やがて、道場主の掛け声で稽古が始まった‥一斉に整列する道場生たち、輝馬も当然その中にいる。
(めっきり暑くなったが、練習は怠らないように‥各々鍛練は宝であるからでして、始めい)
たんたんと話す道場主そして、いつものように基本の蹴り、突きの練習を開始した道場主‥皆熱心に励んでいる様子であった。(せい)(せい)(はああ)
そんな中に混じって基本を欠かさない輝馬であったが、漠然とした思いが‥やがて頭の中に浮かんできた。
(この基本の練習する度に、分かってくるんだ)
邪念にも思えて突きやら蹴りやらを突き出すのに一層専念する輝馬、しかし思いは強くなる一方で、つい至らないことを考えてしまう。
(自分がどれだけ強くなったか、この基本稽古をやる度に‥必ず分かって来るんだよな)
そんな折り。
(輝馬!たるんでおるぞ)
道場主の叱責、静かだが力強い声だった‥慌てて詫びる輝馬。
(すみません‥気を付けます)
言って再び稽古を再開した輝馬、道場主はそれ以上何も言わない‥道場生達の研鑽の声だけが道場に響く次第であった。