それから30分ほど歩き、家に帰った輝真。
何の変わりもない一戸建て、実家のようである。
懐から鍵を取り出し玄関を開けた。
(ただいま)
一言そう言って敷居を跨ぐ。
誰も出てくる様子はない。
(おかえり)
そういう両親の声が聞こえただけであった。
流しで手を洗い軽くうがいをして、二階の自室に向かう。
空手胴着は洗濯かごに入れた次第だった。ベッドに腰掛け少しぼんやりしていると、今日の稽古が思い出された。
(姿勢がなってない)
(もっと息を吸え)
色々と言われたことを反芻しているうちに、眠気がしてきた。
(気持ち悪いな)
当然である、稽古で汗を流した後なのだから。
箪笥から着替えを取り出し、浴室に向かう輝真だった。