スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

土方日記(5/5・早朝)

5月5日 雨


障子を隔てた外からは雨音が聞こえ、すぐ近くからは安らかな寝息が耳元に届いて目が覚めた。


――しとしとしとしと…。


止む気配をまったく感じないこの様子では、天気予報を見なくても雨は一日中降り続くだろう。
ここ二三日、天気の優れない日が続いていたが、よりによって今日降らなくても。


「それは日頃の行いが悪いからですぜ」


まるで俺の心の中を読んだような声がすぐそばで聞こえた気がして、閉じていた瞼をゆっくりと上げる。
…それにしてもいつの間に目が覚めたんだ。


「(…いや、お前があんな可愛いことしてくるからだろ)」


珍しく素直に甘えてきて、あり得ないくらい可愛かったせいだろ。
だから雨が降ったんじゃねぇのか?と真っ先にそのことを言ってやろうと瞼と一緒に口を開こうとしたら、瞼はしっかりと落ち、自室でひとりで寝る時ですらアイマスク着用している総悟が無防備な寝顔を俺に晒していた。


「(…空耳か)」


総悟の皮肉たっぷりの、面白がった声がすぐそばで聞こえた気がしたが、どうやら自分が寝ぼけていたようで、空耳を聞いただけのようだ。
スースーと気持ち良さそうに寝息を立て、若干開いた口から涎を垂らしている顔を見る限り、寝たふりをしているようにはまったく見えない。

それに…。

起こさないようにそっと、首筋に掛かった髪を払ってやりながら、幼さが抜けきれない寝顔から、赤い跡がいくつも残る首筋、そして肩へと順に視線を移す。


「(…そう簡単に起きるわけねぇ、か)」


ほんの数時間前まで、互いの境界線が分からなくなるまで深く繋がっていたのだ。
総悟にキスの仕方を教えてやりながら副長室で一度、とろとろに溶けて動けなくなった身体を抱きかかえ、連れ込んだ自室の布団で白い身体に余すところなくキスの雨を降らした。
普段では考えられないほど俺に甘え、素直に身を委ねてくる姿がいとおしくて、総悟が気を失うまで何度も身体を重ねた。


「(あれくらいまでとは言わねぇが、普段もう少し素直だと…)」


困らないんだが。
無理させないでおこうと頭の中でいくら思っていても、普段が普段なので、いざ素直で可愛い総悟を見てしまったら、理性なんていとも簡単に吹き飛んでしまう。


…お前が煽るから悪いんだぜ?


自分の身体に寄り添って、まだぐっすりと眠っている総悟の前髪をそっと掻き上げて、にきびひとつないつるっとした額にキスを落とす。
総悟の額から唇を離すと、総悟を起こさないように気をつけながら身体を起こした。
もう五月だから風邪も引かないだろう、と身体を拭いてやった後、暑そうだったので裸のままで寝かせたのが今となっては仇となった。
せっかくの非番なのでもう少し寝ていたかったが、裸の総悟を前にして、我慢していられるほど俺はできた男ではない。
淡い色の髪やきめ細やかな肌から渋々手を離すと、総悟が風邪を引かないよう、肩までしっかり布団をかぶせてやり、布団の横に置きっぱなしにしたままの煙草の箱とライターを持って庭に面した廊下のほうへと歩いて行った。

煙草の箱から取り出した一本に火をつけたところで、障子の桟に手を伸ばし、少しだけ隙間を開けてから自室の時計に一度だけ目をやる。
雨が降っているせいで部屋の中は薄暗い。
起きる時間にしてはまだ少し早いだろうと思っていたが、思っていたより時間は過ぎていた。

障子の隙間から外に目をやり、止みそうにない雨雲を睨みつける。


自分の誕生日が雨でも別に構わないのだが…今日は子供の日でもある。


ちらり、と未だにぐっすり眠っている総悟に視線を向けたあと、俺は煙草を銜えたまま、障子から部屋の隅にある文机のほうへと足を向けた。

自室のほうの文机も副長室の机と大差なく、書類や資料の山で埋め尽くされているので、頭が空な総悟が漢字だらけの資料や書類の山の中を漁るわけがない。
(本当は仕事を自室にまで持ち込みたくはないが、誰かが余計な仕事を増やしやがるのでそうも言ってられない)

