TVによる鬼円(無自覚)新居突撃レポートを書いていたのですが、
フォロワーさんにネタを出してもらった結果、より面白い方向性のものが頭の中で出来上がったので、今まで書いたやつをボツることにしました。
でも勿体ないので、ここにだけ残しておきます。
というわけで、途中まで。
途中で何行か空いていたりするのは、先のエピソードとかの書きためでした。
続きから。
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お話未満の妄想&書きかけお話の倉庫。ここで上がった話は大概大幅に加筆修正を加えられサイトにUPされます。
TVによる鬼円(無自覚)新居突撃レポートを書いていたのですが、
どうして、こうなった!
『有名人・セレブのお宅訪問♪』とか女性の軽快なナレーションを尻目に、雷門イレブンを代表し剣城が両手で頭を抱え天を仰ぐ。
【ペンギン・ザ・ハンド】
彼らの監督である円堂守と、帝国総帥鬼道有人が同居を始めて数ヶ月が経った。
一応生活が落ち着いたという事で、彼らがこの度散々迷惑をかけている――とは思いも至らない――教え子達を自宅に招待したのである。
傍から聞いていて、何だかんだその生活のスウィートさに嫌な予感しか覚えないものの、一応礼儀と少しの好奇心も無きにしも非ずで、最近、すっかりお馴染みになった二人の親友兼結婚コーディネーターの豪炎寺と共に、二人の新居に訪問したのだが……。
よりによって今日この日に、円堂・鬼道家に、招かざる客が押しかけて来たのだった。
「今回は、サッカーをする人で知らない人などない、元全日本キャプテン円堂守さんと司令塔の鬼道有人さんのお二人が同居するご自宅に、お邪魔します!」
本当に何一つアポイントメントも取らずの突撃取材に、家の主二人は、無礼だとか憤慨する以前に唖然とテレビクルーと雷門イレブンの大所帯を見渡し苦笑いする。
「噂には聞いてたけれど、本当にアポなしなんだな…」
円堂が眉尻を下げどうしたものかとテレビカメラを見るが、鬼道はグラスの上の男らしい眉を吊り上げ、不機嫌さを隠せない。
「見ての通り来客中ですので、また後日…」
「ああっ! ごめんなさい! そこを何とか…!」
こういう時にすらカメラが回っている。後日編集された時に、『取材拒否』とか何とかテロップが入る事だろうなと、何故か豪炎寺まで一緒になって拒否しているのをぼんやり見つつ円堂は思った。
「まあまあ、後日となっても色々アレだし、手狭だけれど入らない事ないだろうし…」
面倒臭いという言葉を辛うじて飲みこみながら、円堂はプロ用の営業スマイルでテレビも受け入れる事にする。
「テレビに流す時には、後光と『円堂さんマジ天使』というテロップを忘れずにな」
その言外の言葉を十分に理解した豪炎寺が、何故か家の主を差し置いて、ドヤ顔で言った。
この時点で、もう、神童と剣城は、今日の日が大惨事になるとしか思えず遠い目になる。おまけに今日は雷門最強の爆弾投下魔たる天馬もいるのだ不可避だろう……。
「どうぞ」
この円堂の言葉が、破滅の始まりだった。
レポーターは、まだペーペーの女子アナ。こういったある意味強引な企画は『うちの若いのが失礼しました』で済ませて貰えるよう、こういった人選になる事が多いという。
しかも、このレポーターは、普段アイドルばかり追いかけていて、サッカーは足しか使えないスポーツ程度にしか認識していない、つまりは円堂や鬼道の人物像や経歴等もウィキ先生にお伺いをたてたぐらいでしか知らない、ど素人。
「皆さんは、お二人のサッカー教室の生徒さんですか?」
「…………」
何処から、どう突っ込めば? 世の中の広さを思い知らされた、ホーリーロード優勝校のサッカー部員達だった。
おいおい、こんな何も知らない人がレポーターで大丈夫なのか? と、早くも暗雲が垂れ込める。
「ご、豪炎寺さん…抑えて下さい!」
即行、このテレビ局に『モグリ局』とラベルを貼ったのに違いない豪炎寺が、呆れる家主二人に代わり、こめかみをピクピクとさせているのに、気苦労の絶えない剣城が必死に宥めにかかった。
「こちらが居間です」
とにかく、ようやく居間に案内して貰えた。
いや、確かに、この豪邸な時点で中が普通な訳がないとは思っていたが。
「何これ、何のセレブハウス!?」
うわ…っと叫んだのは、マサキである。
何型と聞くのが恐ろしい大きな薄型テレビが重くて渋い色のオーク材のラックの上に鎮座し、それを視るのに適切な少し離れた場所で値段を聞くのも恐ろしい高級そうな黒皮のソファーセットに、その他諸々激選された家具の数々に圧倒され、セレブな神童とそれに慣れている親友霧野以外の雷門っ子達の背筋がピンと伸びた。
この二人、現役時代いくら稼いでいたんだ、恐ろしい子…ッ!
