寄せる波の音


子どもたちの大好きな夏の海
今年は近づかないようにと
先生に言われた

学校のプールも中止になった


7月

震災の中
初めての夏休み


柚木応急仮設住宅

この仮設住宅では
小学生26人が暮らしている
写真に写っていた
6年生も4人

ちっちゃい女の子
カメラにアップだ


「あーそぼ!」


呼びに来たよ!


ここでは
すぐ近くに友だちがいる
それが心強い

女の子たち集まって
録画を観てる
「VS嵐」だ
ニノがアラレちゃんの回


多くの仮設住宅に
電話がないため
ほとんどの6年生に
携帯が持たされている

見せてくれた携帯
「相葉くん」

ほんとだ!相葉ちゃん
うさぎの耳ついてる
「まさぴょん」だって


今年は屋内で過ごす時間が
どうしても増えている
部屋の壁には
「嵐」のポスターもいっぱい

「ああ東京行きたい」
「行く?電車で?」
「無理無理」


6年生の1人
鎌田百子さん


お姉さんは東京で働いていて
両親と3人で暮らしている

鍋の料理を味見
「パプリカのにおいがする」

ご飯を作るのを手伝って
冷蔵庫を開ける
「何個?卵?」


海の近くに建っていた自宅は
津波で流された
車で山へ逃げて
命だけは助かった


百子さんにはこの夏休み
家族のためにやろうと
決めたことがある


「百ちゃん
ほら、なんにもない」

お父さんと車に乗って
見渡す景色
津波の跡ーー


5分後

着いたのは
お父さんの
経営するレストラン
ここで片付けを手伝っている

「やー!
クモの巣からまっちゃった」

デッキブラシで払い取る


レストランは
地震で一部破損し
津波で床下浸水した

それからずっと閉店している

働き者のお父さんも
地震のあと
何もやる気がおきなくなった

食器棚を開ける

「もう全部こう・・・
ガチャガチャよ
ここ(食器)がこう出てきて」

ショーケースに入った物も
出ちゃって

「ここにテーブルあったんで
ここでご飯食べてる人いて
ほいでここで
ビックリしちゃって」


「十何年かけて
積み上げてきたものが
ここにあった物が
全部割れちゃったって」


お父さんが作る
こだわりの料理は評判を呼び
お客さんは
遠くからも訪れた


百子さんは袋の中から
鍋を取り出した

「これで必ず
ハンバーグを煮ていた」


「なんかほんわかって
食べると心が落ち着く」


「冷蔵庫の中も
開ければ美味しいものが
入ってそうで

人がいる時でも
開けたくなるような
なんか
いいにおいのする冷蔵庫」

ニコニコ話す百子さん


「今はあまり
においしないけど」


お父さんが
津波にあった時に
ずっと着ていたコックコート
百子さんも
子ども用のを着てたって


地震が起きるまで
百子さんは休みの日をよく
このレストランで
過ごしていた


鏡を使って
ドアの見えにくいところまで
丁寧に拭く

ドアベルがカラカラと
心地好い音を奏でる


ここは
百子さんの
自慢のレストランだった


3月11日

全てが変わった


地震が起きた時
百子さんは
同級生の原田茉実さんと
下校の途中だった

「まわりはブロック塀とか
家の瓦?とかが
ガンガン崩れてきちゃって

バリバリっていう音が
ものすごかった」

「茉実ちゃんが
こわいって抱き着いてきて
ずっとしゃがんで
地震が終わるのを待ってた」


地震がおさまると
茉実さんは
家へと走って帰った





それが百子さんが
茉実さんを見た
最後の姿になった





2人は幼稚園の頃
友だちになり
それからいつも
一緒にいる仲だった

避難所で百子さんは
体調を崩し
あまりしゃべらなくなった

「なんで・・・
こんなにもやもやするのか
わかんないし
それが自分でも
よくわかんないから・・・」

「家が流されたことかも
しれないし
友だちとの思い出が
なくなったことかも
しれないし
大切な親友を
失ったことかもしれないし」


「で、
一番最後に出てきたのが
お店が開かないことかも
しれないっていうのが」


お父さんは一時
相馬市から
引っ越すことも考えていた

しかし
レストランの再開を望む
娘のために
もう一度
ここでがんばろうと決めた


相馬市から300km
遠く離れた地で
夏を迎えた6年生もいる


坂田龍之介くん
川崎市に来て
4ヶ月が経った

もうすぐ夏休み

龍之介くんはすっかり
クラスにとけこんでいた

友だちが
「失敗すると
ニャーって言うよ」

その子の頭をおさえる
龍之介くん


今は妹の紀乃さんと
おじさんの家で暮らしている

2年生の紀乃さんには
相馬市で働いてる両親と
離れていることがつらい

淋しさから紀乃さんは
夜になると
泣くようになった

龍之介くんが話す

「我慢してるのかな
でも我慢しきれないのかな

ちょっと部屋
行ってみたら泣いてた」


両親は悩んだ末
紀乃さんと龍之介くんを
相馬市に戻すことにした

「やっぱ帰る時が
来んのかなって」

「帰りたいけど
こっちで別れんのも
