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寄り道しませんか?(立海R陣)




「あれ?仁王先輩に丸井先輩。何してンすか?」

英語の補習を終わらせて階段を下っていると、目立つ頭をした2人組が昇降口の所で何やら話していた。

「赤也か。珍しいの、部活の無い日にこんな時間まで残っとるなんて」

ニヤニヤと笑いながら仁王先輩が言う。
この顔、絶対理由知ってて聞いてるなチクショウ。

「補習ッスよ、英語の。小テスト悪かったんで」

イライラを隠さずにそう言うと、2人は爆笑しやがった。
何この先輩ら凄くウザい。

「またかよ!お前常に英語補習じゃん!」
「おんしも懲りんヤツじゃのう」
「お、俺だって引っ掛かりたくて引っ掛かってるワケじゃないッスよ!」

ムキになって言い返せば、更に笑われた。
この先輩らには後輩を労る気持ちとか無いのか。

「だいたい、英語とか日本出なきゃ使わなくたって良いじゃないッスか!」
「良いわけあるか、たわけっ!」

もうヤケクソになってそんな極論を言ったら、聞き慣れた声と共に、頭上に手刀が落ちてきた。

「あだっ!」
「うわ、痛そ」

俺はあまりの痛さに涙目になりながら、手刀と声の主を睨み上げた。

「何するんスか副部長!」
「お前こそ何をバカげた事を言ってるんだ!」

そもそも学生というものは学業が本分であって…と副部長の説教が始まる。
長いんだよなぁ、副部長の話…

「3人とも何を話してらしたのですか?」

副部長の後ろから、ひょこりと柳生先輩が顔を出した。
真田副部長と柳生先輩が一緒ってことは、風紀委員会があったのか。

「聞いているのか赤也!」
「はいっ!」

まったく聞いていなかったのがバレて怒鳴られた。
仁王先輩と丸井先輩はニヤニヤと意地悪そうな笑みを、柳生先輩は気の毒そうに苦笑を浮かべていた。
俺の味方は今アンタだけッスよ、柳生先輩…

「あれ?何やってんだお前ら」

あ、ジャッカル先輩。

「よォ、ジャッカル。何してんの?お前」
「何って…普通に帰るとこだけどよ…。お前らこそ、こんなとこで何してんだよ」
「あ、そうッスよ!先輩達何話してたんスか?」

やっと本題に戻る。
仁王先輩と丸井先輩が少し渋い顔で、ちらりと副部長を見る。
何か聞かれてマズいことでもあんのか?

「や、大した事じゃないんやけどの、」
「駄菓子屋とケーキバイキング、どっちに行くか決まらなくってよぅ…」
「寄り道などとは、たるんどる!」

と、副部長の雷が落ちた。
「だから言いたくなかったんじゃ…」と仁王先輩がぼやく。
なるほど、だから渋ってたのか。

「第一、寄り道は校則でも禁止されて…」
「良いじゃないか真田」
「部長!」

また副部長の長い説教が始まりそうになったその時、後ろから救世主…もとい、幸村部長が声をかけてきた。

「ダメかい?」
「…う」
「弦一郎が折れる確率、100%だな」
「柳先輩も!」

こんにちはー、と挨拶すると、「英語の補習お疲れ様」と言われた。
…何でそれ知ってるンすか先輩。

「…仕方ない。まぁ、たまには、な」

あ、副部長が折れた。
副部長、部長には弱いよなぁ。

「で、どっちに行くんだい?」
「幸村はどっちに行きたいんじゃ?」

仁王先輩に問われ、部長はうーん…と考え込む。
そして、満面の笑みで言った。

「どっちも、かな!」







寄り道しませんか?
(部活が無くたって、自然に集まるのです)
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一緒にいたいだけですよ、(光謙)

部活後、まだ真っ白な部誌を前にして、俺はうんうん唸っていた。
今日は白石も小石川も用事があるとか何とかで、先に帰ってしまった。
それで俺は白石に部誌を頼まれた…もとい、押し付けられた。クラスメイトのよしみとか言って。
ぶっちゃけ、何書けばいいのか分からん。
前のページを見てみると、白石の几帳面な文字で練習内容やら反省やらが事細かに書いてある。
これを俺に求めるのか、無理やぞこんなん。

