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バレンタイン (?日前提)

 
二月十四日。
今日はバレンタインデーである。


『賑わっていますね』


夕飯の買い物を終えた日本は、街中であたりを見回してくすりと笑う。


『国民の皆さんが嬉しそうにしていると、私も嬉しくなります。でもそろそろ退散しなければ』


若い人たちが賑わう中で和服姿の彼があきらかに浮いているのは明らかだった。日本はいそいそと帰路につく。
歩いて数十分もすれば日本の家がみえ、日本は寒いから早く家の中へ入ろうと気持ち歩く速度を速めた。
しかし、ふと今日はまだポストの中を見ていないことを思い出したため、家に入る前にポストをのぞいた。


『おや……?』


中には一枚の封筒。日本は手にとると、差出人の名を探す。しかし差出人の名前は見当たらず、そのかわりに糊付けのところに「SWALK」の文字を見つけた。
日本は一瞬考えた後、ふふっと笑って家の中に入っていった。


『来月にこの差出人さんへお返しを贈らなければいけませんね』


日本がそっと「SWALK」の文字へ口付けると、封筒からはほのかにバラの香りがした。



END

Danke so weit (列)


「ふう、もう少しで終わりますね」


私は残り少しとなった洗濯物から、また一枚バスタオルを手に取りながらつぶやきました。空は青く晴れ渡り、あたりは静かです。少し前とは大違いの光景です。


1918年11月。第一次世界大戦はドイツ・オーストリアの同盟国側が破れ幕を閉じました。
第一次世界大戦では、私は中立を宣言しましたが無視されてしまい大きなダメージを受けました。しかし今こうして命拾いをしているのは、救いの手を差し伸べてくださったお兄様のおかげです。


だから私は、お兄様のお側にいたいのです。


でも。


私は手をいったん手を止めて考え込みました。


長らくお世話になっているオーストリアさんとの関係を、突然ばっさりと切るのはどうなのでしょうか?関税同盟や外交委託の破棄を一方的に行うのは気が引けます。


私は再び洗濯物を手に取りながら悶々と悩んでいました。気がつくと洗濯物はもう干しきっていて、かごは空っぽになっていました。


「次はお部屋のお掃除をしましょう」


かごを取るためにかがむと、二つに分け編んだ長い髪が落ちてきたので、それを後ろに払いつつかごをもって家の中へ戻ります。


「あら?」


家の中に入ると机の上に無造作に置かれた新聞に目が留まりました。私はかごをいつもの場所に戻し、新聞を手に取ります。


「帝政崩壊……」


新聞に書かれた内容は、オーストリアさんの帝政崩壊についてでした。それを読み終えた私は、そっと新聞を戻しお掃除にとりかかりました。



後日。


「大変お世話になりました」


私はオーストリアさんのもとへ尋ね、はっきりと宣言しました。


「リヒテンシュタイン」


「ハプスブルク家の皆様には大変お世話になりました。結んでいた関税同盟等が満期となるのは寂しいことです」


「……満期、そうですね。こちらこそありがとうございました」


オーストリアさんは静かにそういいました。窓から入る日差しのせいで、逆光でオーストリアさんの顔がよく見えないのが救いなのかもしれません。


「今後新しい体制がうまくいきますよう、お祈りいたします。それでは失礼します」


私はそう言い切ると、頭を下げ静かにオーストリアさんのもとを後にしました。



そしてその夜、私は意を決して鋏を手にしました。



翌朝。


「リ……リヒテンシュタイン!その髪はどうしたというのだ!」

 お兄様は私の短くなった髪を凝視しながらいいました。私はお兄様の驚いた声に内心少しびっくりしつつも、微笑みながら静かに口を開きます。


「あら、お兄様。ごきげんよう。気づかれましたか?お兄様の真似です、可愛くはないですか?」



お兄様と、おそろいにしたのです。






END
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手中

 
 ぎしっぎしっぎしっ。

椅子が悲鳴を上げ続ける。どうやら今日のお嬢様はご機嫌らしい。なぜ「らしい」というのかというと、私のいる位置からだと窓から入ってくる逆光のせいでお嬢様の横顔がシルエットのようにしか見えないからだ。

 ぎしっぎしっぎしっ。

この悲鳴は子どもがきゃっきゃとはしゃぐ声に少し似ている気がする。私がそんなことをぼんやり考えていると、お嬢様が唐突に口を開いた。

「ねぇねぇアオイ」

「はい、なんでしょうお嬢様」

私がいつも通りの対応をすると、お嬢様は少し声のトーンを下げた。

「青いバラって綺麗なのかしら」

「それは私にはわかりかねます」

「どうして?」

お嬢様はそう訊ねながら、小首をかしげたようだった。

「なぜなら青いバラはまだ存在しないからです」

私は静かに、でも単調にならないよう気をつけながら応える。それとは反対に、お嬢様は興奮したように声のトーンをあげた。

「そうよね、まだ存在さえしないものですものね」

「ええ、そうです」

「だれも見たことのない青いバラ。不可能の代名詞」

興奮しつつもうっとりとしたような、艶のある声でお嬢様はつぶやいた。そしていつものように独り言が始まるのである。

「いまだ見ぬ花」

「美しい花」

「誰にも受け付けない花」

「なんて甘美な響きなのでしょう」

ぎしっぎしっぎしっ

あぁ椅子が壊れてしまいそうだ。あれが壊れたらお嬢様はどうなってしまうのかな。

「ねぇアオイ」

「はい、お嬢様」

「青いバラって素敵ね」

お嬢様は振り向いて、私の頭上にある窓の外、それもどこか遠いところを向いてそう言った。一方私は、無造作に床に落ちている、新聞の切抜きをぼんやりと見つめていた。
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自己満足

 
私は嘘をつきました

自分のために

相手のために

口がさけてもいえません

きっと相手が悲しむから

これは腫れてるんじゃない

小さな傷なんだ

本当にほしかったのは

冷やす為のものじゃなくて、傷を塞ぐもの

みんなの傷を塞ぐもの

私のは自己満足なんです

自己満足で相手の傷をえぐりたくない……
 

あかり

 
自分に問う。


好きなモノはなにか


すべきコトはなにか


信じるべきモノはなにか


本当にそれでいいのか


ここで出した答え。


それ=「明かり」だ。


自分の足元を照らす明かり。


だからそれを吹き消してはいけない。


吹き消してしまったら、道にまよって目指す場所に辿り着けないから。


さぁ、「明かり」をしっかりもって。


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