他の人には見えないわたしの恋人
「いらっしゃい」
杖を持った
不思議な帽子と不思議なマントを羽織った人
「こんにちは」
髪はすごく柔らかくて、きれいな色
「お邪魔していいっスか」
手や足はちゃんと温かくて、わたしは益々不思議な気分になる
写真には写らない
わたしだけが見える
物には残らなくても
それでも、記憶に残ればいい
冬の晴れの日には、電柱の上に彼が表れて
『こんにちは』
そう言ってくれるから
「どうぞ」
わたしは不思議な彼の全てを愛して
彼もわたしに微笑みをくれて
二人だけのひみつを持つ
2012-2-4 15:35
雲のない月夜
それは美しくも儚い思い出を運んでくる
人間で言えばもう長い時間が過ぎた
一つの情報も与えられないまま、非日常はいつしか日常になり
わたしも、一人空を見上げて泣くことはなくなった
あなたを恨んでなどいない
今も昔も
悲しみの涙は海になるほど流したけれど
何故なら、信じているから
何か理由があって、貴方はわたしの前から消えたのだ
そうでなければ、あんなに優しい人
わたしをこんなにも悲しませるわけがない
もう幻想など抱かない
ただあなたが帰ってくることだけ祈って、わたしはここで待っている
過去の空白など埋めて要らない
今のあなたがほしい
「隊長…」
今日も月は綺麗です
2012-2-4 14:40