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レイラちゃんの復讐劇、決着編


昔の仲間たち、

こんな言い方をしたらそのうちの一人不動遊星あたりは今でも仲間だ、と言ってくれそうなものだがそれはこの際置いておく。

彼らの協力を得て新しくデッキを組みなおすことにしたレイラは仲間の一人だった(誤解を生まないために先に言っておくが別に憎みあってたりするわけではない)クロウ・ホーガンへのリベンジを誓うのだった。


「えと…、とりあえずテーマ1色だとサーチ先に乏しいし、2色でいくか。」

「属性統一と言うだけでもだいぶまともになるだろうな。」

「悪かったね、今までカードの寄せ集めで。」


とあるカードショップ。
ジャックのコネ…というよりは人気で発売前のパックをフライングゲットしたレイラ。
悩みながらカード配分を考えている。
ちなみにリベンジ相手のクロウはただいま仕事中でここにはいない。


「とりあえずエースは3積み。リクルーターも3積みだな。」

「うん。チューナーこんだけで平気かな?」

「それはシンクロ主軸か、そうでないかによって変わるな。」

「うーん…、とりあえず入れとくか。」

「そうやってカードを詰め込むからデッキが崩壊するということがまだわからんのか。」

「もー、ジャックうるさーい!」


鬼柳、遊星、ジャックのアドバイスをもらいつつ組んでいく。
なかなか楽しい時間だ。
今あるカード達から無限の戦略を組み上げる、これぞデュエリストの真髄だろう。


「レベルをランクにすることはできても、ランクをレベルに戻せないんだよな。」

「あぁ、ある意味では邪魔になったグングニールの処理には困らないがな。」

「グングたんを邪魔とか不憫とかいうなー!」

「誰も不憫とは言ってないだろ。」

すかさずつっこむ鬼柳。
ランク7のエクシーズなんてよく使えるよ、とその後に続けた。


「しかし、これは厄介なデッキになりそうだ。」

「だよな、疑似グラビティバインドだしな。しかも効果無効効果付き、カタストル涙目だな。」

「自分のモンスターのレベルを下げて潜り抜ける方法か…。」

「やめてよ!対策考えるの早すぎだよ遊星!!」


早くもメタられそうな勢いに悲鳴を上げるレイラ。


「まぁ、対策はレイラのいないとこで練ることにして。とりあえずモンスターはそんなもんでいいんじゃないか?」

「後はバックカードか。こんな感じの予定かな。」


よいせ、と並べていく。
それを見てのみんなの反応。


「召喚カウンターが入っていないが。」
と遊星。

「サイクロンは必須だろう。」
とジャック。

「サルベージか貪欲は入れとけよ。」
と鬼柳。


「サイクロンは入れる!…あれどこやったっけ? その前にとりあえず激流葬っと。て言うかあたし貪欲もサルベも持ってないから!」

「持ってないのかよ。」

譲ってやるからちょっと待っとけ、そう言って鬼柳はカードを探し始める。
そこになぜ持ってる、とレイラのツッコミが入る。


「とりあえずサルベージ2枚はあったから入れとけよ。後は若干のパワー不足だけどその辺は装備カードサーチすればどうにかなるな。」

「一番いいのはクロウが完全に展開しきる前にこちらのペースにしてしまうことだな。レイラ、試しに回してみるか?相手になる。」

「遊星相手か…、お手柔らかにね。」




その日の夕方、帰ってきたクロウにレイラは開口一番こう告げた。


「おい、デュエルしろよ。」

「お前ってさ、オレにネタに走るな言っておきながら自分はよくやるよな。」

そんな鬼柳のツッコミはレイラに届いていないのは言うまでもなく。
ずいぶんと突拍子のない申し出に一瞬驚いたクロウだったが快諾した。


「いいぜ、今度は少しくらいは手加減してやるよ。」

「今までのレイラちゃんだと思うなよ!クロウが仕事言ってた間、友情と努力のターンは済ませたんだからな!」

「どこの3原則だよ。というかオレにツッコミやらせんな。」


またもや軽くスルーされたところで今回はクロウの先攻でデュエル開始。


「じゃあ、オレはこれでターンエンドな。」

「リバースカード2枚に裏守備モンスターか。」

なんとなく見えていなくても何が伏せられているのか分かる遊星、こればかりは付き合いの長さで知るものだろう。


