「おっしーは医者になるの?」
進路希望の紙が、会話を導くように目の前でゆらゆら揺れる
「あー多分そうなるやろな」
曖昧ともとれる笑顔が返ってくる
彼が何食わぬ顔で言った、"そうなるやろ"の一言
そこに彼の意志が含まれていない
哀しいことだとわたしは目を瞑る
「おっしーで大丈夫かな」
夏風がカーテンをゆらゆら揺らす
「うわ、えらい信用ないなぁ。これでも勉強出来るんやで?」
そんなことじゃない
学年でトップクラスの成績だってことは勿論知ってる
違うんだよ
「おっしー意外と優しいからさ。他の人の色んなこと抱え込む仕事は、ちょっと心配」
伊達眼鏡の奥で黒い瞳はびっくりしてる
「そんな脆ないわ。阿呆やな自分」
ポンポンとあやすように頭を叩いた、おっしーの手は震えていたのだろうか
自分で決められない未来に縛られたら、わたしのところに来てたまには休んでよ
それくらいは許されるでしょ?
2008-5-31 19:46