薔薇の花が咲き乱れる季節に
棘で指を切ったことがあった
其の薔薇はとても気高く見えたけれど
今は何処の庭で咲き誇って居るのだろう

わたしは幾度となく記憶の扉を戻すけれど
思い出せない、思い出したくない蓋を
未だに持て余している
胃の中が荒れているせいか
口から吐き出した赤は何処にも行き場がなく
排水口に垂れ流れていくばかり

そばで、声が聞こえた
わたしは何処にも行けないと
泣き縋ることも出来なかった。