その日の大学の帰り道。
家を目指す輝真、自転車なぞ漕いでいる。(割と暑いな)
心中そんなことを呟いていた。
つと、見慣れた古本屋が視界に飛び込む。(寄ってくかな)
割とこの古本屋の常連である。
自転車を傍らに止め店内に足を運ぶ輝真。(いらっしゃい)
敷居を跨ぐと顔見知りの店主が声をかけて来た。
(格闘の教本かね)
ぼそっと呟いてくる店主、表情はにこやかだ。
(そんなところです)
割と丁寧にこたえる輝真。
まっすぐにその一角を目指す、格闘の教本‥。
目を引いたのは、空手の入門書と護身術の教本だった。
2つ併せて千円ほどである。
(ください)
黙って購入する輝真。
店主は静かに頷いた。