それを利用して、資料と資料の隙間に隠して置いたあれは……あった。


平積みにした資料が崩れないように気をつけながらその雑誌を引き抜き、仕事の合間に調べてポストイットを貼ったページを開く。


「(雨の日でも行ける近場なとこがあったはずなんだが…)」


真剣に雑誌に目を通していたら背後から、「くしゅっ!」と小さなくしゃみが聞こえた。

そしてそのくしゃみのすぐあとに、


「ぅ…ん…さむ…い…」


小さな声が聞こえたあとに布団が身じろいだので、俺は雑誌を持ったまま総悟に近づいていった。


 * * *


次のそご日記で終わる予定です。

土方日記(5/5・深夜)

5月5日 曇りのち雨


男にしたら柔らかい、薄桃色をした唇が触れたのはほんの一瞬。
しかも唇の端をぎりぎり掠めていくという、俺からしたらどうやったらそんな見事にずれることができるんだと思ってしまうぐらい、逆の意味で高度なテクを持ったへたくそなものだ。


…まぁ、俺からキスすることはあっても、こいつからキスしてくることなんて、滅多にねぇもんなァ。


だからへたくそなのにも納得できる。
前にこいつからしてくれたのっていつだっけ?と少し考えなければならないほどに、総悟からキスをしてくることなんて滅多にない。



それはキスだけじゃない――が。



総悟の性格は十分理解してるつもりだが、互いの気持ちを確かめあったときしか、総悟からの「好き」も聞いたことがないような気がする。

いや、気がするじゃなくて実際そうなんだけど。


だからこいつの口から言わせたいってもちろん思うし、物足りなく感じるときもあるけれど、それでも無理に問い詰めたりしないのは、総悟が必死こいて隠そうとしている俺への想いなんて本当はばればれだからだ。


「(…熟した苺みてぇ)」


眼下に組み敷いている総悟はきつく瞼を閉じて、耳も頬も唇も、それ以外の全部も熟した苺と同じ色をしている。


…どうりで甘いわけだ。


一瞬触れただけだというのに、思いのほか甘い味を残して行った総悟の唇。
みずみずしい苺と同じ色をした総悟が甘くないわけがない。



へたくそ、って笑ってやろうと思ったのに、これは…かなり困った。



たまに見せる表情が言葉よりも雄弁に、俺が好きだと伝えてくるから。
俺の上着をぎゅっと掴んで離さなかった総悟の手が離れてしまったのを合図に、俺は真っ赤な顔を隠すようにうつむいている総悟をただじっと見つめていた。
すると部屋の中に静けさが訪れる。
総悟の突然の行動に呆気に取られていたというのもあるけれど、しばしの間、総悟を見つめたまま黙り込んでいたら、俺と同じように黙り込んでいた総悟が徐に口を開いた。


「…こっちは、おまけでさァ」


突然何を言い出したのかと思えば。

落としていた視線を棚のほうに移動させた総悟の後を追って、俺もそちらに視線を動かした。
総悟が視線を移した棚の上には置時計がある。
時間のことなどいまさらどっちでも良かったのだが、総悟につられたついでに時計を見ると、知らぬ間に零時を過ぎていた。


「(零時三分か…)」


今の時間を知りさえすれば時計には用がないので、俺はまた眼下にいる総悟に目を向ける。


…せっかく美味しい状況なのに、隙を見て逃げられても困るしな。


けれどその総悟はと言うと、未だにその置時計をじっと見つめているだけで、俺から逃げる素振りも見せない。


「(…時計に何かあるのか?)」


その視線がまるで、俺に何かを伝えたがっているように思えたので、俺もまたしばらく時計に目を向けていると…ふと思い出した。


…分かりにくいことしやがって。


こいつに期待したって無駄だって思いながら、それでも諦めきれず期待していたはずなのに、いざ貰うとなると、今日が何の日か忘れてしまうほどに動揺するとは。
けれど改めて考えてみれば、マヨネーズと見せかけたバスソープも、いたずら好きな総悟が選びそうな代物だし、総悟の行動をひとつひとつ順に追って行けば、自分の中のつじつまもすべて合う。