「あたしのターン、ドロー! まずはブラックホール発動!面倒なモンスターを墓地送り!」

「ま、仕方ねぇか。」

「げ、ヴァーユだよ、本当に面倒だなぁ。」

裏守備モンスターはいなくなりリバースカードのみになったところで反撃開始。


「手札の海皇の竜騎隊と水精鱗‐アビスディーネを墓地に送って、水精鱗‐メガロアビスを特殊召喚!」

「ちょっと待てよ!水精鱗‐アビスディーネなんてカード聞いたことねーぞ!」

「うん、一週間ほどフラゲった。ジャックのおかげで。」


そりゃねーよ、そんなクロウの呟きはレイラにまたしても届かない。



「龍騎隊効果、デッキから深海のディーヴァちゃんを手札に加えて、召喚!ディーヴァちゃん効果で海皇の狙撃兵を特殊召喚!メガロアビス効果、ディーヴァちゃんをリリースしてこのターン2回バトルを行うよ。」

「なんか、やな予感しかしねーんだけど。」

ギリギリ残るよな、と場のモンスターの攻撃力の計算を始めるクロウ。
だがそうはいかないのがこの海皇水精鱗デッキだ。

「バトルフェイズに移行するよっ。メガロアビスで2回、狙撃兵でダイレクトアタック!!」

「くっ、やるじゃねーかレイラ。けどまだオレのライフは残ってるぜ。」

「まだなのはこっちだよ。狙撃兵効果、相手ライフに戦闘ダメージを与えたときデッキからレベル4以下の海皇と名のつくモンスターを特殊召喚するよ。2枚目の海皇の龍騎隊召喚、そしてダイレクトアタック!!」

2800×2+1400+1800=8000
これで終わりだ。
レイラの手によって後攻ワンキル返しというまたなんともすごいことをしたのであった。


「オイオイマジかよ…。全然違うデッキで分からないって言ってもこれはキツイな。」

「どうだ、もうレイラちゃんをバカにすんなよっ!」

「もともとしてねーよ。…けど、強くなったな!オレのデッキもまだまだ改良の余地がありそうだぜっ。」


こうして、レイラの復讐劇は終わった。
大体的な彼女のデッキの改良の末に。


「じゃ今度はオレとやろうぜ、満足させてくれよなっ。」

「お前も好きだなー。まぁ、新しいデッキは回数回して自分のものにするっきゃないからちょうどいいけどね!」



追記
あとがき
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レイラちゃんの復讐劇、準備編

 


前回、クロウにコテンパンどころかぐうの音も出ないほどにやられてしまったレイラ。
彼女はその場では泣いていた程度のものだったが、デュエリストとしてのプライドと言うものくらいは持ち合わせている。

「…。そうだよなぁ、あたしのデッキ随分前から改良してないもんな。つか、お金ないや。」



特に定職についているわけでもなくふらふらと日銭を稼ぐ程度のことしかしてない彼女に大量出費はきつかった。



「…、しょうがない。最終手段だな。」

そう言って彼女はとある場所に走りだした。

彼女のついた先、それはかつての仲間たちのところだった。



(どーせかまってちゃんの京介も待ってれば来るだろ。)



軽く幼馴染に心の中でひどいセリフを投げつける。
そしてその予想は見事的中した。



「キョースケーっ、やーい!」

「ん?どうしたレイラ。」

「ちょっとその場でハネてみて。」

「え?意味がわ「いいから跳べよ。」



一昔前のチンピラかよ…、そう言いながらもレイラの幼馴染である鬼柳京介はそれに従った。




チャリーン




「まったく、直にポケットに小銭とか。ちゃんとお財布に入れなよねー。」

そう言いながらそのコインを自分の懐に入れるレイラ。
もちろん許されるわけはなく。

「おい、何さりげなく自分のものにしようとしてんだ!人のもの盗ったら泥棒だろ?!」

「いやー! いいじゃん、ちょっとだけー!!」



「そういう問題じゃねーだろ!」



力ずく、そうなったときにレイラはうぅ、と言いながらうずくまった。
その目にはうっすらと涙が浮かんでいるようだ。



「分かったよ、ちゃんと返すよ…。でも、収入ないあたしは新しいカードなんて買えないからこのままずっと弱小デュエリストのままなんだよね。みんなと同じチームいたけどさ、あの頃からずっと思ってたんだ、自分が足手まといのお荷物だってことくらい、分かってたよ。ただあたしは京介の幼馴染だから人数合わせとしていただけだってことくらい知ってたもん。」