「謙也さん遅いっすわ」
「うっさいわ!」

目の前に座っている財前が早くしろと急き立てる。
その割に手伝う気は無いらしく、先ほどからずっと携帯を弄っている。
そんなに早く帰りたいんだったら少しくらい手伝え。

「何書けばええんや…」
「…とりあえず今日の練習内容書いとけばええんとちゃいます?」

しびれを切らしたのか、至極どうでも良さそうに財前は言った。
ホンマにこいつは…
だがここで文句を言ったところでコイツに口じゃ勝てないのは知っているから、黙って今日の練習内容をノートに書き込む。



「…とりあえずこれだけ書いとけばええか」
「終わったんならはよ帰りますよ」

部誌をぱたんと閉じると、財前も携帯をぱちんと閉じた。
すでに帰る準備万端な財前を見て、慌てて俺も帰る支度をする。
部室を出ると、もう辺りはもう真暗だった。

「うわー、すっかり暗くなってもうたな」
「謙也さんが遅いからですよ」

俺腹減りました、なんて遠回しに奢れと催促してきた。
もっと先輩を敬えや!

「ちゅーか財前、お前鍵当番ちゃうのに何でこんな時間まで残っとったんや?先帰っといて良かったんに」
「は?」

ふと気になって訊いてみると、怪訝な顔をされた。
何でやねん。

「ホンマ、謙也さんアホっすね」
「何やと!」
「そんなん、決まってるやないですか」

財前はさも当たり前のように、言った。





一緒にいたいだけですよ、
(他に理由がありますか)
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そんな彼女達の日常(にょた四天)




「せや、千歳」
「ん?どぎゃんしたとね?白石」

本日はあいにくの雨。
だが部活日であるため一応皆部室へと集まり、思い思いに過ごしている。
そんな中、ふと思い出したように白石が口を開いた。

「今日はブラ何色なん?」

部室の空気が凍る。
え、今こいつなんつった?

「?えーっと…黒たい!」

そんな空気を全く読む事なく、千歳はシャツの中を覗き込むと、にこにこと笑顔で応えた。

「ちょお待て」
「なんや?謙奈」
「なんや?やないわアホ!『次の授業何やっけ?』みたいなノリで何てこと聞いとんねん!千歳も確認せんでええわ!」

凍り付いた空気からいち早く復活した謙奈が、すかさず突っ込む。

「部長…キモいっすわ……」
「千歳さん、こっち来ときぃ」
「小春の言うとおりや。はよその変態部長から離れな、何されるか分からんで」

財前は心底嫌そうな目で白石を見、小春とユウは千歳を自分達の背中に隠した。

「ひっどいわぁ。気になるもんは仕方ないやろ?」

が、白石は特に気にした風もなく、あっけらかんとしてそうのたまった。

「それに女子同士なんやし、なんもやましい事なんてあらへんやん」
「お前は100%やましい気持ちで聞いとるやろ」
「えぇやん別に」
「良くないわ!」

謙奈が白石に噛み付くように言う。
が、やはり白石はどこ吹く風。

「あ、せや。謙奈は何色なん?ブラ」
「あほかぁ!」

白石の問い掛けに、謙奈は顔を真っ赤にして叫ぶ。
こいつ、ただの痴女や!

「財前、謙奈のブラ何色か知っとるか?」
「ウチが知るわけ無いやないですか」
「教えてくれたらぜんざい奢ったるで」
「黄色に白い星柄です」
「おおきにー」
「何でお前がそんな事知っとるんや財前んんんん!」
「謙奈さん、煩いっすわ」

ゆでダコのように顔を真っ赤にさせて謙奈が叫ぶ。
財前は眉をひそめて至極迷惑そうな顔をした。
いやいや、おかしいやろ。

「千歳はん、」
「何ね、師範」
「いくら女子同士でも、下着の色は簡単に教えたらあかん」
「?分かったばい」

本当に理解しているのか、千歳は相変わらずにこにこと応えた。

「千歳ー、パンツも黒か?」
「白石、殴ってもよか?」






そんな彼女達日常
(いつだって笑いが絶えません)
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春の日(オリジナル)