「おまけ…?」


静寂が包む副長室に、自分の声がやけに大きく響いた。
おまけって、総悟は何のことを言っているのだろう。
ひとり言のように呟いただけなのに、部屋もその周りも静かなこともあって、総悟の耳には俺が総悟に問い返したように聞こえたのだろう。


「だ、だからっ、グ○コのおまけと同じだって、言ってるんでさァ。
こっちがおまけで、あっちが……んっ、」


普段の様子からは想像も付かないほど、真っ赤な顔をした総悟が必死になって言葉を紡ぎ出しているのを見て、俺はとうとう我慢の限界に達した。
総悟の顎を掴んで、時計から俺のほうへと向かせると、総悟に抗議の声をあげられる前に、可愛らしいことを吐く薄桃色の唇を自分の口で塞ぎこむ。


「お前、可愛すぎだよ」



…こっちがおまけだって?
馬鹿言うな。

どう考えても向こうのほうがおまけだろう。



息ができないと怒ってくる前に、すぐに唇は離してやったけれど、恥ずかしそうな顔をした総悟が俺以外に目を向けるのはどうしても許せなくて、顎を固定した手をそのままにしていると、とうとう総悟が俺を睨みつけてくる。
けれどうっすら涙を浮かべた瞳で睨まれたって可愛いだけで、そんな総悟に俺は薄く笑い、総悟が文句を吐こうと口を開いた隙を見て、今度は口の中に舌を忍び込ませる。


「んっ、」


俺にしか聞かせない総悟の、甘い声が耳に届く。
それだけで俺の心が満たされて行くような気がした。
最初は舌を奥に引っ込めて、逃げ惑っていただけの総悟も今は慣れないながらも必死に俺の舌に絡ませようとしている。
上手とはとても言えないキスだけど、こんな拙いキスでも俺を煽るには十分だった。


「総悟、」


名を呼んだことで、互いを繋ぐ透明な糸が切れる。
総悟の額から指を差し入れて髪を溶いてやっても、総悟の反応が今ひとつない。
どうやらキスだけでくったりと身体の力が抜けてしまったようだ。


「…?」


不思議そうにぼんやり見つめ返してくる瞳に、俺は右頬に軽くキスを落とし、そして白い耳元に唇を寄せた。


「だっ、だから…、こっちは…おまけだって言ってるだろィ?
それにおまけはひとつだけですぜ」


耳元に熱の帯びた低い声で囁いてやったら、総悟の耳が、顔が一瞬で赤に染まり、急いで俺から顔を逸らした。


…いまさら顔を逸らしたって遅ぇよ。


「今のじゃおまけにも入んねぇよ。しかも唇の端じゃねぇか。
それにひとつだけって言うならあっちがおまけになるだろ。
上手なちゅーの仕方を俺が教えてやるから、その分だけお前も俺に付き合えよ」


偽マヨのほうを指さしながら言ったら、それ以上総悟は何も言わなかった。

総悟が顔を逸らしたことによって、丸見えになった右耳が目に入ってしまい、俺は吸い寄せられるようにそこに唇を寄せた。
そして唇を右耳から徐々に下へと滑らせて行き、細い首筋と吸ってくれと言わんばかりの鎖骨に、一箇所ずつ俺のものだという所有印を残す。


「ん、…誰もちゅーの練習がしたいなんて言ってやせん」


さっきまでの可愛さはどこへ行ったのやら。
はぁ、とため息を吐いたけれど、憎まれ口を叩く態度すら可愛いと思ってしまっている俺もたいがい、行くとこまで行ってしまっている。
総悟の態度に対してため息を吐いたつもりが、気付けば自分自身になっていた。