「いや、別にお前のこと足手まといなんてオレは思ったことねーし、あいつらもだってそんな風には考えてないだろ。ただ幼馴染だからチームに入れたわけでもない。…分かったらその下手な芝居をさっさとやめるんだな。」



「……、いつウソ泣きだって分かったのさ。」



案外ケロリとした様子で顔を上げたレイラ。



「お前がオレの前で泣くわけないだろ。付き合い長いからそれくらい分かる。」



「ちぇー、おこづかいせびろうと思ったのになー。」



むー、とむくれたレイラはどうしようかな…、とか呟いているところを見ると金銭の工面を考えているのだろう。
それを見ていた鬼柳はしょうがねーやつ、と返した。



「まぁそういうことなら少しくらいは投資してやってもいいけどな。」



「…、ホント!?」



「本当。けど投資だからな、条件2つ。」



「何?」



少し不安そうな顔をするレイラ。
何を要求されるかが全く見当がつかないのだろう。



「1つ目、ちゃんとデッキ強化のために使えよ。」



「さすがにそこまでタチの悪いレイラちゃんじゃないよ。」



あたしってそこまで日頃の行い悪いかな、と軽くへこむ。
その様子を見ながらさらに続ける。



「2つ目、どんなマグレでもいいから、二度とこんな都合よくデッキまわらないって状況でも構わない。」



そこで少し含みを持たせ、レイラと視線を合わせた鬼柳。
突然のことにレイラは小首をかしげる。



「…、絶対クロウから一勝とれ。お前、それが悔しくて仕方なかったんだろ?」



それがオレの出す条件な、としめる。




「……京介…。」



「お、だいぶ涙腺キテんなっ。」



「うっさい黙れ!一瞬でもお前をいいやつだと思ったあたしがバカだった!!」



感動のワンシーン…、かと思いきやのいつもの展開。




「で、どうするんだ?」



「一回、いや、何回でもクロウのやつ泣かしてやる!」



相変わらずいい性格してるな、そんな苦笑いを浮かべながらレイラに軍資金を手渡した。



「サンキュー…。 この代金はそのうち返すわ…、体で。」

「いや、そこは労働で、って言えよ。ちなみになに買うんだ?」



強謙とか?という鬼柳にレイラは即効でネタに走ってんじゃねーよ、とツッコミを入れる。



「うーん…、これとは決まってないんだけど大規模改造しようと思っててさ。」



「じゃあ1から組み直しでもすればいいんじゃないか? 最近女子の人口増やそうとしてるのかかわいいカード多いし。あ、そうだ。お前もテーマデッキ組もうぜ、その方が絶対強いって。」



「インフェルみたいのは勘弁だけど、1つ気になってるのはあるんだよね。」



こないだ出たあれ、と言うレイラ。



「なるほどな。レイラらしくていいと思うぜ。しかもあのデッキ、組み方によってはBFなんて目じゃないくらい強くなるだろ。」



ちょっと面白そうだな、なんて子供のように笑う鬼柳。
やはり彼は生粋のデュエリストなのだろう。



「…よし、やっぱりあれで組もう!」



「がんばれよ。…そう言えばお前のシンクロ先ってパワー不足感あるからウォーターワールドでも探してやろうか?」



「別にいいよ、いろいろ効果使ったりできるし、エクシーズして満足するから。それじゃ!」



そこでニヤっ、と笑うレイラ。
いわゆるドヤ顔だ。



「…………そうかよ。」



何でそこでオレの口癖マネるんだよ、そんなつぶやきは走り去って行ったレイラの耳には届いていないだろう。


 


