幸せで官能的なHを目指したのですが、いかがでしょう?
続きから。
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幸せで官能的なHを目指したのですが、いかがでしょう?
荒い息を吐く半開きの唇から零れる唾液を、べろり、と、獣臭く舐め上げる。それは、甘露のように甘い。その源流を遡るように辿りついた口腔内を舐め貪りながら、既にくしゃくしゃになり裸体に纏わりつくだけのパジャマに手をかける。
「守…足を」
全てを口にするまでもなく、円堂は鬼道の求めに応じズボンから抜いた足を立て広げ全てを晒した。彼の欲望はまた芯を持ち、妖しくてかる粘液が滴り最奥まで濡らしている。
鬼道は、久しぶりに見る彼の媚態にゴクリと喉を鳴らしながら、先ほど放ったものを細い指で掬い纏いつかせると、今から繋がる場所を愛おしむように、数度なぞり塗りつけ……中指をしのばせた。
「う……ん!」
久しぶりに触れ合うそこは熱く狭く、円堂の唇からは押し上げられるような吐息が漏れる。
「辛い……か?」
とても快楽からくると思えない声に、鬼道の眉が困ったように顰められた。何度も触れ合い、本人よりも良く知る身体だというのに、初めての時よりも緊張するのはどういった事か。
いや、理屈ではわかる。最初は彼を繋ぎ止めたくて、必死で、気遣う事すら吹っ飛んでいたのである。だが、今は、大事にしたい。もう、辛い思いなどさせたくないのだ。
気持ちばかりが先走って、指を動かすことすら躊躇っている鬼道に、円堂は、もう一度同じ言葉を口にする。
「いいから、早く…」
今度は、恥ずかしがりなどしなかった。欲しい気持ちは一緒だと誘い、そして、鬼道の着衣の間から素肌に触れ更に誘惑した。
「有人も、脱げよ…」
甘すぎる言葉に、また、眩暈がした。血が昇る。呼吸すら吸い取るように激しく口付けながら、必死で二人を隔てる布を全て取り払う。
そして、鬼道は、もう二度と恐れたりしなかった。本能に染み付いた記憶に従い、中に挿れた指で円堂の中の良いところを探って何度も押し付ければ、ようやく心地良さを含んだ吐息を聞くことが出来た嬉しさに、手で唇であちこちを愛撫し労わりながら指を増やし、更に奥へと進めていった。
「ふ、ア、あっ…ア……!」
静かな夜の暗がりの中、ぐちゅり、ぐちゅり、と、生々しく濡れた音が響く。それは、どのように言い訳しても、獣の、浅ましい行為。だが、互いだけを求める二人には、そんな聞いたような常識など不要なもの。どこぞへ投げ捨ててしまえ。
そして、二人は、同時に視線を合わせた。暗くても隠しようもない間近な瞳で、気持ちを確かめあう。円堂の瞳には、まだ、涙の膜がかかり、意外と長い睫には雫が宝石のように輝いていた。
もう、悲しみからくるものじゃない、そう解っていても、鬼道は唇でそれを拭う。
長い間、共に生きてきたが、心底強い彼の涙を見るのは初めてであった。それを流させたのが自分であったのは痛恨の極みだったが、ならば、それを全て拭おうと思う。心から。
二人が一つになるのに、もはや、言葉は要らなかった。
本能が求めるままに、鬼道は身体を進め、円堂はそれを全て受け止め包み込む。
「ふ……っ…」
「…はァ…あ――」
完全に繋がった二人は、どちらともなく、腕を伸ばし抱き締めあった。重なる汗ばんだ肌の感触も匂いも、心地良いだけ。踊る心臓の持ち主が自分だけじゃないと知って、愛しさにどうにかしそうだった。
円堂の目から、また、涙が溢れる。
「守、好きだ…お前だけ」
またそのまろやかな頬を濡らす涙に口付け、敬虔な祈りのように、何度目になるかも分からない告白を捧げれば、円堂は、声を震わせながらそれに応えた。
「おれ、も…有人、だけ…」
かつて、二人は帝国の地で同じ言葉を交わしている。
だが、それは、このみちみたりた時に比べ、酷く幼く未熟なものであったと二人共に感じた。
ようやく、人を愛する意味を知る――そして、それは、これからも、ずっと大きく成熟していくのだ。
「行こう、どこまでも共に……」
指を絡め握り合ったのを合図に、鬼道が全身で愛を叫ぶように動き始めた。
「う…ン、あっ…ア――…!」