4月、俺は高校二年生になった。

単位も出席日数も、何とかギリギリ取った。
俺は“不良”とカテゴライズされるタイプの生徒ではないけれど、きっと先生から見たら同じようなものだったのかもしれないなぁ、なんて思う。
それくらい俺は出席率が低かったし、度々その事について呼び出されたりもした。
まぁ、行かなかったけど。

そんな俺だが、さすがに留年は嫌なので一応進級出来るくらいには出席したし、テストも頑張った。
頑張ったなんて言っても、学校サボりがちな俺の成績なんてたかが知れたもので、全教科赤点をギリギリまぬがれる点だった(だからだろうか、Mr.ギリなんていうワケ分からんあだ名が付いていた)。

そもそも、俺は“学校”というものがあまり好きではない。
学校が嫌いと言うよりは、規制されるのが嫌いな性分なのだ。

『自由気儘』

これは俺の一番好きな言葉であり、また座右の銘だ。
自由に気儘に、好きなように気が向くままにやりたい事をやる。なんて素晴らしいんだろうか。

そんなわけで、俺は只今サボりの真っ最中。
校舎裏の日向で、うとうとと微睡んでいる(学校に来ただけでも誉めてほしい)。

体育館の方から聞こえてくる明るい調子のメロディに、今日は入学式だったなぁなどと今更思う。
そう言えば、去年も入学式には出なかった。
あの日は確か、桜が綺麗な土手で昼寝してたんだったか。
入学式に向かう途中で見つけて、そのまま寝てしまった。
場所は違えど今年も昼寝とは、俺はどれだけ昼寝が好きなんだろうか、なんて苦笑する。
まぁ、なんだ。進級できて良かった。

…あぁ、そう言えば俺の机はどうしようか。
いつだったか友人(俺の数少ない友人。本当に片手で数えるほどしかいないのが切ない)がふざけて“Mr.ギリ”とか書きやがった。しかも油性ペンで。
俺も消す気がなく…というかぶっちゃけ消すのが面倒で、そのままにしてある。
だから、今もはっきりと残っている。
あれはあのままにしておいて良いのか、それともこっそりと現俺の机と交換すべきか…
…面倒極まりないが、取り換えに行くか。
新入生にあの机を使わせるのも、わざわざ消させるのも可哀想な気がする。

1つ長いため息を吐くと、俺は重い腰を上げた(ついうっかり「よっこいしょ」なんて言ってしまった。俺はおっさんか)。
ぐ、と背伸びをしたら、ふと横目に鮮やかな黄色が見えた。

「あ、たんぽぽ」

春だな、なんて思いながら俺はその場を後にした。





春の
(問題児と日向とたんぽぽと)
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赤い糸(オリジナル)

1人きりの部屋の中、俺は携帯の液晶を眺めていた。
夜にもかかわらず電気を点けてないこの部屋で唯一の光源である携帯は、頼りなげな光を発している。

「(遅い…)」

彼は9時に電話をくれるとメールで言っていたのに、もう約束の時間を30分も過ぎていた。
俺の胸の中には、苛立ちと不安が段々と滞積されていく。

〜♪

と、握り締めていた携帯が着信を知らせる。
液晶画面には、愛しい恋人の名前。

「もしもし、」
『よぉ、幸矢』
「遅い」
『すまんすまん!先輩たちに無理矢理飲み会誘われてもうてん』
「…ふぅん」
『元気にしとったか?』
「…おん、元気やで。そっちこそどうや?ちゃんと飯食っとるか?」
『おぉ、メチャメチャ元気やで!飯もちゃんと食うとる』
「そうか、それならええ」
『つーか、お前は俺のオカンかっちゅうねん(笑)』
「恋人やもん、心配なんよ」

俺の恋人である須永晴真が地元である大阪を離れ東京へ行ったのは、卒業式のすぐ後だった。
理由は、進学。
在学中から「大学は絶対東京へ行くんや」などとのたまっていた晴真は、見事に東京の有名大学に合格した。