その後、すぐにレイラは戦略を教わるために別の人物を尋ねた。



「ねぇジャック、今ヒマならお願いがあるんだけど。」



前キング、ジャック・アトラス。
レイラの知る中では一番戦略で勝ち抜いているデュエリストだろう。



「貴様にしてはらしくない頼み方だな。いいだろう、何の用だ。」



「ジャックはキングだったんだから強かったんだよね?」



「なぜ過去形にする?!今でも貴様より強いに決まっているだろう!」



「じゃあさ、クロウに勝つにはどうしたらいいと思う?っていうかちょっと今のデッキ見てよ。」



「デッキはデュエリストの魂、そう簡単に人に見せてよいものではない。…だがしかし、あの敗北の後だ、少しは協力してやろう。」



そう言ってレイラの差し出したデッキを見ていくジャック。
その表情は徐々に険しくなっていった。



「レイラ、貴様本当にデュエリストか、オレ達と共にサテライトを制圧したチームメンバーか。」



「とりあえずは、あんまり貢献はしてないけどね。」



そこでジャックは軽くため息をつきその後を続ける。



「この際だ、ハッキリ言ってやろう。………………これはデッキではない、ただのカードの寄せ集めだ!」


「え、……そんなにヤバい?」



さすがにそこまで言われることは予測していなかったようだ。
レイラはポカーンとした表情を浮かべている。



「どんなによい効果をもったカードでもそれを生かせなければ意味はない。1から作り直すんだな。」



「まぁ、そのつもりだったけど。参考までにどんなところがこのデッキまずいの?」



聞いとかないとまた同じ間違いかも、とレイラはつぶやいた。



「まずはカードの枚数だ、基本的には40枚にしておけ。そのうちモンスター20、魔法10、罠10の比率が一番バランスがいいだろう。後は種族や属性で統一してみるのも悪くない。」



「なるほど、だからジャックのデッキは下級悪魔族と上級ドラゴン族なのか。ありがとう元キング!!」



「誰が“元”キングだっ!!」




最後にあからさまに毒気のある言葉を残してレイラは消えていった。
もう1人、最後の協力者の下へとレイラはガレージに向かった。



「ねぇねぇ遊星、今ヒマだったりする?」



「あぁ、丁度一段落したところだ。」



最後の協力者、不動遊星。
レイラの仲間の中で一番腕のいい、現デュエルキングだ。
とはいえど、彼が昔のジャックのようにキングらしいことをしているのは見たことがないが。



「実は今ね、強いデッキを作るのに足りないものを探してるんだ。」



「……。よかったら余っているカードを譲ろうか?」



「えっ!いいの、ありがとう!!」



それくらいしかできないが、と控え目に続ける遊星に大喜びのレイラ。
あくまで足りない知識などを聞きに来たつもりだったので思わぬ収穫だ。



「じゃあ、ついてきてくれないか?」



ガレージを離れ母屋に向かう、行先は彼の部屋。




「と、言うわけで、遊星のお部屋初公開っ!」



「レイラ、いったい誰に話しているんだ?」



「全国の液晶画面の向こうの乙女達に。」



(液晶画面の向こう側…、パソコンの画面の奥は配線しかないが…。)



