逆裁アカ(@umedori_3276)のフォロワーさんの誕生日に。
秋の肌寒い二人というリクエストを頂きました。
イメージソングはスピッツの楓。
でも、別れ話でも悲恋でもありません。
続きから。
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お話未満の妄想&書きかけお話の倉庫。ここで上がった話は大概大幅に加筆修正を加えられサイトにUPされます。
逆裁アカ(@umedori_3276)のフォロワーさんの誕生日に。
秋の肌寒い二人というリクエストを頂きました。
イメージソングはスピッツの楓。
でも、別れ話でも悲恋でもありません。
続きから。
《ききに来て》
この表題に、本文には端的に日時と場所を書いてあるだけの、成歩堂のメールに誘われて。
御剣が、11月を間近に見たその日の夕方、橙の光と薄墨の雲を見上げつつ深々と冷えた空気の中、ひなびれた建物の階段を降りボルハチに来てみれば、
雪などひとひらもない店内に、ピアニストが奏でる姿。
君は弁護士の時から、ハッタリを始めとして人の意表をつくのが得意なヤツだったが、弁護士を辞めた途端、ペテン師になった。
晩秋の寂寥を思わせる悲しいメロディは、御剣の心を一息に7年前のあの日へと――彼に愛を告げて見事、落ちた葉のごとく吹き飛ばされたあの日に戻らせる。
彼の強い自立心や、捏造弁護士のレッテルを貼られてしまった彼が、検事の頂に臨む自分の事を考え、どうするか。そう考えれば、それは実る筈もないと、知っていた。
だけれど、彼には、ほんのひと時の加護、無条件の味方が必要だったのも確かだと、今でも思ってる……。
今でも、私は、あの時のまま――
御剣の回想は、ピアノの最後の音と共に立ち消えた。
言葉を失ってしまった御剣に、成歩堂は、その奏でるメロディーの続きのように、ねぇ、と、呼びかける。
「ぼくは、ラミロアさんに、人は、そうカンタンには死なないものです。生きることに価値があるかぎりは。なんて知ったようなこと言ったけれどね、一方で、人は驚くほどカンタンに死ぬことも知ってる。どんなに人がその価値を認めても……」
切なる声は、どのような楽器よりも、御剣の心を打った。
「――ねぇ、どんなに細心の注意を払っても、人は過ちを犯すし、生きていて、何に傷ついたり誰かを傷つけたりするんだ」
だからね、と、奏者は、椅子から立ち上がり、唯一の観客の前に歩み寄る。
「どうせなら、ぼくは勝手に生きる事にしたよ」
滔々と話す声、鬱々とした映画のエンドロールを見ているように暗澹な気持ちになっている御剣に、成歩堂は、その終わりを告げた。
ねぇ、ぼくの言葉を乗せたメロディーを聞いて。
「今も、昔から、きみだけが好きだよ、御剣」
突拍子なさ過ぎる話に、思考がついて来ない。
無言になる御剣に否定的なものを感じたか、その唇が何かを綴ろうと動き出すのを待たず、成歩堂は、酷薄な仮面を被って笑う。
「ぼくが勝手にぼくの気持ちを打ち明けただけだよ。きみに恋人がいようとも、関係ないね」
何が罪に悲劇になり明日の命すら保障がないと、イヤというほど知ったんだ。
だから……。
ただ見つめていた瞳に、泣きそうな瞳をした成歩堂が映り――唇に柔らかい温もりが降る。
「ならば、私も勝手に気持ちを言おう」
肩に置いた手で押しのける御剣に、唇が離れ、傷ついたような表情を浮かべる成歩堂へ。
「短いから、よく聞いてくれたまえ」
悲しい話がハッピーエンドに変わる魔法の言葉を、贈った。
「愛してる」
これ以上言葉は要らない。唇から全身で、肌寒い秋の夜を温め合おう。
思えば、ここに至るまで、瞬きする程長い季節だった。
明日、散りゆくかも知れない運命ならば、今日が終わらないうちに愛し合えばいい……。
-終わり-
性 別 | 女性 |
誕生日 | 11月1日 |
地 域 | 奈良県 |
職 業 | 夢追人 |
血液型 | A型 |
肌寒いという漠然としたリクエストでこんなにも心温まる素敵なミツナルが読めるなんて嬉し過ぎて本当に数時間前の自分の阿呆なツイートを見てくださってありがとうございます!お忙しいのにこんな素敵な話をわたしに読ませて下さって、感涙の極みでございます…!
なるほどくんの一言一言が切なく愛に満ちていてもう…!
興奮のあまりの乱雑失礼いたしますー!
ほんっとうにありがとうございました!!
いつもお世話になっております。
少しでも喜んで頂けたのなら、嬉しいです。お誕生日おめでとうございます。
切ないとみせかけた幸せものは割合得意分野です。短いですが、どうぞお受け取りくださいませ。
コメントありがとうございました!