スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

そんなこと、製菓メーカーの策略だってことくらい分かってますよ。

2月14日。
勝ち組と負け組を分ける運命の祭典、バレンタインデー。


「つか、基本的にあたしの周り、リア充多すぎだよね。」


レイラは指を折りながらそう言った。

レイラとしては別にお菓子をばらまくこと自体は何も問題ない。
しかし、その渡した相手に本命がいよもものなら、その本命の女の子にも申し訳ない気がする上に、大して男子にも喜んでももらえないだろう。


そんな彼女の考えの結論は

『1つももらえない哀れな仔羊の救済』だ。


「知り合いは男の方が多いくらいなんだけどなー。」

そういいながら、彼女は“哀れな仔羊”の下へと向かうのだった。


「お、レイラじゃねーか。」

「あ、恋愛フラグの全く立たないクロウだ。」

「悪かったな。」

エントリーナンバー1
鉄砲玉のクロウ・ホーガン

「チョコレートバラまいてんのか?だったらオレにも分けてくれよ。」

なんてなー、とか気恥ずかしそうな様子で言うクロウだが。

「まさか。クロウの分なんてないよ。」

バッサリとレイラは切り捨てる。

「どーせ、お兄ちゃんありがとー、って子供達からもらってるんでしょ?だからあたしのなんていらないでしょー。」

「まぁ、確かにガキ共からもらってるけど…。」

「レイラちゃんは哀れな仔羊の前にしか光臨しない救いの女神だから。お菓子はまた別の機会にね。」

「…そうか。じゃあ仕方ねーよな。」


その今度に期待しとくぜ、そう言ったクロウとレイラは目的地へと向かう。
が、しかしまた別の知り合いが。


「ん、レイラか。」

「誰かと思えば全国の乙女に大人気のジャック・アトラスじゃないか。」


エントリーナンバー2
孤高の元キング、ジャック・アトラス


「貴様もバレンタインデーにかこつけてチョコレートを配っているわけか。」

受け取ってやる、と言うジャックにクロウよりも冷たい態度で切り捨てる。


「なんで追っかけキングでもないあたしがジャックに。つーか、3個は余裕で確定のお前にあたしの義理チョコなんて必要ない。」

「………。」

確かにその通りなのだが、あまりの予定にしていなかった態度に驚いて声の出ないジャックを置いてレイラは進むのだった。



「あー、なんでいないかなー。」

「誰を探してるんだ?」


エントリーナンバー3
言うまでもないリア充、不動遊星


「…一番必要ないのキタ。」

「?!」

あまりのレイラの暴言に固まる遊星。


「ま、あたしのことなんていいからさ、
早くアキちゃんとこ行きなさい。つか行かなかったらコロス。」

「れ、レイラ?」

「あたしにかまうなって言ってるでしょーが。」


半分ムシするように立ち去ろうとして、途中て振り返る。

「天然過ぎて気付いてないとマズいから教えとく。今日は恋人達の祭典バレンタインデーだからね!」

「な、べ、別に、オレ達はそんなっ!」

「はよいけ、この人間タラシ。」


そんな捨て台詞を残して向かう。
今年もおそらくチョコレートなどとは無縁の幼なじみの下へ。



「きょーすけやーい。やっと見つけたよ。」

「お、レイラか。今年も期待してたかいありそうだな!」

毎年、レイラから鬼柳への義理チョコ(お情けの方が正しいかもしれない)は恒例行事なのだが…。

「ちょっと待て。お前が今持ってるそれはなんだ。」

「これか? いやな、こないだまでいた街の子供達がー」


簡単に要約すればクロウと同じ、子供からのありがとうチョコだそうだ。


「……あっそ。」

「え? ちょ、それオレのじゃねーのかよ?!」

「…………………、かに。」

「今なんて?」

「お前なんかに、リア充なんかにやるチョコレートなんて持ってないって言ってんのっ!京介のクセに、京介のバカーっ!」


本日一番の暴言を残し、レイラは泣きながら走りさった。





「ーとまぁ、そんな事件が起こったわけだ。」

「なんだかんだ言ってもやさしいやつだからな、あいつ。」

そんな報告会をしているのは鬼柳とクロウ。