さすがメカニック、設計図の話ではないのだがそうなってしまうのが彼の性だろう。




「とにもかくにも、おじゃましまーす。」



「どんなデッキにするかは考えているのか?」



「うん、出たばっかりのなんだけど使いたいテーマがあるんだ。」



氷結界も水属性だしね、と続けるレイラ。



「そうか、悪くないと思う。それならこのあたりのカードが有用だろう。」



「ありがとう、本当にありがと!…、後ついでにちょっとやりたいことあるんだけどいい?」



お願いっ!と手を合わせ懇願する。



「? 構わないが。」



やったね!そう叫びながらレイラがとった行動。
ぼふっ、と飛び込んだ先は。



「遊星のベッドー。えへへー。」



「レイラ眠いのか?疲れているならきちんと休んだ方がいい。無茶はよくない。」

「違うって、別に眠くないし疲れてもないから。無茶はむしろ遊星の方がしてるくらいだよ。」



天然だなー、そんなことを言いながら勝手に人のベッドで転がるレイラ、半分ほどは変質者である。
そこに来客が1人。



「オレの前には鬼柳、後には遊星とは、貴様も忙しいやつだな。」



「どしたのジャック?もう十分王者のデュエル講座は聞いたよ。」



「貴様に手を貸してやろうと思い鬼柳から詳しい話を聞き来てやったんだ。」



「あれ?ジャックがかなり協力的。」



「ふん、あそこまでの大敗だ。情けをかける以外どうしろと言うんだ。」



「ぶっちゃけクロウがチートなんじゃないかと思い始めたよ。」



「新規テーマで組むんだろう?今度出るパックでさらに強化されると聞いている。」



待つのか?そう聞いてきた遊星にレイラは悩む。
そしてそれを一蹴するジャック。



「オレの手にかかれば発売前のパックを手に入れることなどたやすいがな。」



「すっごーい!さすが子供と全国の乙女達に大人気だった元キング、ジャック・アトラス!!」



「だから元キングと呼ぶなと言ってるだろうっ!」



「…今のは純粋に褒めたんだけどなー。」



日頃の行いが悪いのか、としょげる。
その後に何かに気づいた遊星が続ける。



「で、ジャックの持っているそれは?」



「あぁ、このあたりのカードならあのテーマとも相性がいいだろうと思ってな。貴様にくれてやる。」



「ちょっと上から目線なのがあれだけど、ありがとー! …何これ、効果もいいけどかわいいぞ。」



「今のデッキを見る限り、モンスターの見た目にもこだわっているようだからな。」



「さすがジャックだな。」



「それはどういう意味だ遊星。」



少し怪訝そうな顔をするジャックに遊星はこう言った。



「真のキングは相手の数手先を読むんだろう?」



「遊星………。」



「…おジャマ虫はここで退散しまーす。末永くお幸せにー。」



「?」 「なぜそうなる?!」



レイラのセリフの真意の分からない遊星と誤解に憤るジャック。



レイラのクロウへの逆襲はここから始まるのだった。


 


 


追記
あとがき
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サティスにはガチ勢が2人ほどいると思うんだ


「もうクロウなんて大っきらい!顔も見たくない!!」

「え、おい、ちょ…待てよ!」


それはレイラが久々に元チームメンバーと出会った日に起こった事件の話。


「さすがにやりすぎだ。」

「貴様は限度というものを知らんのか。」

「けどよ、全力でやらないと相手に失礼だろ。」

「ん?どうしたお前ら。」

「キョースケ〜〜!!!」



レイラは遅れてやってきた幼馴染に抱きつ…いや、泣きついた。



「何があったんだよ、強気の塊のレイラ泣かすなんて。」

自分の腕の中で泣いているレイラにどうしたんだ?と聞くが、何かわめいてるだけで何もわからない。



「実はクロウとレイラでデュエルしていたんだが…。」

「あぁ、ワンキルでも決めたのか。」

「その通りだ。」

「そんな事だろうと思ったけどな。」

やれやれ、とあきれ気味の鬼柳は詳しく聞かせてくれ、と2人に言った。



「レイラはモンスターとセット、リバースカードを3枚でターンエンドした。」

「そしてクロウは旋風発動、シロッコ効果通常召喚、旋風効果ブラストサーチ、効果ブラスト特殊召喚、効果ゲイル特殊召喚。ここで手札からアンチリバース発動。」

「あぁ、全部伏せカードやられたか。手札からトラップとかインチキも大概にしろよな。」

「インチキじゃねぇ!!」

反論するクロウ。
遊星は淡々と説明を続ける。



「愚かな埋葬発動ゼピュロスを墓地へ、ゼピュロス効果ブラストバウンスでゼピュロス特殊召喚、再び効果ブラスト召喚、シロッコ効果でブラストに攻撃力集約。」

「バトルフェイズにカルート効果でさらに攻撃力をあげ、伏せてあった守備力0のモンスターに貫通8000ダメージだ。」

遊星の解説を途中でジャックが引き継ぎ、ようやく全貌が見えた。 




「そりゃヒドイな、…お前の手札が。」

「京介のバカー!」

「召喚カウンター入れてないのかよ。」

「入ってるもん、でも初手は攻撃カウンターしか来なかったんだもん。」


うー、とうなる(?)レイラに鬼柳はこんな提案をした。

「じゃあオレがお前の仇とってやるよ。でもただ俺が勝ってもお前の気が晴れないだろうからブリューナクとトリシューラ貸してくれよ。」

「うん、分かった。いいよ。」


すっと、レイラは自分のデッキのエースを渡す。


「それじゃあ今度はオレとデュエルだクロウ。満足させてくれよな。」

「いいぜ、相手になってやるよ!」


泣きやんだレイラはカフェオレ飲みたい、と呟きどこかへ行った。
きっと台所へ行ったのだろう。



「どうなってる?」

「あぁ、今のところはどちらが優勢とも言えない。」

「ブリューナクがいる分、鬼柳の方が有利かもしれんな。」


まだそれほど勝負は動いていないようだ。
ここでクロウはターンを終了した。


「オレのターン、ドロー。インフェルニティ・ミラージュ召喚。ミラージュ効果ネクロマンサー2体蘇生、ネクロマンサー効果リベンジャー蘇生、ネクロマンサー効果デーモン蘇生、効果インフェルニティ・ブレイクをサーチしてリバースカードセット。」

ここで一呼吸置くのはもちろん意味がある。

「漆黒の帳下りし時、冥府の瞳は開かれる。舞い降りろ闇よ!シンクロ召喚!出でよ、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!」 

