一昨年前だったか、
ホワイトデーを過ぎた頃
けんちゃんは 私にプレゼントをくれた。
『これ、遅れちゃいましたけど、ホワイトデーの…』
一冊の本だった。
表紙の写真は、
見たことあるような景色。
折り目がつかないよう そーっと開くと
写真集だった。
『あっ!
これは(゜o゜;』
『はい、製本してみました(^◇^;)』
けんちゃんは、趣味で写真を撮っている。
研究のために、いいカメラを買ったのだけれど、
そのうち風景も撮るようになって。
二人で出掛ける時も
花を撮ったり、川や橋を撮ったり。
片目をぎゅっと閉じて、一生懸命シャッターを押しては確認して…
撮ってる時は私のことなんてそっちのけだから、
じっとけんちゃんの横顔を眺めてる。
私は写真に関して素人だけど、
けんちゃんの撮る写真は美しくて、色んな表情があって…
とてもステキだと思う。
彼は、撮りためた写真を、
オリジナルの写真集にしていた。
もらった写真集は
『四季』がテーマになっていて
夕焼けでオレンジがかった桜の花。
今にも水がはねてきそうな水面。
燃えるような紅葉や、
金色のイチョウと青空とのコントラスト。
いつも見慣れてるはずのこの街の
春・夏・秋の風景が、
とてもお洒落に切り取られて…
でも、
ここは雪がめったに降らないところ。
冬の景色は?
次のページを開くと、一面の銀世界。
『ぅわ〜! これって…』
『実家に帰った時に撮ったんですよ。
ここは雪が積もらないし。
これでやっと、四つの季節が揃いました!』
『これに、カメラマンさんのサインを頂きたいわ(^^)』
『サインて…(^◇^;)
これ、ねーさんと僕しか持ってないんですよ!』
世界にふたつしかない写真集を、
けんちゃんと私が持ってるって…
二人だけのもの…?
その写真集は ベッドの隙間に置いてあって、
時々寝る前に開いて見ている。
嫌なことがあった日も、
とても優しい気持ちになれるから。
これは、私の宝物なの。
ぁ…、
カメラマンさんのサイン、
まだ頂いてなかったわ。