「これはですねー!焼酎の世界大会で1位になりましてねー!」

「そそそうなんですか??」

「飲んでみられますかー!飲んでみられますかー!」

「あ、じゃあ飲んでみられます!」

「あとこっちもねー!これはうち独自の蒸留の仕方でー!」

なんて商売上手な酒屋の販売員さんに、
チラチラ軽く商品見てたらガッツリ捕食されまして、数種類試飲してたんだけどね、焼酎ってね、そんなカポカポ飲むもんじゃないわけで。

「男の人に酔わされて」
ってフレーズも、こんなシチュエーションじゃ言うに言えない
「試飲でね」
なんて言うに言えない。

上司が誕生日近かったので、プレゼントを選びに高島屋に行ったんですよ
まぁちょっと正しく言うと、高島屋の奥にあるらしいヨドバシカメラに行きたかったんですけどね。
地図を見れど見れど、全く現在地から進展しないの。
あれー?っつって
おやー?っつって
もうね、4回くらい魚屋の前を通ったんだけど、5回目に辿りついたのも魚屋だったりして

えっと、、忍び?
ワナあるんじゃないーー?
ねぇねぇ、ワナあるんじゃないーー??
仕掛けられてたりしないーー??

店頭のおばちゃんもね、3回目くらいまでは笑顔で「らっしゃいらっしゃい!」言ってたんだけど
4回目くらいからかなー
「おねぇちゃん!魚!新鮮!」って
なんかピンポイントな指名いただけたりして

まぁあたしも魚好きだし
恋ってフィーリング(魚好き)ハプニング(迷子)、タイミング(迷子)っていう全てが揃っちゃった今
心揺れるわけ
プレゼントに生ものNGって規定もないしなーって
いやむしろこんなに探しても探しても、魚屋に出るってことは、
なんかもう、もういいかなーって
魚でもいいかなーって

「普段買わないもの」がプレゼントにはいいって、女性コラムにも書いてあったし
「なめろう」とかさ
ちょっと変わったもの まさしく珍味でプレゼントの紅一点を狙うのもありなんじゃない?
それこそ記憶に残るには適してるんじょない?

って考えとバトりながら歩き回ってたわけです。
「6回目も魚屋きちゃったら、もうあたし!決める!」
って半ば、上司へのお祝い < 逃れたいってバトルになりましてね
それでも目指してた訳です。ヨドバシカメラを。

もーあのカタカナで「カメラ」が見えた瞬間ったらね
空港くらいのテンションだったかもしれない
スティーブとかいう最愛の恋人がいてもね、いいはずっつー輝きを見せてたかもしれない
もーおめーどこ行ってたのよー心配すっからー
とか心の中で語りかけながらヨドバシに入ろうとしたんだけど

もうね、ヨドバシ一直線の目線を
ちょっと外したタイミングを見事捕獲されまして

「お姉さんお姉さん!これでしょ?!これ!ちょっと一回!もう一回!」
っていう斬新な売り込みのお兄さんの勢いをね、殺せなかった

一回からもう一回になる瞬間に
あたしそっち行ったっけなー…

まぁでも一回話聞いてやっかー、一回なー、
なんて軽い気持ちで足を運んでみて
「ふんふんあーこの銘柄ね、あー」とかサラッと知ってる感出してみたり
「55%?!え、これどうやって飲むんですか?」

「あっ、それ麦の純度でしてー」

「あーそういうバージョンの%かーあー」

とかちょっとジャブ打ち合ったりとかしたりね

もうね、魚屋も真っ青な威勢見せてくるもんですから
「ちょっとプレゼントで…」
って一言言おうもんなら

「プレゼントですとねー!こちらのこれ!これオススメ!男性?男性かな?!男性だとねー!これウィスキーっぽくて、氷で溶かしながらロックでナッツと一緒に食べてほしいんですけどね!うちでしかやってない手法で手間はかかるんですけどファンの方が多いんですよー!大きさも手頃で気軽に贈れるってとこも人気の一つですかねー!」

もーね、上司の性別から飲み方から、オススメのおつまみからの帰りのことまで網羅した売り込みをね
してくれるわけです。
お手頃っつー懐事情までも加味して

「飲んでみられますかー!飲んでみられますかー!」

のアッパーもかわせず、終始サンドバック。
矢吹ジョーが敗れる名シーンみたいな表情 出てたと思う。

最初に試飲したタイミングで
あーくるなこれ って
バレンタインにそわそわする女子ぐらい
あーくるなこれ って

3、4種類試飲したタイミングっつたらもー
結婚指輪一緒に選んでる的な視点に変わってた
もうね、前向きに検討せざるを得ないっつーところまできてた
なんならお早い決断を、っつーとこまでいってたかもしれない 結納交わしちゃったかもしれない

まぁまぁでもね
遠い親戚より近くの他人って感じで、魚屋もヨドバシカメラも振り切って
そのまま購入を決断しましてね。
ラッピングとかも選んだりしたんですけど
「今人気の柄がこちらですー!」
って、勧められたのが真っ赤な薔薇のラッピングで、
「箱がですね、今ワインの箱しかなくて、ちょっと大きくなってしまうんですけど」
っていうから、まー大は小を兼ねるっつーってことで箱も用意してもらって
ほろ酔い気分で家路についたわけなんだけど

ご飯食べてお風呂済ませてテレビ見てーってやってる時、視界にチラチラ入ってくるんだけどね



なんか、デカくない?

冷静に考えると、なんかデカくない?

むしろもっと冷静に考えると、焼酎にワインの箱って
むしろ箱に留まらず、薔薇のラッピングって

もーー誰しもがさーワインですねと思うじゃんー
ワインですねーワインですねーのテンションで開けられた日にゃ
その次の顔が見えるっつーか
ありのままの姿とか見せらんないっつーかさー
アナも女王も、この場面では登場に勇気がいる。
むしろ休んでもらって構わない。

なんだろう?あるじゃない?
「ごめん、時間なくて」って、
量販店の袋に入ったプレゼント渡されて
ハードル下げといてーの、中身はグッチの…
とか

いやもーーぜんっぜんないからーー
余裕でハードルの下、くぐっちゃうからーー

狙ってもない逆サプライズっての?
もしろ終始拝見してたけど、あたしがすでにサプライズ。

でももうね、時間は平等でして
こんな時くらいチャラ男でいーのに
ごめーん!忘れてたー!
くらいルーズにきてくれていいのに
なんなら休んでくれてもいいのに

逃げも隠れもできない、決戦は金曜日
戦闘の準備はぬかりない 退がらならない、なんて言えない 退きたい、むしろ

ワインっぽいラッピングに包まれてワインの箱に入ったワインじゃない焼酎を携えて
家を出たんですけどね
なんか途中からワイン買ったのかなーみたいな気分になってきて
むしろワインじゃねーのこれーみたいな期待が膨らんできかんですけどね

朝のミーティングが落ち着いたタイミングで、おめでとうございます!の声とともに差し出したわけなんだけど


「おっ、おっー!なんだなんだ!なんだこれはなんだ!」


「おっー!!


焼酎だ!!」


当たり前なんですけど
やっぱ焼酎だった。


後日、

「美味しかった」
「高かっただろう」
「気を遣ってもらって」
と並べる上司に

まさか

「最初は魚と迷いました。」
なんて言えませんでした。