「ご主人さまー」


ぴょんぴょん、と跳ねながら少年の名前を呼ぶそれ。
白い体毛を持ち、真ん丸の体、焦げ茶の瞳に頭頂部に体の色と同じ二本の触覚を持つ生き物は主人―――アルディーンを呼んだ。
それに応えるのは無表情で銃の手入れをしている10歳の少年だった。

「ぷきゅ。」

「なんだ…?ぷきゅお。」

手入れに使っていたクロスを床に置き、アルディーンは白い体毛を撫でる。


「ご主人さま、笑って下さいっきゅ。」

使い魔の懇願にアルディーンは僅かに顔を歪めた後、ごめんな、と謝った。
出来る事ならいつも自分の為に頑張っている使い魔に笑顔を見せてやりたい。
だが、過去の事件のせいで笑えなくなってしまったアルディーンには無理な事だった。
「ごめんな、ぷきゅお。…もう、わからない。どうやって笑ったら良いのかわからないんだ。」


ぷきゅおの小さい体を抱きしめてやりながらアルディーンはぽつぽつと呟く。

「…おかしいな、昔は毎日のように笑っていた筈なのに。」


遠い目をしながらアルディーンは昔の自分を思い出す。


あの頃の自分。まだ健在だった母と妹、それに父とぷきゅお。
毎日明るく、楽しく過ごしていたのに。あの事件さえなければ今も――。


「みんなを殺した奴らに復讐、してやるんだ。」


碧の瞳に暗い影を宿しながら呟くアルディーン。
その様子を使い魔は心配そうに見つめていた。




しょた橙です。全ての始まりはここから、みたいな。
お母さんと妹を殺された橙が銃を手に取ってお父さんや(お父さんも銃使い)橙に銃を教える師匠に教えてもらって復讐するんです。