昨日の記事へのコメント、拍手コメントありがとうございます。
ひとつひとつ、泣きながら 勇気付けられながら読みました。

本当に本当にありがとうございます。

拍手レスは後日絶対にさせていただきます。




さて今日はゆうちゃんと会いました。
今日は、そのご報告です!




バイト帰り、いつも通りふたりで塾を出る。


「雨降ってる?」
「あー、降ってるかも」


そんな会話をして、ゆうちゃんと歩き出した。


「あれ、ゆうちゃん傘は?」
「僕傘もってないの...」


そんな風にしょんぼりするゆうちゃんと、相合傘で歩く。
時々触れる腕が嬉しい。




雨の街もきれいだ。
延々と続く国道のオレンジの明かりが 雨でけぶって見える。
ゆうちゃんの話を、聞くとはなしに聞いていた。




「なんかさ、傘が頭にひっかかるよー」


そうゆうちゃんが言った。
身長の低い私が傘を持つと どうしてもそうなる。
わざとひっかけて ゆうちゃんに もう、まきちゃん!って笑われた。
ゆうちゃんが傘を持ってくれるらしい。



「今日まきちゃん来てくれるかと思ったのに来てくれなかったね」



ふざけたみたいな笑った目で ゆうちゃんが私を睨んだ。


昨日のやりとりで ゆうちゃんは私が行くと思ってたみたい。
私としてはあれから音沙汰なかったし 電話をかけても留守番電話だったから 忙しいんだろうと思って今日を過ごしていた。


こういうとき、いつもお互い少し足りないんだよなあと思いながら それでもなんだか幸せな気持ちで曖昧に頷いた。



それからは、塾の話やゆうちゃんの実家の話。



「おじいちゃんの昔の写真見たらね、若いときすごいかっこよかったんだよ!」



そう言ってゆうちゃんが微笑んだ。
そうなんだ、いいじゃんって笑うと 写真見る?おじいちゃんの写真、カメラで撮って来たんだよ!ってゆうちゃんが幾分興奮気味に言った。



デジカメを取り出すゆうちゃんが 傘持ってて!って渡してくれた傘、柄を持って その温かさに なんともいえない気持ちになった。
一緒にいるんだなぁって、実感して。


おじいちゃん、確かにかっこいい。
学校の先生だったみたい!厳しい先生だったらしくて〜って話してくれた通り、なんだか真面目そうな顔をして、畏まって写っていた。
たくさんたくさんおじいちゃんのこと、お父さんのことを話してくれた。


それを聞きながら思った。
きっと、大丈夫。彼も、私も。



「ねえ、お父さんもかっこいいね。
イケメン遺伝子だね、ゆうちゃんも、」

「ぼくは受け継いでないみたい
イケメンじゃないもん!」

「そんなことないよ、ほら、似てる」

「似ーてーなーいー
僕だけイケメンじゃないー」



かっこいいとかイケメンとか言うたびにゆうちゃんがいやがるのがおかしくって、何度も繰り返した。
同じ傘の中、ゆうちゃんが笑って否定する。



信号待ちで、なかなか信号が変わらなくて見てみると 歩行者用ボタンを押すのを忘れてた。
雨のなか 「押してください」のボタンが赤く鈍く光っている。


忘れてた って笑ってボタンを押して、 それでねってまた笑って話の続きをしようと振り返ると ゆうちゃんがすぐそばにいて、その姿にドキってした。


相合傘してるから当たり前なんだけど、あまりにすぐそばで、それに すごく優しく笑ってたから。



ふたりで坂を上ると もうわたしの家。


鍵を探すわたしに、ゆうちゃんが傘をさしかけ続けてくれていた。


「まきちゃん、ぼくにも構ってね」

不意にそんな事言うから 帰りたくなくなる。
もっともっと会いたくなる。
撫でて抱きしめて可愛がって、ほんの少しいじめたくなる。



「またあしたね」


私がそう言うと、きらきらした目でゆうちゃんがこちらを覗き込んだ。


「あした?あした会ってくれるの?」

「塾いくでしょ?
わたしもあした出勤なんだ」


いじわるしてそんなふうに言うと、あからさまにすねた顔。
下唇を突き出して そっぽを向く。

そんな顔をされると、到底勝てっこない。


「明日、行ってやるよ」


それでも意地を張ってしまって こんな言葉しか出てこない。
予想に反して、ゆうちゃんはまだ すねた顔。
目だけ笑って こちらを睨む。
相合傘の至近距離で、
わたしの だいすきな表情。


「今日みたいに、来るって言って来てくれないつもりでしょ。ぼく、知ってるんだから!」


思わず抱きしめたくなりながら、


「あした、あさ、メールする」


そう言いながら家の鍵をあけると、「ありがとう!あしたね!」って ゆうちゃんが笑顔で言ってくれた。



相合傘っていいな。
帰って 身体の半分がいつもより濡れてることに気づいても、それすら温かく思える。
でもそれも ほんの少しだけ。
ほんの少ししか濡れてない。
ゆうちゃん きっとかなりの部分を私にさしかけてくれたんだろうな。
風邪、ひいてませんように!