「残された人の気持ちなんて考えないんでしょ!」
彼の胸を力いっぱい叩く
「バカ!…シリウスなんて、」
喉の奥が詰まってよく怒れない
「ごめん。もうこんなことしない」
あの時は、わたしを丸ごと包み込んだまま息が上がった声でそう誓った
今また戻ってきた彼は、その時と明らかに違う
「また、わたしを残していった」
わたしももう胸を叩いたりしない
待たされた間に随分大人になってしまった
「ごめん。すまなかった」
この前よりも、息は荒い
目は窪んでローブはズタズタ
「バカ…」
もうここには戻らないと自然にわかった
彼も
「ごめんな」
謝るばかりで、誓ってくれない
星になったのならせめて居場所くらい教えてよ
夜空は広くて捜しきれない
2008-3-11 23:09
「人殺し!母さんを返せ!」
わたしたちが壊したAKUMAは、まだ全て転換していなかった
AKUMAが砂となった時、後ろには泣き出しそうな子供が一人
その子の目に映るは母を壊したわたしたち
「あの子、どうしてるだろう」
独り言のように呟いた
それに応える兎が一人
「しょうがないさ。まだ転換してなかったってだけでAKUMAだったことに違いはないんさ」
早口でしょうがないと言いつつも、その口調は割り切ってはいなくて
あぁ、わたしと同じ気持ちなんだと気付いた
やりきれない思いは同じ
「これからも、人殺しって言われることがあるのかな」
「あるかもしれないさ」
「哀しいね」
人々のために頑張っているのに蔑まれることに対して?
いや違う
多分そうじゃなくて
その一言に傷付いてしまう自分の弱さが憎い
「下なんて向かずに誇って生きろ。俺らは世界のために命かけてんだからさ」
道は違えど一瞬は共に戦ったわたしたち
人殺しと言われようと、裏切り者と言われようと
生きてく
それしか進む道がないこと、いつからか気付いてしまったんだ
2008-3-11 22:51