話題:わが国、日本について

BLOGOSに田原総一朗氏のインタビュー記事が載っています。

インフラ再整備の公共事業で、今年は景気が良くなる!―田原総一朗氏インタビュー

この中で、田原氏は笹子トンネル事故に触れ、公共事業の必要を訴え、その結果景気が良くなる、と述べています。

何をもって「景気が良くなる」とみなすのか、この記事ではよくわからないのですが、おそらくGDPが増えるくらいの意味なのでしょう。確かにGDPは増えるでしょう。でも重要なのはもっと別なことだと思います。

公共事業について考える際に重要になるのは「乗数効果」です。このことについて素人でも簡単にわかる記事を紹介します。

佐藤総研(たった1人のシンクタンク) 「アベノミクス」成功の条件―消費増税と公共事業の差別化―

この中で佐藤氏は費用便益分析と乗数効果を考慮すると公共事業でGDPは増えるが借金も積み上がる、と述べています。つまり政府の公共事業は行えば行うほど国債を発行しなければならないということになります。

元の笹子トンネル事故の話に戻すと、財政に余裕がある時は事故を防止する目的としてインフラの再整備は必要に応じてやるのは賛成ですし、そんな主張は誰だって(バカでも)できる。では現状、インフラ再整備のために国債を大量発行する余裕が我が国にあるのでしょうか?

例えば笹子トンネルのようなインフラの再整備についてこんな風に考えることもできます。

@事故を防止する目的で借金をし整備する
A整備せず事故が起こった場合に被害者に(借金をして)賠償金を支払う

費用が@<Aならば@を行い、@>AならばAを行うことが政府のあり方として正しい選択となります。

「人の命をなんだと思っているんだ?」と遺憾に思う方もいるかもしれません。しかし国債を発行すればするほどそれだけ財政が破綻に近づくということも忘れるわけにはいきません。財政が破綻すれば私たちの子ども世代やより貧しい人たちにしわ寄せが来ます。そうなった時、インフラを整備しなかった場合よりもより多くの人命が失われるかもしれないということにも思いを馳せる必要があります。つまり現代の日本人はさまざまな点で命をカネで買っているんだということを認識しなくてはならないと思います。

私は何も特別なことを言っているわけではなく、こんな例はマイケル・サンデル氏の著書を読めばいくらでも出てきます。読んで考えてみてください。ただしサンデル氏はリバタリアンが嫌いなようで、若干の思想的なバイアスがあるので注意してください。