前サイトの拍手文です。
ちびっこ橙黒
「ねーねーディーン?」
「近いよ、ルツ。」
いつものように村の近くの森の岩場で遊んでいた時。
いきなりルツがずいっとディーンの顔に近づき、きょとんと首をかしげてきた。
「お母さんから聞いたんだけど「きす」すると幸せな気持ちになれるってほんと!?」
「んーと…」
いきなり何を言い出すかと思えば…とディーンは面食らう。
「まあ人それぞれだと思うけどおれは好きな人とするキスは幸せなんじゃないかなって思うけど。」
「そっか…じゃあディーンとするきすは幸せな気持ちになれるね!」
そう天使のような満面の笑顔で言われ、ドキッと心臓が驚くのを感じるディーン。
(ルツって絶対へんなオッサンや男に狙われるタイプだよな…)
ちょっと心配しながらも逆にルツをドキドキさせてやろうとディーンは唇を近付け、そのままルツのものに押し当てた。
ちゅっ、と可愛い音を響かせ、それが離される。
「ディ、ディーン…!?いま、くち…!」
わたわたするルツを横目で見ながらディーンは、
「ごちそうさま、ルツ。」
してやったり、と言わんばかりの表情で意地悪く笑う。
確かに好きな人とのキスはあったかい、幸せな気持ちになるんだと思えた。
いぬ橙×飼い主黒
「ルツ、おやつ食べてえ。」
3時を過ぎた頃、今は人間の姿を取った(犬耳と尻尾を生やしているが)飼い犬のディーンが耳をぴょこぴょこ揺らしながら主人のルツに擦り寄る。
「ごめんねディーン…昨日食べた分で最後だったみたいです。」
さっきスーパーに行ったとき買っておけば良かった、と呟きながらいつもならお菓子が入っている筈の戸棚を閉める。
「そっか…」
しゅん、と耳をへにゃんとさせながら肩を下ろすディーンの頭を撫でながらルツが「明日買ってきてあげますからね」と宥めた。
「あ!じゃあ代わりはルツが良いよな!」
急に意味不明な言葉を発したかと思うとルツの顎に指をかけてそのまま自分の唇をルツのものに当てる。
「ん、ん、あっ…」
キスと言うよりただ唇を舐める行為。
(ディーン…もう…)
無理。恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだ。
「やっぱルツの口は甘いな!」
そうお日様みたいな笑顔で言われてしまえば何も言い返す事ができず、ただ耳を赤くさせ、うつ向く事しかできなかった。
余談ですが人間状態のディーンはルツより一個年上。18です(笑)
教師橙×生徒黒
「アルディーン先生、失礼します。」
ガラガラと今は誰もいない職員室のドアをルツが開ける。
その手にはディーンに頼まれた資料が乗せられていた。
「悪いな、シュヴァルツ。重いもん持たせちまって。」
そう言うと後ろからルツを抱きしめる。
資料は既に近くの机に置かれていた。
「アルディーン、せんせ…ここは…」
「もう他の教師達は帰っちまったし、生徒も誰一人残ってるやつはいない…この学校には俺達だけだ。」
そう耳元で囁かれれば、ルツの心は簡単に堕ちていった。
「先生…僕…」
「先生じゃなくてディーンだろ?」
そう微笑めばルツも「はい…ディーン…」と微笑み返し、そっと目を瞑る。
唇にディーンのものが降るまでそう時間はかからなかった。
ダンピール橙×吸血鬼黒
そう言うと愛しげにルツの長い黒髪を撫でる。
「ありがとう…ルツ。」
感謝の言葉を述べ、未だ瞳を閉じているルツの額にキスを落とし、そのまま唇に持っていく。
長い長いキスを終えた後、華奢な体を抱き締めて囁いた。
「ルツ…愛してるぜ。」
その言葉が何より嬉しくてルツも
「僕もディーンの事…世界で一番愛してます。」と素直な気持ちをディーンにぶつけた。
結婚って楽しい?
「結婚」ってなんだろう。嬉しいのかな?楽しいの?
ある日、シュヴァルツはふと疑問に思い、母にそう質問した事があった。それに対して母はにっこりしながら
「そうねぇ…たまに「苦しい」って時もあるけど基本的にはルツちゃんの言う通りとっても楽しいものよ。」
と、嬉しそうにそう言いながら優しくシュヴァルツの頭を撫でていった。そして「結婚」は一番大好きな人とするのが一番なのよ、とも教えてくれた。
「…って訳なんだよ!ディーン!」
「よくわかんねえよ、ルツ。」
結婚について嬉々と話すシュヴァルツを呆れた表情で見ながらアルディーンは足をぷらぷら動かした。
「もー!何でわかんないの!?」
ぶう、とふくれるシュヴァルツに「だって結婚って言うのは男と女でするもんだぞ」と教える。
「えー…」
とても残念そうにシュヴァルツががくっと肩を落とす。
(別にそこまでがっかりしなくても…)
じっとシュヴァルツを見ていたアルディーンはそうだ、とある考えを思いつき、近くにあった小さな百合の花で何か作り始めた。
「ほらルツ!」
「え…何?」
「いつまでもしょげてんなよ。これやるからさ。」
アルディーンが差し出したのは可愛らしい、百合の花で作られた指輪だった。
「うわあ…!」
「結婚なんてできないけどさ…でも、俺ずっとルツの事好きでいてやるから…」
ぽ、とアルディーンの頬が赤く染まる。
「ディーン…ありがとう…!」
それを見て自分の胸に暖かいものが満たすのをシュヴァルツは感じた。
悪魔×天使。シリアス予定です。
「おーい、ルツ、どこだー、ルツ!」
黒い衣を纏った青年が森の中を進む。
彼が呼ぶのは共に旅をする天使の少年。
本来悪魔と天使は相容れぬ存在だが、この二人はそんな理も無視し、想いを通わせ、ある目的の為に旅をしていた。
(もしかしたらあそこか…?)
この道をまっすぐ行った先に確か大きな湖があった。
(天使は綺麗なものに惹かれるというからあそこに行けば…)
そう思うや否や、アルディーンは黒い翼を広げ、湖へと飛んで行った。
(いた。)
見下ろすとそこには小鳥と戯れながら湖の近くの草むらに腰を下ろす天使―――シュヴァルツがいた。
「ルツ!」
アルディーンが声を掛けると同時に悪魔の出現に驚いた小鳥がバサバサと羽音を立てて逃げ出す。
「ディーン…」
「馬鹿!勝手にいなくなって…心配したんだぞ!」
「ごめんなさい…」
そう叱った後、シュヴァルツの体を包み込むようにして抱きしめる。
悪魔が自分にしてくれるのと同じように天使も背にそっと腕を回して抱きしめ返す。
そうしているとすごく安心できた。
「黙っていなくなってごめんなさい、ディーン…」
「もういい。…どうせ綺麗な気配がしたからここに来た、って所なんだろ?」
こく、と頷くシュヴァルツにアルディーンは頭を撫でて「そろそろ行こうか」と促す。
シュヴァルツにかけられた呪いを解くために。
二人は手を繋いで、歩き出した。