合格の知らせを聞いたとき、俺はまるで自分の事のように晴真を祝った。
けれど反面、不安でもあった。
そこまで遠い距離でもないが、学生という身分では、そう頻繁に通える距離でもない。
今までずっと傍にいた存在が遠くへ行ってしまう不安、距離と一緒に自分からも遠ざかって行ってしまうのではないかという不安。
それが、何よりも大きかった。

「はる…東京はどうや?大学とか、楽しい?」
『おん、楽しいで!先輩らもええ人ばっかや』
「そっか…」
『…?なんや元気あらへんなぁ。どうかしたん?』

晴真の問いかけに、肩が跳ねる。
言ってしまおうか?
晴真に会えなくて寂しい、と。
晴真が俺から離れていくんじゃないかと、不安なんだと。

携帯を持つ手に力が入る。
キシ、と携帯が小さく悲鳴を上げた。

ダメだ。
こんな事、言っちゃいけない。
ワガママは、言えない。


「…なんでも、あらへんよ」

精一杯明るく言ったつもりだが、少し声がかすれてしまった。

『………そうか?』
「おん、」

気まずい沈黙。
ほんの数秒であるはずのそれが、俺には数分に感じた。

『なぁ、幸矢』

ふと、晴真が真面目な声色で俺を呼ぶ。
普段なかなか聞かないその声に、不覚にもドキリとした。

「なんや?」
『寂しい思いさせて、堪忍な』
「え、」

一瞬、晴真の言った意味が分からなかった。
少し遅れて、俺は必死に言葉を紡ぐ。

「…な、何言うてん!俺は全然平気やで?なんや楽しそうにしてるみたいやし、俺としては一安心やわ!」
『幸矢、』
「せ、せや!東京にはかわええ娘がぎょうさんおるんやろ?浮気したらあかんで!」
『幸矢、強がらんでもええ』
「そんな、こと……」

あらへん、と続くはずだった言葉は、電話越しに伝わる晴真の雰囲気に飲み込まれてしまった。

『本当は寂しいんやろ?』

その言葉に、今まで我慢していたものが溢れだす。
ぼろぼろと涙をこぼし、唇からは嗚咽が漏れる。

「…当たり前やボケ!」
『…すまん、』
「すまんで済んだら警察はいらんわアホ!」
『…うん』
「俺だけ地元に残されて…どんだけ俺が不安やったか分かるか!」
『ごめん、』

堰を切ったように、晴真への文句が口をつく。
もう自分でも何を言ってるか分からないくらい怒鳴って、泣いて。

それでも、晴真はただ静かにそれを聞いてくれた。

「………」
『落ち着いたか?』
「…おん……なんか、すまん」
『えぇって。幸矢を寂しくさせた俺が悪いんやし』
「…ん、」
『…なぁ、幸矢。赤い糸ってあるやろ?』
「は?」

今までの鬱憤やらを吐き出し尽くしたら心なしかスッキリとして落ち着きを取り戻した俺に、晴真はワケの分からない事を言ってきた。

『ほら、小指と小指を繋ぐ運命の赤い糸』
「…え、今むっちゃシリアスモードやったんに、何でいきなりそんな話?」
『最後まで聞けや。あんな、俺らはきっとその赤い糸で繋がっとると思うんや』
「はぁ…」

冗談かとも思ったが、そう言った晴真の声はいたって真面目だった。
何やねん、お前。ロマンチスト気取りか。

「で?それがどうかしたんか?」
『せやから、寂しがらんでもええで』
「あっそ」
『冷たいっ!そんな態度とられたら俺泣いてまうで?』
「アホか」

さっきまでのシリアスな雰囲気はどこへやら。
俺らはケタケタと笑いあった。


『ほんなら、俺明日も早いし、もう寝るわ』

時計を見てみればもう日付は変わっていた。

「おん、おやすみ」
『おやすみ』

ぴ、と電源ボタンを押す。
もう不安とかそんなのは無くて、ほっこりとした安心感みたいなものが俺の胸の中を占めていた。

「赤い糸、かぁ…」

自分の小指をちらりと見る。
まぁ当たり前だがそこには何もなくて。
でも、きっと繋がっている。

「運命の、赤い糸」

もう一度そう呟いてみると何だか嬉しくなった。

「アホやんなぁ、アイツ」


Fin.
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