(なんでみんな前口上読むかな…。)

「ワンハンドラゴン効果ミラージュ除外でネクロマンサー2体蘇生、ネクロマンサー効果デーモン蘇生、デーモン効果ビートルサーチ。インフェルニティ・ネクロマンサー2体でオーバーレイ、エクシーズ召喚、虚空海竜リヴァイエール!リヴァイエール効果発動、ミラージュ帰還、ブリューナク効果ビートルコストでリヴァイエールをデッキに戻すぜ。ネクロマンサー効果でビートル蘇生。」

「なんか魔法の呪文みたいでよくわかんなくなってきた。」

「仕方ない、インフェルニティはそういうデッキだ。」

もはやレイラはよく理解できていないようだ。

「インフェルニティ・ネクロマンサー、デーモンにビートルをチューニング、破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け!シンクロ召喚!氷結界の龍・トリシューラ!」

「ホントに人のエースカードの前口上考えてたのかこいつ。」

若干あきれるレイラ、だが内心、自分のエースでクロウをやっつけてほしいとも思っている。

「まずはトリシューラの効果処理からだな、墓地のヴァーユ、フィールドのアーマード、それから手札1枚除外させてもらうぜ。」

「トリシューラの嫌なところってそれだよな…。」

「悪いがまだ続くぜ、ミラージュ効果ネクロマンサー2体蘇生、ネクロマンサー効果デーモン蘇生、デーモン効果サーチ、ブリューナク効果手札捨てトリシューラバウンス 。」

「え、トリシュ様戻しちゃうの?!」

「ネクロマンサー効果リベンジャー蘇生。」
 


「もう一回シンクロ、あ、2回目だから前口上省くな。ワンハンドラゴン。ワンハンドラゴン効果ミラージュ除外、ネクロマンサーとデーモン蘇生、デーモンでバリアサーチでリバースカードセット。ネクロマンサー効果デーモン蘇生、…適当にサーチでいいよな。」

「おい、投げやりになってんなよ。」


やってる本人もだいぶ大雑把になってきた。
 


「インフェルニティ・デーモン2体でエクシーズ召喚、ダイガスタ・エメラル。エメラル効果ワンハンドラゴン3枚戻して1ドロー。ネクロマンサー2体でエクシーズ召喚、もう一回リヴァイエール、効果ミラージュ帰還。さっき適当ににサーチしたカードとエメラル効果のドローカード切ってリヴァイエールとエメラル戻すな。」

「これで鬼柳の場にはブリューナクとインフェルニティ・ミラージュの2体か。」

「そういえばジャック、この状態、このターンの始めもそうじゃなかったか?」

「!!!」


遊星の冷静な指摘に驚くジャックと嫌な予感しかしないクロウ。


「なんだ、気づくの速かったな。さすが遊星ってとこか。ってわけだレイラ、このままトリシューラループさせてクロウの場除外しまくってやるよ。」

「やれやれー!!クロたんやっつけろー!」

「…勝てる気がしねぇ。」

「おいおいどうしたクロウ、オレはまだ満足してないぜ?」

「そんな凶悪なループコンボ、相手にできるわけねーだろ!」



こうして今回の事件は幕を閉じた。





追記よりあとがき
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ついに帰ってきちゃいました

このネオドミノシティでは大きな事件が2つほど起きた。

1つ目は、地縛神なる謎のモンスターとその使い手達、ダークシグナーが暴れまわってたという事件。


この事件が収まってやっと平和になると思った矢先にまた事件。

アーククレイドルとかいうでかいなにかがこの町に落っこちそうになるという…。


もはや何が何だかよく分からないのは彼女の頭が悪いからではないだろう。
彼女の名前はレイラ・マリナス。
正真正銘のサテライト生まれのサテライト育ちのちょっと昔は“やんちゃ”していた、ただそれだけの女の子だ。



今日もなんとなくヒマ、と散歩のようにふらふらと特に当てもなく出かけていた。

そんなある日、彼女の静かな平凡が崩れさるのだった。




どこからともなく聞こえる何かのメロディ、それは聞いたことのある音色だ。

(これって…、ハーモニカ、の音か?)