長い苦しみを経て、ようやく好きな人と身も心も全て重ね合う幸せに、円堂の視界がまたぼやけ、ゆらゆらと揺らめく。
「守…まも…る……っ!」
「あ……ゆう、と…有人ぉ…! 好き、す――ぁア!」
何度も何度も名前を呼び合う。交わっているのは身体のほんの一部分なのに、全身を捏ね回しどろどろに溶けるような。
こんな、快楽は、初めてだった。
「…イイ、か…守……っ」
愛おしみたいのに、頭から全て貪りたいような凶暴な気持ちも、同時に叩きつけるように、鬼道は円堂の身体の中心に自分の全てを捩じ込む。
円堂は、全てを受け止めながら、何度も首を縦に振った。
「…ふ、ぁ…ん! う…ン、い、イ…やァ…っ――!」
この感じには、覚えがあった。どこか、見知らぬ頂に突き上げられてしまう……自分が自分でなくなるような、でも、気持ちヨくて堪らない……。
「嫌、か…? なら、止めるが…」
それは、円堂がどのような状態か知り尽くしている男の戯れであった。しかし、円堂は必死に首を横に振る。涙が散る。
「違…っ、止める…な……!」
何ひとつ逃さないとばかりに、腰に絡めてくる肢、熱く溶けた中の肉――それら全てが鬼道を求めている事実に、それだけで達してしまいそうなのを唇を噛んで耐えた。もう駄目だと、思った。呻くように最後を告げる。
「もう、イく…ぞ…!」
「あ、ァあ…う! ア…い、イ…す、ご…ィ…! あ…ッ!」
もはや、円堂は応えられず、閉じることの忘れた唇からは、意味のない母音が零れるばかり。
喘ぐ息を摺り合わせるように唇を重ね、人の身に捉えられるギリギリの、高い高い白い処へ昇り―――
「う…ぁ、あァん…! や、イ…ッ! は、ァ――!」
「…ク、まも…る…ッ!」
精一杯抱き合いながら、二人が生ける地まで滑落していったのだった……。
ひたりひたりと頬を軽く叩く、愛しい手を取ろうとしたのに、思うように動かなかった右手を内心歯噛みしていたら、スルリとその手に手を重ねてくれた事に幸せに満たされて、目を薄らと開ける。
「大丈夫か…守?」
「うん…」
何度目か数え切れないほどの口付けなのに、いちいち愛しくて大変だった。
そして、まだ、鬼道を受け入れたままの状態だと知り、またしても、涙が溢れて大変だった。鬼道は、そんな円堂も愛しいと言わんばかりに微笑みかけ、涙を唇で愛撫してくれる。笑みが、深まった。
「まだ、止まらないな…ここも、此処も――」
「――ひっ…!」
触れられて初めて、自身がまだ萎えもせず、しとどに蜜を零している事を知り、居た堪れなくなった。
「ごめん…」
ぐす…と、円堂は鼻を啜った。好きな人を困らせたい訳じゃない。こんなに満たされているのに。
そこから背骨を駆け上がる衝動が、淫靡な熱で脳を蕩かせ、本能がままに腰を揺らめかせ淫らに恋する人を誘うよう命じる。抗えない。
鬼道が息を呑む音を聞いて、円堂は消え入りたいほどの羞恥に襲われた。なのに―――
「止まんない…よ…!」
涙も、身体の暴走も――もっと――!
「欲しい……助けて…ゆ…ぅと…!」
この瞬間、プチン、と、鬼道の中の頑なな何かが、キれた。
此処が病院で、いつ巡回の看護師が来るか解らなくって、開放して身なりもベッドも整えなくては…と、思っていたのに。
こんな風に誘われて、勃たん男など、不能だろう…! 瞬く間に、膨れ上がった欲望を、その身体の中で擦り付ける。
「あ…っ、あ――?」
視界に満ちるは、赤。円堂が愛してくれる、この目の、血の――全身にどろどろ渦巻くそれを、円堂の中に叩きつける!
「もう、知らん…お前が、嗾けたのだ。お前自身で、責任を取るがいい!」
「ア、あァ――! ン、ぁ、ア…ッ!」
高く啜り泣く、しかし、明らかに性感の悦びを孕んだ円堂の高い声に、舌なめずりした。
もう、嫌だ。と、泣いて、助けを呼ぶ声すら枯れるまで、愛してやろう―――俺の、運命の人よ。
圧倒的な愛を前に理性を手放した鬼道は、獣になって、腰を掴み、爪を立て、肌を打ち、蜜壷のように溶けたそこを気が遠くなるほど何度も何度も愛し尽くした……。
【続く】
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