鉢屋三郎は五年で一番の優秀な生徒だ。五年で出題される任務は簡単すぎる。三郎は闇と茂みの中に紛れ込み頭巾を口元まで上げる。
「あ…念のために雷蔵の顔とは別の顔にしておこう……さて、サクッと行ってきますか」
三郎はひょいひょいと木を飛んで渡り、見えてきた城を眺める。三郎は小さく笑った。
「わっ!!三郎これ忘れちゃダメじゃん!!」
「あー…武器か?三郎どこまで行っちまったかなー…」
「まだそこらへんにいると思うし僕ちょっと探してくるっ!!!!」
長屋に残っていた雷蔵と八左ヱ門は床に置いてある三郎の武器を眺めながら騒いでいた。
武器は念のためのもの。見つからないように行くので武器は使わない方がいい。しかしもしもの場合のために持っていくのだ。
雷蔵は三郎の愛用している武器を懐に入れ、外に飛び出した。
「たしか…あの城だったな…」
雷蔵は全力疾走で茂みを走り抜ける。三郎の気配はまるっきりない。息をあげて雷蔵は小さな殺気に気づき木の上に飛び乗る。
その瞬間背中に激痛が走りバランスを崩して木から落ちてしまい、しまったと思った時に目の前に知らぬ者の姿。背中には手裏剣が二枚
相手は少数だ。手首に忍ばせている武器を使うか使わないか悩んでしまう。
「ここで何をしている…?お前は……鉢屋三郎か?」
「ちっ、ちがいますっ!!」
「いや、こんな顔をしていた。気をつけろと言われている人物だ。」
「殺しておくか…?厄介な奴だ」
「っ…!!」
「あーあ。呆気ねぇ。武器を忘れてきてしまったが守備がまるでなってねぇおかげで全然武器は必要なかったな…」
三郎は任務を早々と終わらせて、ふぁ、とあくびをした。マスクを外し再び不破雷蔵の顔にする。
ふと、茂みの中が騒がしいことに気付き、ちょっとした好奇心でその場所に気配を消しつつ近づいてみる。
「……!!」
「呆気ねぇなぁ。鉢屋三郎さんよ」
雷蔵…!?
数人に囲まれ倒れている雷蔵が三郎の視界に入った。人違いをして雷蔵に手を出したのだ。
三郎は相手への怒りと自分の今までの間違いへの怒りにふつふつの頭を煮えつかせていた。
なんてことを…!!!
「貴様らぁああ!!!!!!」
「!?鉢屋三郎が二人!?」
相手を殴り刀を奪いぐさりと腹に突き刺す。相手は血を吐いてばたりと倒れる。
「私が鉢屋三郎だ!!この屑人間共が!!!」
ぼたりぼたりと涙が落ちた。自分が悪かったのだ。よくわかっていた
雷蔵…雷蔵、らいぞぉ…!!!
「許せ雷蔵…!!!!!!」
相手を全て斬り捨て、雷蔵に駆け寄る。
息はしていた。三郎は雷蔵を抱き寄せると雷蔵はうっすら目を開いた
「雷蔵…」
「三郎…また悪いことしたんでしょ……勘弁してよね…」
雷蔵は小さく笑った。血まみれの顔で笑っている姿に三郎はごめんと呟いた。
「雷蔵、私を殺せ」
「三郎?」
「私のせいだ…!雷蔵、殺してくれ」
「やだなぁ、三郎。
僕は三郎がいないと生きていけないのに、
三郎は僕より沢山生きて。それで今回のことは許してあげる」
三郎は雷蔵を強く抱きしめた。そして雷蔵の血まみれの唇に接吻をした。
夜は、まだ終わらない。
おわり
ずっとあたためていたネタだったのですが、内容が書いているうちに意味がわからなくなってしまって…^^
本当は顔をかえていて三郎がどこにいるかわからなくなる雷蔵を書きたかったの。けど無理だった。