ちょっとつらいってか」

月日にしたら磯部が長い
でもこっちでも
たくさんの友だちができたと


川崎で過ごす最後の日
お別れ会が開かれた

歌ってくれるクラスメート

「フレッフレッ坂田!
フレッフレッ坂田!」

「福島に行っても
がんばってください」


「はい」

みんなに答える龍之介くん
ちょっとはにかんで


「坂田じゃあねー!」
「ありがとう!」

持って帰る
いっぱいの荷物を抱えながら
うしろで手を振る友だちを
振り返る

「じゃあねー!」


ここに来た時
すぐにでも帰りたいと
言っていた龍之介くん


しかし今は素直に喜べない



磯部では
がれきを撤去する重機が
忙しく動いている



8月10日

ドアを椅子を
丁寧に拭く百子さん

いよいよ明日
レストランが再開する

「やっと
店も元通りになってくし」

「前までの景色が嘘のよう」


お父さんは足りない食材を
一日かけて探しに行っていた

事故のあった原発からは
40km
心配する客も多い

それでも食材を生かしながら
体にいいものをめざして

せっかく楽しみに
来てくださるから
「楽しんでもらえれれば」


明日は何が食べたい?


「明日?
ハンバーグ食べたい」


満面の笑みを浮かべて
答えてくれる百子さん

「明日は百ちゃんの
好きなものが出るかね?」

『うん』とうなずく


お店に灯るあかり

「5ヶ月だよ、5ヶ月」
お父さんの声

ちょっと離れて
レストランを見る

「らしい!らしいよ!
お店らしいよ!
とっても」

うれしそうに笑う百子さん
2人でながめて

「不思議だよね
こんな光景見れっと
思わなかったもんね」

「今からでも
お客さん入ってきそう」


再開の日


お花が飾られ
お父さんは
コックコートに腕を通す

「5ヶ月ぶりだね」
もれる笑み

「太ったねパンパンだもん」


料理に腕をふるう
お父さん
久しぶりのその姿を
百子さんはずっと見ていた


夕方6時


開店と同時に
常連客が駆け付けた

にぎわう店内
百子さんが厨房で
こっちこっちと呼んでいる

「これ美味しそう」

お父さんの料理が戻ってきた

「美味しい」

お客さんがうなすく


メインディッシュは
煮込みハンバーグ

パン粉をいっさい使わず
豚肉だけで作る
お父さん自慢の一皿


地震から5ヶ月


「いただきまーす」


このハンバーグが
食べたかった


「おいしい」


カウンターの中から
「どうですか?
待ちに待った
ハンバーグは?」

「おいしい」


「百ちゃんは
お父さんのあとを継ぐ?」

お客さんにそう聞かれて
小さい声で

「継ぎたい」


帰っていくお客さんと握手
その背中を見送る


「お父さんの顔
いつもとはちょっと違う

なんかうれしそうな顔」


カメラにピース
百子さんの笑顔があふれる


4日後


この日
百子さんは両親に
お昼をごちそうする
ことにした

レストランが再開して
初めての定休日
疲れの出たお父さんに
自分の料理を
食べてもらいたい

「ミニミニピザ」

焼けてるか様子を見て
オーブンの目盛りをまわす


「具いっぱい
入りすぎたんじゃないの?」
そう言いながら
お父さん一口

「いい、いい」

穴開けた?と聞かれて
「開けてない〜!」

「穴開けてやったほうが
下に吸い取るから
パリッと美味しいよ」

難しい〜!と言いながら
野菜を切る


「料理好きだなんてのは
初めてだからね
百ちゃん言ったの」


七夕に書いてるって
指した壁
貼ってある短冊

「まあ・・・
うれしいわね」

笑うお父さん


ーお父さんみたいな
シェフになれますようにー


「お父さんが
お店のためにがんばってる」


「自分のためにではなくて
お客さんのために」


「私もいざ
こういうことになったら
お父さんみたいなふうに
できればいいな」


シャッシャッと手際よく
フライパンをまわす手を
百子さんが見てる
カウンターに乗り出して



復興への願いをこめて

相馬市では盛大に
夏祭りが開かれた


たくさんの人が集まってきた
スピーカーから流れる
太鼓の音

浴衣姿の百子さんが踊る

地震のあと
故郷を離れている
子どもたちも
祭りを見に帰ってきた

宮城に避難している
美衣奈さん
友だちと
タコ焼きを食べながら
「あっつい」

石川に避難してる
鈴也くんの姿も

「久しぶりにどうだった?」

「楽しい」


夜空に花火が打ち上がる
ぱああっと明るい光が咲く


8月23日


例年より2日早く
夏休みが終わった


川崎へ避難していた
龍之介くんが帰ってきた

今年の夏
初めてのこと

川崎の遊園地のプールで
初めて2mの飛び込み台から
飛び込んだこと

みんなが
「すごい」って驚く


相馬市立磯部小学校の6年生
1人増えて15人


2学期が始まったーーー


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