自分が情けなくて、悔しくて、悲しくて。 気付けばルツの体を寄せ、涙が出そうになるのを堪えながら、ただ黙って抱きしめていた。
「ディーン…?」
ルツは若干戸惑いながらも俺の背に手を延ばす。
触れた手のひらがとても暖かい。少し混乱していた頭を落ち着かせ、抱きしめていた体を離した。
「悪いな、いきなり。」
「そんな…僕で良かったらいつでも触って下さい。」
少し頬を朱に染め、ルツは嬉しそうにした。ダンピールの俺をルツは気持ち悪がらない。普通の人間や吸血鬼なら罵倒し、侮蔑の言葉を吐くと言うのにルツは吸血鬼であるにも関わらず、好きと言ってくれる。恋人でいてくれる。
俺が長年欲しかった暖かいぬくもりをくれる、愛しい存在。
どんなに悲しい事があっても受け止めてくれる、優しいルツ。
俺は弱い奴だからまたすがってしまうだろう。
そしてその度にルツは抵抗する事なく受け入れてくれる。
「ありがとう、ルツ。」
感謝と愛情を込め、抱きしめながら柔らかいルツの髪をすく。
面倒かけちまうけどこれからも宜しくな、ルツ。
精神的に弱る橙の話。きっかけとしてはダンピールが殺されてやるせなさを感じたんです。凹んでた所を黒が来たので思わずぎゅっ。みたいな。