勢いだけの男、ジャックこと柔一はある日、クラスメイトのミチオとショーケンに誘われドラムをやることに。秀才アッホをベースに加え、4人はビートルズ完全コピーバンド『デマサプ』を結成する。バンドとは、踏み込んで踏みこんでぶつかり合うもの―。周りの人間に助けられながら、少年たちは学園祭を目指し突っ走った。心揺さぶる青春音楽小説。
ビートルズを好きな方には特に面白い小説なのでは、と思います。内容がビートルズの完コピバンドの話だけに曲やメンバーたちの話もたくさん出てきました。
もちろん、ビートルズに全く興味のない方にも、普通の青春小説として楽しめます。というのも私も、ビートルズにはてんで詳しくない人間なので。英文科に所属しておりますが、洋楽にはかなり疎いです。周りの子にビートルズ好きな子もたくさんいて、お勧めされるのですが、いまいちはまりきれないというか・・・。ビートルズよりも
Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)のほうがまだよく聞きます。
ビートルズは曲数が多すぎてどれから聞いてよいかわからないですし、こんなこと言うとファンの方に怒られるかもしれませんが、そこまで人気の理由が分からないのですよね。ふつうにHey JudeやLet It Beなどは良い曲だと思うし好きなんですけれど。
しかしこの本を読んでいると少なからずビートルズに興味がわいてきました。メジャーな曲だけではなく、マイナーな曲もいっぱい出てきたのが良いですね。本を読みながら、イメージするために出てきたタイトルの曲を聞いてみたのですが、ジャックたちの言う通りいい曲だなーっていうのもあれば、これは私にはあまりあわないな、とさまざまで楽しかったです。なんだか前よりもビートルズが好きになってきました。作中で称賛されてたタイトルで特に私が気に入ったのはpaperback writerという歌です。ノリがよく聞いてて気分がうきうきしてきます。聞いたことのない方はぜひ聞いてみてください。
さて、ビートルズ以外で作品のことに触れてみます。バンドメンバーのうちアッホ(ベース)とジャック(ドラム)は全くの素人なのですが、半年ほどで、ビートルズを完全コピーできたり、楽器が都合よく手に入ったりと物語はなかなかご都合主義でした。ですのでリアリティを求める人にはちょっと向いてない作品かもしれませんね。まぁ小説があまり現実的過ぎても読んでる側としたら嫌になりますし、これくらい夢のある物語でもいいのかもしれませんが。
それと私は物語が進む中で、学園祭で大失敗するという顛末になるのではないか、ということを恐れていましたが、そういうのはなかったので、この作品に対する好感度が上がりました。(あまりそういう展開は好きではないので。)
あと、序盤に出てきた水口くん。後からまた出てくるかなぁ、と思っていたら、一瞬で出番がなくなり少し可哀想でした。最後にもう一回出てきてもよかったのでは・・・作者はもしかしたら水口君の存在を忘れちゃったのかも(笑)
青春小説としては良い出来だと思います。私は部活もやめてばっかりで大学受験も挫折し、完全燃焼ってものをしたことがないのですが、目標に向かって突っ走って完全燃焼できたらとても気持ちいいんだろうなぁ、と思わせられるような物語でした。
無気力な子って最近多いですし、そういう生き方は傷つかないで楽ですが、高校生や中学生のうちは傷つくことを恐れず、目標をつくってそれに向かって立ち向かってほしいですね。
あとこれは感想とは関係ない話ですが。
洋楽があまり聞きませんが、ボブ・ディランは好きです。なぜかと言いますと、伊坂幸太郎さんの作品にとてもよくボブ・ディランという名前が登場するのです。それでボブ・ディランに興味を持ち、聞くようになりました。特に『アヒルと鴨のコインロッカー』の中で登場した 『B
owin' In the Wind (風に吹かれて)』は心にしみる良い曲だなぁと思います。というかそれ以外の曲はあまり良さが分からないのですが(笑)何かの小説の中ではディランは「酔っ払いが歌っているよう」だと評されていることもありました。それでも、伊坂さんが好きなのかなぁと思うとなんとなく聞いてしまいます。前にも書きましたが、私は小説世界から現実への引用、つまり小説の登場人物がしていることを真似することが好きなのです。
なんだか今日はいつも以上にまとまりのない文章になってしまった気がします。
日付はまたいでしまいましたが、この『抱きしめたい』をもって4月の読書は締めたいと思います。またまとめて記事を書く予定ですが、前回の『恋文の技術』の後にもう一冊読めて良かったです。
明日は久々に何にも予定がなく1日フリー。前々から気になっているブックカフェへ行けたらいいな。
最後になりましたが新規購読の方、ありがとうございます。読み続けてもらえるような文章を書けるよう頑張ります。
長々と失礼しました。おやすみなさい。