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子供(忍足)

「おっしーは医者になるの?」

進路希望の紙が、会話を導くように目の前でゆらゆら揺れる

「あー多分そうなるやろな」

曖昧ともとれる笑顔が返ってくる

彼が何食わぬ顔で言った、"そうなるやろ"の一言
そこに彼の意志が含まれていない
哀しいことだとわたしは目を瞑る

「おっしーで大丈夫かな」

夏風がカーテンをゆらゆら揺らす

「うわ、えらい信用ないなぁ。これでも勉強出来るんやで?」

そんなことじゃない
学年でトップクラスの成績だってことは勿論知ってる

違うんだよ



「おっしー意外と優しいからさ。他の人の色んなこと抱え込む仕事は、ちょっと心配」

伊達眼鏡の奥で黒い瞳はびっくりしてる

「そんな脆ないわ。阿呆やな自分」

ポンポンとあやすように頭を叩いた、おっしーの手は震えていたのだろうか

自分で決められない未来に縛られたら、わたしのところに来てたまには休んでよ
それくらいは許されるでしょ?
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