サテライトのとある廃ビル。
ここは彼女達、デュエルギャングのアジトであった。

「あーもー、あいつ次は絶対泣かす!」

そう叫んだ彼女の名前はレイラ・マリナス。
このチームのおてんばすぎる紅一点である。

泣かせたい相手、それはこのチームのリーダーで彼女の幼馴染の鬼柳京介。
まぁ、確かに彼の実力は一級品なのだから勝てないのは仕方ないと言えば仕方ない。

だがしかし、それで終わらないのが彼女、レイラである。
次は絶対勝つために、チームメイトのジャック・アトラスのもとに戦略のなんたるかを教わりに行くのだった。


「と、言うわけなんだけど。」

「まぁいいだろう。」

実は自分のところに一番にやってきたため実力を認められてるような気がしてご満悦なジャックなのだが、それは秘密である。

「別に京介メタってわけじゃなくて、単純に実力上げたいんだ。デッキが悪いのかな?」

「一口にデッキと言ってもいろいろあるからな。どんなものにしたいかはお前次第だ。」

「例えば?」

「立ち回り方で言うならば、ビート、バーン、ロックなど。エースの召喚方法の違いなどでシンクロ、儀式、融合、…カオスもそのうちか。」

「はーい、ジャック先生質問でーす!」

まるで学校の生徒のように手を挙げて質問するレイラ。
まぁ、そんなこと学校に通ったことないから全く知らずにやっているのだろうが。


「(先生って。) …何だ。」

レイラの乗りについていけず、若干困ったようにするジャックだったが、いつものことだと深く考えずにスルーすることにしたようだ。


「カオスって何?」

「墓地の光と闇属性のモンスターを除外することで召喚できるカオスモンスターを主軸としたデッキだ。」

「なるほど、ソーサラーとか使うやつね。」

「あぁ、だが他のカオスモンスターはほとんど禁止カード、ソーサラーですら準制限だ。カオスだけでやっていける実力はないな。」


ジャックすっごーい、とレイラからの感嘆の声。
キングを目指す彼としては当然のことだが、褒められて悪い気はしない。


「話勝手に戻すけど、あたしはブリュさまメインのデッキがいいな。」

「除去しながらのシンクロビートと言ったところか。だがそれだけというわけには行かん。」

「サポートっていうか、2番手とかでしょ?めんどくさいから適当にアドバンス召喚するよ。」

「だからお前は勝てんのだ。適当などでデッキがまわると思うな。」

「じゃあどうすればいいのさ?」


悪かったねバカでー、とレイラはむくれる。


「そこまでオレが考えてはもはやそれはお前のデッキではない。墓地を利用するもよし、ロックするでも構わん。」

「ロックはなんか合わないんだよなぁ…。いっそのこと儀式デッキとか使ってみたいなー、マジシャンオブブラックカオスとかゼラとかっ!」

「鬼柳といい、本当にお前たちは分かりやすい性格をしているな。」

「えっ、なんで?なんで京介と一緒なの?!」


その表情は心外だ、と言わんばかり。


「小細工なしのハイビートだろう。」

「属性違うもん。京介は闇一色だけど、あたし光と水の2色だもん。」

「大して変わらん。光属性を使うなら半上級のサイバードラゴンでも1枚入れて見たらどうだ。」

「なるほど、確かにそれはありか。隣にスーパースターいたらブリュさまの打点普通に超えるし、京介メタれるし。」

「作るのはメタデッキではないと言ったのは誰だ。」

「でもクロウにもささるし…、できたらいいなくらいにしとくか。」


なんとなくの方針を定めながらデッキとにらめっこを始める。


「後は好みの問題だろう。…どう考えてもお前のデッキが天使と魔法使いというのが納得いかんがな。」

「なんで?かわいいよ天使族。強いよ魔法使い。」

「そうか、採用理由は見た目の天使族か。」

「うん、別にいいでしょ?」

「だったらなぜさっきの儀式の話の時にゼラが出てきた。あれは悪魔族だ。」

「それくらい知ってるけど、ロマンじゃんっ!」

と言って目を輝かせる。
やはり本人は否定したが、鬼柳とは似た者同士だろう。


「…、見た目で選び天使なら、破滅の女神ルインでも入れたらどうだ。モンスターを戦闘破壊に成功したらもう一度攻撃できるぞ。」

「候補に入れとくね。 てか前々から思ってたんだけど、ジャックのデッキってレダメ様入れたらすごいことなりそうだよね!」

ドラゴンいっぱい!と楽しそうに言うが、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンのカードなど見たこともないはずだ。

「そんなに簡単に手に入るカードではないだろう。ここをどこだと思っている。」

「そのうちあたし達の手によって制圧される予定の地、サテライトだよ。」

ニヤっと不適に笑うレイラ。
その顔はどう見てもうそぶいている顔ではない。やってみせる、そういったところだろう。

それにつられてか、笑うジャック。
このサテライトでどでかいことを成し遂げる。
それがこのチームの目標だ。

「確かにそうだな。…ならばお前がどれほどのデュエリストか、このオレが見てやろう。」

「わー、ジャック先生の特別課外授業だー。あんまり見えないからちょっとテンポ悪いけど、許してね。」

「本番はそんな悠長なことは言ってられんぞ。お前の実力、全てぶつけてこいっ!」





そんな2人をひっそりと覗く影。



「…なんかあいつら楽しそうだな。オレ達も混ぜろよな。」

なんだかつまらなそうにつぶやいたのはレイラの超えたい目標である、鬼柳。
少しアジトを離れている間に2人がデュエルしていたのがうらやましいようだ。

「それより、あの2人ってあんなに仲よかったか?」

ふとクロウがそういった。
確かにジャックは少しレイラが苦手なのだ。

「ジャック…楽しそうだな。」

「え、遊星、…。」

ジャックを見ている遊星の目がなんだか…、クロウには説明しがたいものだった。
幼馴染の幸せを願うこと、それは自体は別段おかしな話でもないのだが。


(ちょ、お前ら、それはねーだろ。wwww)

1人そのやり取りを見て笑いをこらえている鬼柳。
どうやらツボに入ってしまったようだ。

「??」

もちろん鬼柳が笑ってる理由が分からない遊星なのであった。