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音パレード。わちゃわちゃ。




「あー!知ってるー!」


一番に食いついたのはやはりズミだった。
なんで男が女性誌の読モを知ってるのか疑問もあったけど、そこはズミだ。
ヤツの女好きは計り知れないからスルー。



久々に4人集まって女子会だー!ってなったけど、見た目「男」が2人。
その「男」2人は同じ動機でそう見えるような格好をしていた。
なんでって。そりゃ藍ちゃんと美ぃちゃん守る為。
ダブルデートに見えれば男共も寄ってこないだろう。
そう打ち合わせた訳でもなく、自然とそうなるのが不思議だけど、ある意味自然だった。

雑貨屋巡って、カフェで昼食済ませて、流行りの服をチェックして。
といっても最先端を行く拓ちゃんと美ぃちゃんだから、知識が膨大過ぎて、私と藍ちゃんは頷くばかり。
そんな藍ちゃん珍しい。
途中、美ぃちゃんがファンの子に見つかっちゃって、そこは流石。ファンサービスは忘れず笑顔で対応するの。
拓ちゃんはバレなかったの凄い。完全に彼氏化してた。

そして、お菓子とか買い込んで行き着くのは藍ちゃん家@別邸。
普通のマンションの一室なんだけど、私たち4人だけの為のスペースを藍ちゃんが作ってくれた。
4人が好きなものに囲まれて、ゆっくり寛げる空間で、合鍵なんかも持ってたりして。

本当はそこに泊まって行ってもよかったんだけど、拓ちゃんと美ぃちゃんが明日の朝早いとの事だったので、夕方にはバイバイ。

バスで帰るって聞かないから、バス停まで歩いて送って行ってたら、ズミに会った。
よりによってズミ。

そして私たちを見つけるなり

「あー!知ってるー!」

の一言。


「すごいすごい!寧々ちゃんの周りは美人さんばっかりじゃん!」


何故かバス停まで一緒に歩くなんて言い出して、拓ちゃんが嫌な顔をしたけど、そんなのお構い無し。


「音、寧々ちゃんとか呼ばれてんだ?」

「おぅ気持ち悪いけどな」

「確かに」

「おーい!」


拓ちゃんの厳しいご指摘に胸を痛めながら、美ぃちゃんと藍ちゃんに絡んでいくズミを2人から引き離す。
それには拓ちゃんも賛同して、美ぃちゃんを自分の後ろに隠してた。

無事にバスに乗り込んだ2人を見届けて、溜息を一つ。


「なんでズミが居んの?」

「なんでってー。女の子レーダー?受信しちゃって」

「へし折ってやる」

「ちょ、寧々ちゃん!ギブギブ!」


思いっきり首を絞めてやると、苦しそうにタップ。


「もー。来嘉ちゃんも助けてよー」

「いや、私もへし折りたかったので」

「なんでー!」



日が暮れる。

ナツ。3月と言えば。




「はい」
「え?」

突然差し出された箱。
戸惑っていると、佐藤くんはニッコリと笑って、私の手にしっかり握らせる。


「ほら、バレンタインデーのお返し」

「あ、あぁ。いいんですか?」

「だって愛情たっぷりのチョコもらっちゃったし」

「それは俺も同じだけどな」


キラキラと目を輝かせて言った佐藤くんの横で鈴木くんが言葉を落とす。


「ちょっとー!俺のは特別!特別だもんね!」

「中身一緒だったじゃねぇか」


そうして、佐藤くんと鈴木くんの言い合いが始まって、止めるに止めれず。
困っていると、ふと鈴木くんと目が合って、そうだ、と佐藤くんを無視して鞄を漁った。


「これ、俺からお礼。チョコ美味かった」

「あ、ありがとうございます」

「なに俺無視していい空気作ろうとしてんの!」

「別に普通だろ」


鈴木くんからも箱をもらって。
私の両手には2つの箱。

と思っていたら。


「じゃぁこれ、俺からのお礼ね」


上から声が降ってきて、平介くんが可愛くラッピングしたクッキーの袋を手の上に乗せた。


「わぁ。沢山貰ってしまいました」

ありがとうございます。
と、頭を下げれば手から頂いた箱が落ちそうになって慌てる。


「なにしてんだよ」


呆れたように、紙袋を差し出してくれたのは鈴木くんで。
中身を崩さないように紙袋に入れさせてもらって。
その日の帰り道、後生大事に紙袋を抱えていたら3人に笑われた。



平介くんからクッキー。
鈴木くんからマシュマロ。
佐藤くんからはブレスレットをもらってしまった!
こんな高そうなものを!
でも返すのも失礼だから、有難く頂いた。
メールもするけど、次のお菓子会の時にちゃんとお礼言おう。

しゅん君たちにもホワイトデーって色々もらって。
今年は沢山だった。


日頃の感謝、のお返し。

拓説。初めまして。




「ちょっと可愛いからって調子に乗ってんじゃねぇよ!」


吐かれた暴言に、美はクスリと笑う。


「可愛いって認めてくれるの?」
「は?」
「だってそうじゃん、貴女たちは自分たちが劣ってるから私に攻撃的な態度をとるんでしょ?」
「ふ、ふざけんなよ!」


ビンタが飛んでくる。
と思えば、その振り上げられた手は拓によって止められた。


「よりによって顔はどうかと思うけど」
「あ…」
「これは、その…」
「別に怒ってないから」

どっか消えてくれる?
拓は爽やかな笑顔を見せて、握っていた彼女の手を放す。
明らかな怒気。

彼女たちは蜘蛛の子を散らすように去っていった。


「まったく。美ぃ。挑発しない」
「えー、でも先に言ってきたの向こうだもん」

私悪くない!
そう言い切る美に、拓は頭を抱える。
勝気なのは分かっていたが、これでは仕事にならない。
別に読モの皆が皆、仲良くしろとは言わないが、美は浮いている。
確かに可愛い。本人の自覚もあるだろう。
かと言ってちやほやされるのは嫌いらしいから手に負えない。