何をするでもなくただ出かけていただけの彼女は気になる、とその音の方向へと行ってみた。




そしてそこにいたのはどこかで見たことが…、いや見飽きるほど、むしろなぜここにいるのかが疑問に思える人物だった。


(…、確かしばらく旅にでも行ってくるとか言ってなかったか、あいつ。)



ぼんやりと考えているとふと、その人物は振りかえり、彼女の姿を見て少し驚いたような顔をしてから笑うのだった。


「帰ってきたぜ、レイラ。」


彼の名は鬼柳京介、彼女とは幼馴染にあたる。
そしてその幼馴染からの評価は“愛すべきバカ”だ。


「最近見かけなかったからセキュリティにパクられてそのままかと思ってたよ。」

「…。じゃあ街離れる時お前がよこしたトリシューラはこのままもらっとくか。」

「あぁっ!トリシュさまを人質に! …、いや、人ではないけどな、ドラゴン族だけどな。」


こんな風に何もなかったかのように彼女は振るまってはいるが、実はそれなりには心配していた。

彼女の“やんちゃ”していた時代には彼もいっしょにいた。
そして何を考えたのか、セキュリティに手を出した彼は一級犯罪者として収容所に送られた。

もう二度と会えないだろうと思っていた。
風のうわさで彼の訃報も聞いた。

なのに彼はまた帰ってきた。
何もなかったように振る舞うから、彼女もそれにならった。

けれど、やはり何かいつもと違って、心配だったからお守り代わり、と彼女のエースカードを渡したのだった。


「最終的に使うことはなかったな…。前口上も考えたけど。」

「よし、いつものバカな京介だ、問題ない。」

「バカな、ってなんだよ。」

「なんでシンクロ前にそんなメンドイセリフ入れなきゃなの?普通にシンクロしまーす、トリシュさまで、じゃダメなの?」

「……、そんなんで満足できるかよっ?!」

(うっわ、久々に聞いたわ…、そしてテンションがメンドーだ。ついでにタメんな。)

「お前はメンドーだとかいうけど、シンクロした時のあの―「ごめん、分かりたくない。」



「「………………………。」」


しばらくの沈黙。


「いっとくけどオレだけじゃなくてみんなやってることだからな。」

「ライディングデュエルのテンションについていけない、というかついていきたくない。」

「そんなこと言ってたら時代においていかれるぜ。」

「なんか、もういいや。置いてかれても。」

「オレ考えてやるからやってみろって。」

「丁重にお断りします。というか厨二病バラまくな。」

「人の親切に何言ってるんだよ。」

「いや、普通にそこにあわせて黒角笛とか奈落とか脱出装置とかされたら虚しい通りこして、恥ずかしいだけでしょ。」


そう淡々と話してきたレイラに、やれやれとあきれ顔で続ける。


「エースの召喚にトラップ合わせられるようじゃ、まだまだオレ達には遠いな。相手のリバースカードも計算に入れて最高のタイミングに呼び出し勝利を引き込むのがエースの仕事だろ?せっかくのトリシューラに警告打たれたんじゃ優秀な効果が泣いてるぜ。」

「…なんか京介がまともなこと言ってる…っ!」

「なんだよ、そのお前の中のオレの評価。」

「愛すべきバカ?」

「複雑な心境だな、それ。」








追記より
あとがき
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今書いて満足するっきゃないだろ!← (タイミング逃さないうちにやっときたいハロウィンネタ)