「そもそもお前があんな可愛いことするからだろ。
据え膳食わぬは男の恥って言うじゃねぇか」


それさえなけりゃあ、もう少しは我慢できた…はず。
…総悟を目の前にしたら無駄だってことを本人には黙っておいて。


「…スエゼン、ってなんですかィ?」


総悟がきょとんとしているので何かと思えば、小さな口から零れた言葉に俺は少し目を見開く。


馬鹿な子ほど可愛いって言うが…本当だな。


「……お前のことだよ」


さっそく総悟の唇に口付けて、上手なちゅーの仕方を教えてやる。
俺にいたずらをするときだけ賢くなる頭も考えものだが、空っぽ過ぎるのも考えものだな、と思いながら。





保健だけは俺が教えてやるから他の奴には頼るなよ。


 * * *


おそらくこのあとは土方先生の保健のお勉強タイムに入ってるかと。

そうごにっき(5/5・深夜@)

5月5日 くもりのちあめ



時間にしたら実際は一秒も触れてなかったと思う。
けれど俺には長い間、土方さんに触れていたような気がした。

だって俺の唇に煙草の味が移っていたから。



やっぱ失敗した、かも。


本当はちゃんとくちびるに、って頑張ったつもりなのに、土方さんからちゅーされることは山ほどあっても、俺から土方さんにちゅーしたことなんて、片手でも足りるくらいだからなのか、俺がちゅーした場所は唇の真ん中ではなく、唇のぎりぎり端っこのほう、

…だと思う。


目を開けて確認したわけじゃないけど、触れた場所の感触がいつもとちょっと違ったから。

勢い余ってちゅーしたにしても、あまりにもひどすぎると自分でも思った。
でもいまさらもう一回、なんて、恥の上塗りをしそうでできるわけもない。

唇を離すと同時に瞼を開けて、土方さんの胸倉をそっと離したら、思いのほか強い力で握りしめていたのか、上着が少ししわくちゃになっていた。
そのしわくちゃ加減が、無意識のうちに土方さんを離すまいとしていたかのようで、むちゃくちゃ恥ずかしい。


…なんか言わなきゃ。


俺の身体の上に圧し掛かっている土方さんはさっきからずっと、俺の顔をじっと見ている…ような気がした。うつむいているからと言っても、肌に突き刺さるような視線を感じれば、見つめられてるってことくらい分かる。
だから余計に焦った。

沈黙が長くなればなるほど、切り出しにくくなることくらい分かっていても、勢いでちゅーしたことがいまになって重くのしかかってくる。
でも何か話さなきゃ余計に変に思われる、と思った俺は視線を落としたまま、気付いたらとっさに思いついたことを口から零していた。


「…こっちは、おまけでさァ」


俺がさりげなく、落していた視線を棚の上にある置時計へと移したら、土方さんも俺につられるようにして視線を棚のほうへと移した。


「(…十二時三分)」


いまの時間をようやくこの目で確認して、十二時を過ぎてることに俺は少なからずほっとした。
勢い余ってしてしまったことだけど、やっぱり昨日のちゅーより今日のちゅーのほうがいい、と思う。
このひとがどういう反応をするかは別として、あくまでも俺だったら、だけど。


(や、昨日でも今日でもおとといでもあさってでも、このひとにちゅーされるのは…ヤじゃねーけど)

一挙手一投足を見られていることを逆手に取って、棚の上にある置時計をじーっと見つめているだけだけど、これでも、俺がいまできる精一杯素直な想いだったりする。
それを、きまぐれに俺がこっちを向いているだけとか、土方さんと目を合わすのが嫌だからそっぽを向いているだけと感じ取るかは土方さん次第。


「おまけ…?」


しんと静まった部屋に、ぽつりとひとつの言葉が零れ落ちた。
深夜を回ったからか、それとも副長室だからか、部屋の外からは騒がしい声も聞こえてこない。
土方さんにちゅーしてしまった時点で、言い訳なんてさせてもらえないのは分かってるし、そもそも言い訳なんて思いつかないけれど、それでも土方さんに聞き返されてしまったら、俺は慌てて言葉を注ぎ足していた。


