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ヒナちゃんA

ヒナちゃん@

乱世乱世、乱世でござる

オナニー紫絵ちゃん物語

場面描写の難しきことよ。


京楽は相手のこころを惹き付ける話術を心得ていた。

どんな種類の話であれ、彼が話すとそれは特別な物語になった。


口調や、間の取り方や、話の進め方、すべてが完璧だった。

彼は聞き手に興味を抱かせ、意地悪くじらし、考えさせ、推測させ、その後で聞き手の求めるものを的確に与えた。


その心憎いまでの技巧は、たとえ一時的であるにせよ、七緒のまわりの現実を忘れさせてくれた。

しがみつくように残った記憶の断片を、あるいは出来れば忘れてしまいたい心配事を、濡れた雑巾で黒板を拭うようにきれいに消し去ってくれた。


彼のもとに就いてから、わたしはそうやってその優しさにずっと救われていたのだ。

わたしは幼い頃からしっかり者に見られていたが、実は誰かに甘えたく、母上とのの思い出に記憶をめぐらせては孤独になった。

そう思う自分に、育ててくれた老翁や老婆に背徳感があったのだ。


だからだろうか、京楽のどこか浮世に足をつけないでいるような振る舞いに甘えられたのは。


幼い頃は、読書というかたちで。

いまになってもわたしは、ことあるごとに理由をつけては京楽のもとへ行っては甘えているのだ。


まるで、仕事をさぼる上官に振り回されているように

わたしはいつも彼を追いかけていた。


「隊長、ここにいらしたんですね」ほう、とため息をついた。


照りつける日射しが足下の鉱石を乱反射させていた。京楽が座る木陰の岩はひんやりと気持ちよさそうだ。


「見つかっちゃったか、」そう言って優しい顔をわたしに向けるのだった。


言葉も、所作も、向けられる笑顔も、すべて完璧だった。

大きな身体をまるめている姿も、笠を持ち上げる指も、わたしをとらえると更に柔らかくなる笑顔も。






「七緒ちゃんさ、綺麗になったね」

照りつける日射しが、足下の鉱石が、死覇装の漆黒が、彼女のなめらかに伸びる四肢、首をいっそう美しくひきたたせていた。


「なにを突然に…。さぼった言い訳が思いつきませんでしたか」

七緒は、めがねの端を押し上げてそう言った。


最近、七緒の控えめな女らしさに磨きがかかってきたような気がする。

その事をボクが褒めると、呆れた顔した。


ボクは本気で言った。これほど美しく、これほど清廉で、これほど純情な女は彼女をのぞいて他にいないだろう。



彼女の腕をひいて、木陰に招き入れた。

七緒の肌に陰が落ちた。たまに葉を透けたひかりが顔にゆれた。



「ほんとだよ」

ボクは優しくキスをした。



「ボクの七緒ちゃん」


京楽は目尻に皺をよせて笑った。


「それじゃ、戻ろうか」

ボクのうながす声で、彼女はハッと正気に戻ったように踵を返した。


「誰がボクの、ですか」