またしても、開きました。すみません。
今日は、短いですがボチボチ打ってます。
まだプロローグ部分ですが、明日以降の文章も打ってますので明日も更新できると思います。
【Sunset Town】
わかっていた、ことだった。
ガロが、本当は、この様な爛れた関係を嫌がっていることなんて。
リオは、復興の進んだプロメポリスのビル群に沈みゆく夕陽を、どこかぼんやりと眺めている。
この日を終える太陽が再び昇る時には、自分たちの関係は終わりを遂げているかもしれない――そんな別れの予感から、逃避して。
夕陽は、世界を赤く赤く、燃え上がらせていた。
かつて自分たちが操っていた炎とは違う、自然の圧倒的な美しさ壮大さ容赦ない力こそが、ガロとの関係を無かったことにするような悲哀に、心が沈む。
そして、二度と浮かび上がることはない。
愚かな、リオ・フォーティア。
お前は、望みすぎたのだ。人並みの人権だけで満足しておけば良かったモノを。
プロメアの炎を喪い冷えてきた世界に震えて、新たな温もり(ほのお)を求めてしまった……。
愚かな。
――リオ・フォーティア。
かつて己の愚かさ弱さ小さきを思い知らせた、敵の声が聴こえる。
孤独だった。ガロを手放したとして、その後、どう生きるかなんて想像もできなかった。
この、空っぽのビルの谷間のように、否。
「この世界、おかしくないか?」
リオは、夕陽に染まった瞳を瞠り、息を飲む。
このプロメポリスのビル街に、人っ子ひとりの影も無い。
「これは……?」
心を占める絶望と世界が終わったかのような寂寥に、茫然自失となったその時――リオの沈む精神へと雷鳴が鞭打った。
――愚かな、炎使い!
「黙れ クレイ・フォーサイト!!」
ガロを誰よりも傷付けながら、今なおその心の多くを占めている男が、心底疎ましい。
もう、プロメアはいないと識っていながらも、燃やして消し炭にしてやりたくなって、声のする方へと視線を向ければ――金色の蛾が、一頭。
――此方、だ。
その意思を示すように明滅する蛾が、金の鱗粉で道を照らしながらひらひらと飛んでゆくのに、リオは何故か逆らう気にもなれず、とぼとぼついていった先に。
「Mayoiga……」
ビルとビルの谷間に位置する小さな煉瓦の建物、数段昇った先にある重厚なオークのドアの横のランプに蛾が飛び入り、灯となる。
リオは、その不思議な光景を、しかし、この段に至っては何の感慨も関心も起こすことなく、ドアのノブに手をかけ中に入る。そうするのが、自然だったからだ。
(続く)
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