ベロベロに酔っ払ったりんごさんを預かった俺は、日向さんに命じられた通りにりんごさんの家まで送り届ける事になった。
なんで俺が、と思ったけど。
他の死屍累々を世話するよりマシだと判断した。
普段の長髪とは雰囲気の違うりんごさんに、ドキッと、しない。
だって酔っ払いには変わりないんだもん。
普通なら蒸気した表情なんかにドキッとしなければならないのだろうけど、なんかね。
仕事仲間にそういうの求めてないから。
どうにか鍵を探り当てて、りんごさんを部屋に引き入れる。
完全に力の抜けた人間ってこんなに重いのか。りんごさん、細い方なんだけどな。
色々面倒になってお姫様抱っこすると、うぅっとりんごさんが顔を顰めた。
起きたかと思えば、潤んだ目で俺を見上げてギュゥと俺にしがみついた。
なんだ、案外力強くてバランスを崩しそうになる。
「ちょっと、りんごさん」
寝室に運ぶには気が引けたので、リビングのソファにりんごさんを寝かせる。
…としたんだけど、ギュゥギュゥ抱き着いてきて、一向に離れる気配がない。
「りんごさん、重いです」
「しつれいね!」
呂律の怪しいりんごさんは、抱き着いたまま、拗ねたような表情を浮かべる。
いや、俺の方が拗ねていいですよね。
そのまま、力技で俺もソファの上にダイビングする羽目になって、りんごさんを潰さないように、手に力を入れて上体だけでもキープする。
なのにそれを阻止したいのか、りんごさんは余計に力を加えてくる。
「苦しいですよ、割とガチで」
「いちきくんがだきしめてくれないからよ」
…だから嫌だったんだ。
甘い雰囲気を醸そうとするりんごさんをどうにか振り切って、その手を解く。
完全に拗ねた表情。
それを見ないふりして、キッチンに向かう。
「水、あります?」
「…れーぞーこのなか」
「開けますね」
一応の確認。
てか水が常備されてるのを知ってる俺もどうなんだ。
水のペットボトルを片手にりんごさんの所へ戻れば、飲み過ぎでやっぱり辛いのか、顔色があまりよくない。
「ほら、水飲んで横になりましょう」
そう促すと、潤んだ目で俺を見上げてきた。
「いちきくんが飲ませて」
とんだ女王さまだな!
まぁそれで寝てくれて解放されるなら、と受け入れて、ペットボトルの水を口に含んだ。
すると、俺が顔を近付けるより速く、りんごさんが俺の顔を手で挟んで口付けてくる。
口内の水がりんごさんの中へとゆっくり移動した。
なのに離してくれず、そのまま普通の口付けに発展……させないよ!
冷えたペットボトルをりんごさんの頬にくっ付けると、ビックリした様に唇が離れた。
「はい、寝ましょうね」
隙をついて、起き上がっていたりんごさんの上体をソファに寝て、ポンポンと頭を撫でる。
「……つまんない」
「じゃぁ、俺帰るんで」
「つーまーんーなーい!」
「明日仕事でしょう」
駄々を捏ねるりんごさんを宥めて、続けて頭を撫でてあげると、やはり辛かったのか少しずつりんごさんは睡魔に負けていった。
はぁ。
りんごさんの部屋から出て、帰る途中に日向さんに送り届けたと連絡を入れる。
「悪かったな」
そう思うなら、死屍累々と共にりんごさんもお願いします。
つかれた。