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晴天に降る過去の面影(三蔵)※

ただ打ち付ける雨に恐れおののき、自らの過去に心の内で鳴咽する
鳴り響く雷鳴に愚かな罪を重ね、無力だったあの日を思う

例え辺りが雷の所為で昼の光を持ったとしても、染み付いた闇は消え失せない
幾ら紫煙にまみれても、幾ら目を閉じようと、瞼の裏に浮かぶ残像は嫌に鮮明で狂おしい

脳内に侵入する雨音からは逃れられず、非情な景色だけ虚ろな自らの目に入れる
気がおかしくなりそうだ

地面に落ちる雫など、余計なことを晒すだけで、誰も求めてはいないのに
窓を割って入ってきた雨が許しもなく法衣を濡らす
手の甲に伝う透明さが憎い

たかが一つの自然現象に踊らされている自分
そう思ったとしても堕ちていくだけで止められはしない

奥底に閉じ込めた暗く苦々しい記憶を、思い出さないよう努めたとしても、無言で降り注ぐ曇天に雨
それならいっそ、永久に降り続いて罰を与えればいいのに

希望に似た蒼空が絶望に沈むことすら許さない
空は光ある世界の中で冷たい罪の記憶に溺れろ、と言う

そんな風にしか、憎い程晴れた空を見れない愚かな自分
いつになれば終焉は来る

終わらせるのは己か、否か

彼が彩る虚無な景色(三蔵)

「生きるってのは難しい。困難で必死だから余計なことなんざ考えちゃいられねェ。止まるのが怖いからなりふり構わず走ってんだ。お前はどうだ、」

"止まるのが怖いか"

読経なんかじゃない
乱雑な言葉で告げられたのに、イヤに神聖なものに聞こえる
まるで浄化されていくように

片手には煙草が白く光って辺りに散らばる
テーブルには小型の重々しい銀色

このいい加減な法師が私に何かをわからせた
荒々しくて仏とは似ても似つかない彼なのに

この殺伐たるオーラが物語っているのは、自分の生き方を貫いて誇っているという事実

彼はその生き方の為に生きている
自分の誇りの為に銃を抜く

一呼吸おいて私は答えた



"怖いから私は生きている"

彼はその紫を少しも濁らせず、笑ってまた珈琲を口にした

迷いを払拭するあの声に魅了されてから、私はずっと此処にいる

掌の心臓(スモーカー)

この世には知らなくていいことが多すぎる
そこら辺に満ち溢れていて、上手く避けることさえままならない

耳を塞いだって入り込む要らない情報に騙され、気持ちが色を変えてしまうから
聞こえないように必死で大声を張り上げていた

しかし安易な防御策は脆くて案外続かない

声が涸れた時、私は世界の闇を耳にするだろう
いつか来るその時が怖くて、ひたすら誰かにすがっていたら、私の耳を覆う大きな手

ふと顔を上げると
真っ青な私にも負けない
白 白 白

かすれた声を出すことも忘れ、私は手の平から聞こえる緩やかな脈に耳を澄ました

驚くほど鎮まりゆく内の恐怖

「俺が逃がしてやる。世に蔓延してる要らない事から」

塞がれた耳から彼の言葉だけ聞こえ、まだ当てられた手の平からは規則正しく血流の音

ドクン ドクンとここにいる理由を私に諭してる



聞き入れる覚悟が出来たなら私からこの手を離すから、今はまだ塞いでいて

月が邪魔する(シャンクス)

夏の風に吹かれると思い出す
夜空に散らばる彩られた火とか、静かに落ちる小さな火とか、その時感じたかすかな焦燥と甘い感情を

去年の夏、潮風が吹く中

隣にはあなたがいて目の前には黒いキャンバス
描かれるのは華やかな炎たち

安易すぎて軽すぎて、口に出来ない美しさ
わたしと貴方は瞬きもしないで静かに見ていた

握られた手のひらに伝わる熱
重ねた想いは忘れない

たまに揺れる隣の紅にわたしは胸を高鳴らせ
また手を強く握った



海面に映る夜空の華
今でも目に焼き付いて、あなたと共に忘れてはくれない

叶うなら、大きな火の華を背に
何か誓おう

それは永久よりも永く

この矜持(シャンクス)

「海賊の女で幸せか?」

いつだか珍しく神妙な面持ちでわたしに聞いてきたことがあった

"海賊"に誇りを持っている彼だったから、そんな事を言うなんて思わなくてわたしは止まってしまった

「この頃やけに追手が多い。戦闘も増えてお前には負担かけさせるだろ。"賞金首"と呼ばれる俺の元にいて、お前は幸せか?」

忙しい中、彼の頭の隅にわたしがいたんだと不謹慎だが誇らしくなった

この大きな船の大頭
それでも近い彼の背中
彼の気遣いからくるその距離に、私は毎回救われてる

そんな彼の少しの不安を、自信を持って払拭しようと一息おいた

「わたしはシャンクスっていう男の女なの。海賊だろうが賞金首だろうが関係ない。わたしが惚れてるのはあなたなんだから」

彼の瞳から目を逸らさないで
堂々と愛を口に出来た

海賊な彼も豪快で凛としてて、わたしの大好きな目をしてる
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