10月31日、ハロウィン。

本来は子供たちがお化けの格好をし、お菓子をもらいに練り歩く日。
だが、ここネオドミノシティのサテライト地区ではそんな常識を壊すようなことが起こっていた。

チームサティスファクション、リーダー鬼柳京介がサテライトを統一するために作ったそのチームに参加する不動遊星は今日も今日とて機械いじりに余念がなかった。

それもそのはず。

彼らの使用する通称『満足手錠』は彼が無茶な注文をもとに作ったもので、それ以外であれど主にそんな仕事は彼のもとに回ってくるのだから。


「ゆーうせーっ!」


ふと聞き覚えのある声に顔をあげる。
そこにいたのは青い長い髪を下ろし、なぜかブラックマジシャンガールの姿をしているレイラ・マリナスだった。


「トリックオアトリートっ!」


その意味を理解できずにキョトンとしているとレイラはさらに続けた。


「もう、遊星ったら今日はハロウィンだよ。お菓子くれないとイタズラしちゃうからね!」

「…レイラのイタズラはいつものことだと思うが……。」

「今日はお菓子で手を引いてあげる♪って日なの。」


ただ単に甘いお菓子か大好きないたずらか、どちらかがしたいだけでたいした意味はないのだろう。


「すまないレイラ、すっかり忘れていたから何もないんだ。」

「んじゃいたずらしてい?」


そこで満面の笑みを浮かべる、彼女をよく知る人物としてはこれはあまりいい気分ではない。


「話は変わるが、この前レイラが拾ってきたカメラが治ったんだが…。」

「あ、ほんと? それじゃあこれ以上粘ってもなんも出てこなさそうだし、これで引き上げてあげるね。」


そのカメラを片手にスキップしながらどこかへ消えていったレイラはおそらく次のターゲットを探しに行ったのだろう。

遊星は他の仲間の無事を祈るのだった。




「お?」

同メンバーのジャック・アトラスを見つけたレイラはもはやタックルという勢いでジャックに飛びついた。
その心中はおそらく「カモみっけ」と言ったところか。


「ジャックー、トリックオアトリートっ!」

「…ふん、毎年毎年飽きない奴め。」


そう言いながら彼は手のひらほどの包みをレイラに渡した…と言うより押し付けた。


「えー、なんで持ってるのー。」

「貴様の行動は読めている。ならば先に対策しておけばよいまでのこと。」

「ちぇ、つっまんなーい。」


包みの中のクッキーを口に放り込み、「たいしておいしくないなー」など言いながら次のターゲットを探す。
残るターゲットは後2人。



「あ、いたいた♪」


レイラにとっては彼が一番の本命だったのかもしれない。
今も昔も、いたずらっ子(いじめっ子の方が正しいかもしれないが)は反応が面白い人が好きなわけで。


「くーろたんっ!」

「うわ、れ、レイラ!?」


ジャックの時とはうって変わって、ぎゅうと後ろから抱きついた。
その方が彼、クロウ・ホーガンにはよく効くのだ。


「くろたーん、トリックオアトリートー。」

「や、ちょっと待てって。なんか、その…当たってるんだけど。」
「当ててんに決まってんだろ。」

即答。
ばっさりと切り捨てた。。


「お菓子くれないと離れてあげないんだからねー。」

「分かった、分かったから! お菓子やるから離れろって!!」

「もー、クロたんかわいいなー。」


相当恥ずかしかったのだろうか。
顔を赤くし、目線をそらしながら渡してきた包みを満足げに受け取ったレイラはこう続けた。



「さて、そろそろ本日の大一番と行きますか!」


本日の大一番。
それは彼女と同等、もしくはそれ以上にイベント事が好きであろう、彼女の幼馴染とのある意味での直接対決である。


「サテライトのブラマジガール今ここに召喚されましたっ。…というわけできょーすけー、お菓子くれないとイタズラなんてものじゃ済まないよー。」

「どこがブラマジガールだよ。ダーク化ブリューナクの間違いだろ。」

「だれがブリュだよ、こんなにかわいいのにっ。」

「レイラ、お前、鏡見たことある?」

「じゃあ逆に聞いてやるよ、京介は残念って言葉知ってるの。」

「お前のことだろ、どう考えたって。」

「むしろお前だよバーカ。京介のバーカ。ついでに言い忘れてた、トリックオアトリート。」

「現れるたびに何をどれだけ場を荒らせばば気が済むんだよ、うちのブリューナクは。できるの手札の枚数までだからな。」

「だまれ腹筋ブレーカー。自分のカードの効果くらい知ってるわ。早くお菓子くれないと…そうだな、そのデッキサテライト中にばらまいてやるからな。」

「もうそれイタズラじゃないって気が付いてるか?」

「もちろん。ちなみに京介に対しては常にむしろ軽い敵意がむいてまーす♪」

「…俺とおまえってどんな仲だったっけ。」

「とりま幼馴染?」

「幼馴染に敵意向けんなよ。」


先手取られた、となんだかつまらなさそうに呟いたことから彼も何かのコスプレする予定があったのだろう。


「おいおい、いい年こいて何する予定だったんだよ。一番年上だって忘れてるだろ。精神年齢絶対一番下だけど。」


ホントは年二つしか違わないけどねー、とか言いながら何かないかと作戦を練る。
どうにかしてこいつからお菓子をもらえるだけのイタズラ、もしくは本当に向こうがやめてくれと懇願するだけのイタズラはないかと。


「あーもう、さっさとレイラちゃんを満足させてくれよな!」

「それオレのセリフ!」



正確にはうるさくなるのはこれからなのだがそれこそ覗くのは危険というもの。







追記からあとがき
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