「だ、だからっ、グ○コのおまけと同じだって、言ってるんでさァ。
こっちがおまけで、あっちが……んっ、」


こっちは必死になって言葉を紡ぎ出しているのに、土方さんはそんな俺の顎を掴んで、時計からくいっと自分の方へと向かせたと思えば、そのまま、言葉を零している俺の口をふさいできた。


「お前、可愛すぎだよ」


すぐに唇は離れたけれど、意外と綺麗な漆黒の目がいとおしそうに俺だけを映してくるから、そんな土方さんが恥ずかしくて顔を逸らそうとしたのに、土方さんはそれを許してくれない。
なにすんでィひじかた、って言う隙を与えて貰えるわけでもなく、無駄な抵抗をしている俺に、土方さんは薄く笑ってもう一度、今度は深く唇を合わせてきた。


…可愛いってなんだよ。


いつもちゅーされるときは目閉じたままだけど、今日は何となく、うっすら薄目を開けて目の前の顔を覗き込んだら、その顔がどこか嬉しそうな表情だったので、なんだかなァ…って思う。

だけどそんなことを考えられていたのはそこまで。

土方さんの舌にほんろうされて、俺はすぐに何も考えられなくなってしまった。


「総悟、」


使い物にならない頭の中は、土方さんの唇が離れたあともしばらく続き、珍しく穏やかな顔の土方さんをぼんやりと見つめていた。


「…?」


俺の名前を呼んだ土方さんをうつろな目で見つめていたら、土方さんは右頬にちゅっ、とちゅーしてきたあと、俺の耳元に口を寄せる。
俺と土方さん以外誰もいないのに、内緒話をするかのような行動に俺の頭の中はハテナマークだったけれど、小さな、だけど俺の好きな低い声で呟いて離れていった土方さんのにやつく顔を見て、いつも働かない俺の頭でさえ、土方さんの言葉の意味を理解した。


「だっ、だから…、こっちは…おまけだって言ってるだろィ?
それにおまけはひとつだけですぜ」


その甘いささやきに、俺はふいっと土方さんから顔をそらす。
本当はここから逃げたかったけれど、掴まっちゃってるから顔だけ。
土方さんには俺の顔がどうなってるのかなんて、バレバレだろうけど。


「今のじゃおまけにも入んねぇよ。しかも唇の端じゃねぇか。
それにひとつだけって言うならあっちがおまけになるだろ。
上手いちゅーの仕方を俺が教えてやるから、その分だけお前も俺に付き合えよ」


あっちがおまけ、と俺が買ってきたマヨのほう指した土方さんに、「わざわざデパートまで行って悩んでせっかく買ってきたのに」って思ったけれど、それよりも、こっちのほうがいいって言われたら、それ以上何も言えない。

顔をそらしたことによって、丸見えになってしまった俺の右耳から唇を滑らせて行った土方さんに首筋と鎖骨の一箇所ずつを強く吸われた気がする。


「ん、…誰もちゅーの練習がしたいなんて言ってやせん」


いっぱいちゅーするのはヤじゃねぇ、けど。

…それだけじゃあすまねぇもん。


そう言ったら、土方さんの口からはぁとため息が零れる。


「そもそもお前があんな可愛いことするからだろ。
据え膳食わぬは男の恥って言うじゃねぇか」


…可愛いことした覚えねぇんだけど。


そのことを口にしたら、目の前のひとが何を言い出すか分からないから、別のことを口に出した。


「…スエゼン、ってなんですかィ?」


すると土方さんは少し目を見開いたあと、すぐさま俺の唇に自分の唇を落としてくる。


「……今のお前のことだよ」


どうせ土方さんのことだから、「お前はそこまで馬鹿だったのか」とでも思ったのだろう。


頭が空なのは元からだから仕方ないけど、上手なちゅーの仕方は土方せんせーの腕に掛かってるんじゃないだろうか。

物覚えの悪い俺に、根気良く付き合ってくれる(付き合ってくれなんて誰も言ってないけど)みたいだし。

だから今日はちょっとだけ、
本当にほんのちょっとだけ、





…教えてもらおうかな。


 * * *


そうごにっきはだいぶ前に書いたからおかしな感じがする…。
これ、まだ続くのか、な?
前の記事へ 次の記事へ