いつもとは違う診断で出たお題のカカイル小ネタです。

お題↓
貴方はかきたいと思わなくても『相手の服を抱きしめて寝ているカカイル』をかいてみましょう。幸せにしてあげてください


本文↓

家に帰ると、恋人が居間の床ですやすやと寝息を立てていた。中忍以上に支給される忍服のベストを、抱き枕のように腕に抱えて。俯いたままそれを数秒眺め、なんとなく後ろ頭を掻いた。それから彼の傍にしゃがみ込んでみる。
ふと、抱き締められたソレからは、自分の匂いがする事に気付いた(俺はよく鼻が利く方だ。口布越しでも人並み以上なのだから、ひょっとすると忍犬並みかもしれない)。
イルカ先生、と恋人の名を呼んでみるが、彼は目覚める様子もなく、むにゃむにゃと何事かを呟いただけだった。ついでのようにベストに頬を擦り寄せる。
そうして笑うのだ。嬉しそうに。幸せそうに。
この人は、眠っていても表情が豊かだ。
そっと彼の頬に触れる。イルカ先生、ともう一度名前を呼んだ直後に、彼が薄っすらと瞼を開け、黒い瞳に俺の姿を映した。
「おかえりなさい、カカシさん」
微睡みながら、けれどはっきりと此方の名を呼び、慈しむようなやわらかい笑みを浮かべる。ただいま、と言うべきはずの言葉は、何故だか喉につかえてしまった。
しあわせで胸がいっぱいになる、なんて。
ばかげた幻想だと思っていたんだ。あなたに出会うまでは。
「……ただいま、イルカ先生」
紡いだ言葉は結局ちいさく震えてしまった。
イルカ先生は、そんなことはお構いなしににっこりと笑う。
嬉しそうに、幸せそうに、笑うのだ。