応接間もあるが、そう長い事居座って貰っても困ると計算した鬼道の計算に基き、ダイニングキッチンにも繋がった此処に座って貰いテレビクルーの応対をする。
「生徒さんでなくても、驚きます。このソファーなんかも物凄く高そうなんですが、おいくらぐらい……?」
知らないって恐ろしい! 女子アナの質問を聞いた豪炎寺の特徴的な眉が怒りの角度に吊り上がるのを見た剣城と輝が、大慌てで世界一の円堂と鬼道バカの腰に巻き付き、ファイトル制裁を阻止したのだが。
「おれも、知りたいです! 凄く良さそうですし!」
無邪気な天馬の爆弾が、早くも炸裂した。
バカ野郎! と、神童と剣城の拳が彼の頭上に落ちたが、一度出たセリフは引っ込まない。少し困ったように頬を掻く円堂が、同居人に助けを求める。
「そうだな、値札とかついていない店だったから。鬼道が払ってくれたし…覚えてる?」
これまた無邪気な同居人の要望に、しかし応えた事のない鬼道が、サラリと本当の値段を答えた瞬間、一部を除く少年達が後ずさった。
「やっぱり、鬼道、高過ぎたんだよ」
やはり内心ドン引きな円堂の言葉に答えたのは、やはり鬼道だけではない。
「毎日使うからこそ、妥協は良くない」
「最初の投資が高かろうと、何十年も大事に使えば、大した事など無い」
「そうか。大事に使う」
双子のように気の合う二人に、仲いいなーとにこやかな円堂。通常運行すぎる三人に、雷門の常識派達は疲労を禁じ得ない。
「そうですか、家具は鬼道さんが決められたんですね」
こうやって、なし崩し的に始まった取材に、神童の胃は早くもキリキリ痛み始める。
「はい。おれは無頓着で、鬼道と豪炎寺二人が殆ど決めちゃいました」
「友人の豪炎寺さんですか…やはり、サッカー関係の?」
ここでポッカリ空いた沈黙の間に、オンエアーではきっと豪炎寺のプロフィールや経歴が映し出されて、スタジオの無知を詰る声が入るだろうなと、豪炎寺は他人事のように流しつつ、はい、と答えた。
「彼らとは、十年来の付き合いです」
カメラや集音マイクのクルーの顔が、引き攣っている。彼らは、サッカーを知る者なのだろう。
この中で唯一彼らの価値を知らないアナウンサーのインタビューが、続いた。
「お二人は、日本代表まで務めたサッカープレイヤーとお聞きしましたが、トロフィーの類がテレビの隣のもの以外見当たりませんね…どこかに飾られておられるのでしょうか?」
ここの間は、つなげる予定でした。
「あ、そもそも、どうして二人は同居を?」
ま た この怖いもの知らずが…! と固まった周囲の空気に、しかし、円堂と鬼道の顔は一気に和らぐ。
「色んな事があってな、このまま放って置くといつかどこかで野垂れ死なんかと心配だったから、首に縄を引っ掛けておく事にしたのだ」
「その件では、鬼道にスゲー心配かけたって思ったから、気の済むまで一緒に暮らそうって」
「円堂、俺は、一生一緒と言った」
「ああ、解っているって。約束したろ?」
ニッカリ笑った円堂の左手薬指に輝くものを示せば、二人の絶対味方な豪炎寺と無邪気な天馬以外の雷門の者はそれぞれの手段で天を仰ぎ、テレビクルーは超次元展開に息を飲み固まった。
「な、な…」
なんで結婚指輪!? と、まともに言葉を綴れない彼女に答えたのは、悪い顔をした鬼道である。
「これは元々、豪炎寺の頼みで結婚式やった時に付いてきた指輪だったが、一生一緒に暮らすんだったら女性に余計な期待を持たせてはいけないと思ってな」
ちなみに、解っていそうで解っていない、極天然の回答であった。
だが、テレビクルーは必要以上に解ってしまって、硬直する。
ボツなのでしまい。
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