レイラの異常な態度を心配した元デュエルギャング、チームサティスファクションのメンバーは連絡し合ったわけでもないのに全員集合していた。

「貴様がそんなものを持っていたのが悪いのだろう。」

「ゆーせー、さり気なくジャックがオレのこといじめてくるんだけど。」

「ジャック、問題はそこじゃない。」

「そういう問題でもねーけどな。つーか、オレの話聞けって。」


いつものどこか緊張感のない状態になってきたのでクロウがしめ直す。


「問題なのはレイラが誰の分どんだけ作って待ってたか、ってとこだ。」

「クロウの話じゃ全くもらえてないやつにだけ渡す予定だったってことか?」

「それにしてはずいぶんと大きな荷物だったが…。」

「お前やクロウが玉砕する可能性も考えてたんじゃねーか?…ま、例年大抵オレはレイラの救済のみだけどな。」

ジャック抜きで行われる論議。
だが、興味なし、というよりはどうしていいかわからないといった風だ。


「ともかく、ここで考えて手も仕方ない。レイラに連絡入れて、会いにいこうぜ。」

「だが、電話に出るだろうか。」

「そこだよな、一番の問題。」

頭を抱えるクロウと遊星。
そこにまさかの爆弾が落ちる。

「だったら家直接行った方が早くないか?」

「「「!!?」」」

「…え?何、その反応?」

なんかおかしなこと言ったか?と聞き返す鬼柳。

「いや、なんでお前がレイラの家知ってんだよっ!」

「んー、なんかのとき夜遅いから、って家の前まで送ったことあったからだけど。」

「とにかく会いに行ってみよう。鬼柳の言うことが本当ならば今頃泣いているんだろう?」

「だな。」

そこでやっと今まで黙っていたジャックが口を開いた。

「ただ会いに、というわけにもいくまい。だがー」


レイラの機嫌を直すためにも、と提案された作戦はスムーズにレイラに会うためにも必要だろう。

こうして男子メンバーによって作戦は実行された。





「そう、だよね。あれから何年経ってるんだよ、って話だよ。」

レイラは鬼柳の想像通りに泣いていた。
そしてそれが結論だった。


チームが解散して4年あまり。
今までほとんど会わなかったということもある。人間関係が変わっていない方がおかしい、と。


「最終的に、今年も作りすぎちゃったわけだ。」

レイラだって昔は知り合いみんなに渡していたのだが、本命とのあまりの態度の差に空しい思いをしたこともある。
ここしばらくそんなことしていなかったのに張り切ったのはかつての仲間達に再会できたからだ。

そんなとき
ふとなった玄関ベル。

ドアの向こうから聞こえたのはその仲間達の声だった。
渋ってもよかったが、会いにきた、というのだからと仕方なく応対することにした。


「やっぱりな。レイラ、目真っ赤。」

「うるさい。構わないでよ。」

「なんでそんなに機嫌悪いんだよ。」

「ほっといて。」


鬼柳とクロウの問いに短く返し追い返そうとする。


「まぁ、そんなこと言わないで機嫌直してくれって、な?」

これやるから、と取り出したのはチョコレート。

「いわゆる逆チョコってやつ?甘いもの好きだろ?」

静かにコクンと頷くレイラ。

「今年はよこさねーとか、そういうのはなし。これでも毎年楽しみにしてるんだぜ?」

くしゃくしゃっとレイラの頭を撫でる。
普段なら嫌がるのだが、今日は怒らなかった。

甘い匂いのせいか、チョコレートのおかげか。



そして、そこで謎が1つ。
気になって仕方ないと切り込んだクロウ。

「で、レイラ。何、この甘い匂い。」

「…やけっぱちガトーショコラですが何か?。」

「余ってるのにさらに作ってんのかよ。」

「んじゃ、せっかくだしもらってこうぜ。」

「なんで男子4人も家あげないと、なの?!」


侵入禁止っ!と入口をふさぐレイラだが、鬼柳のに力ずくで抱き抱えられて退かされてしまう。


「勝手に入るのはさすがにマズくね?」

「別にいいよな?」

「…片付けてないからね。」



その後は昔のように盛り上がったのだとか。

たまには、チョコレート会社に踊らされてみるのも悪くない。





追記
あとがき
続きを読む
前の記事へ 次の記事へ