「漢だねぇ」

ふと聞こえた声に、顔を上げれば。
同世代くらいの見た事のない女の子が2人立っていた。

「女性だから失礼でしょ」

確かにそうだ。
私は歴とした女で、漢ではない。

新しい読モの子かな?
どちらも整った顔をしている。
でも何処か浮世離れしていて読モには向いてない気がする。

「あぁ、新人とかじゃないから」

私が言いたかった事が分かったのか、「漢」と言った方がへらりと笑った。


「キレイ!!」

美はもう1人の方に突進して行く。
確かに、お人形のような雰囲気で凛とした美しさがあった。


「ねぇねぇ!名前!お友達になりたい!」
「コラコラ美!」

「先程のやり取り、拝見させて頂きました」
「超面白かった!」


そう言って、2人は「麻生」と「楠本」と名乗った。
そして、「藍」「音」で良いと言った。
2人のアダ名らしい。

麻生と言えば、ここの雑誌の親会社じゃなかっただろうか。
そうは思うものの、訊くに訊けず。


「藍ちゃん!音ちゃん!」

美は既に懐いたのか、早速アダ名で呼んでいた。


「美ぃちゃんと、拓ちゃんでいい?」


音が私に尋ねてくる。


「…いいんじゃない?」



仲間が増えた。
果たして彼女たちは何しにここに来たのだろう?

#。世直し2


「こ、こ婚約者たちが世直しとか、どういう意味だよ」

「あれー?まだ気付かないの?」


そう言えば、顔を青くしたのは模部だった。
その肩を抱きに行ったのは音だった。


「今更逃げるなんて許さないよ?」


耳元で囁けば、体を硬くして直立不動。
それに満足したのか、音は藍の元に戻る。


「だからどういう事なんだよ!」
「模部は必死に俺たちのサポートしてくれてたじゃねぇか!」

「これでも?」


食堂にある大きめのテレビが映像を映した。
そこにあったのは、元木や暗野がしたとされていた悪事を仕組んでいる模部の姿。
そして、元木たちを殴る蹴るしている場面。


2度目。
場が凍った。




「な…模部が俺らを騙してたって事か?」
「そんな事してない!」
「でも…」
「あんなの嘘だよ!」


取り繕おうとする模部に、一同は冷たい視線を送る。
その時、音の鳴らした指の音で、食堂の扉が開いた。そして黒づくめの男たちが入ってきたかと思うと、模部を捕まえて何処かへ連れて行ってしまった。


沈黙。


それを破ったのは藍だった。


「さて。悪いのは模部さんだけでしょうか?」
「私たちも散々痛い目に遭ってきたもんねぇー」

「な、俺たちは騙されて…」

「騙されたからって暴力を振るってもいいんでしょうか?」


不敵な笑みを浮かべた藍と音に、息を飲んだ。


「証拠もあるよ」

見る?と呑気に音が言うから、一同は言葉を無くした。








「お前は、俺たちをどうしたいんだ」

「別に」

「じゃぁなんであんな事…」

「唯一言えば、クライアントからの救済の言葉でしょうか」

「クライアント?」

「クライアントが優しい方で良かったですね」

「それは…」

「あぁでも。私たちは許しませんよ」


そんな会話を音はつまらなそうに聞いていた。

#。世直し



「あー!マジ暗野たちと同じ空気吸うとか最悪なんだけど!」


何故か閉じ込められた食堂。
役者は全員揃った。

鍵の閉まった扉には博士と教授が必死に張り付いて、暗号を解読している。

元木と暗野は飄々としま表情で、閉じ込められた室内を見渡した。

3校の部員が、それぞれに元木や暗野の悪口を言う中、それを仲裁しようとする、模部。本当は全然そんな気がないのは見え見え。
部員たちは色眼鏡でそんな事に気付いてはいない。


ふと。
元木が笑い出す。


「何笑ってんだよ!」
「気持ち悪ぃ!」


続けて暗野もケタケタ笑い始めて、場が凍った。

そんな時、教授と博士が暗証番号を解読したようで、赤く光っていたランプが緑に変わる。
安堵の表情を浮かべた一同に。
すると警報音が鳴り響き、ランプが再度赤に戻る。


「な、なんなんだよ…」


一度見えた光に、ヌカ喜びの様子の一同に、笑い疲れた元木は悪い笑顔を浮かべる。


「これなーんだ」


カードを見せた暗野に、一同が目の色を変えた。
何とか奪おうと、血気盛んな切原と桃城がとびかかってくる。

それを、動じるでもなく元木と暗野は2人を軽くいなした。
そして元木は手元にあったフォークを切原の目に刺すふりする。
刺されるという恐怖で切原はギュッと目を閉じた。


「なんなんだよお前ら」

戦意喪失。
そんな2人と、呆気にとられる部員一同。

その隙に、元木と暗野は蓮モチーフのペンダントとブレスレットを付ける。


それに顔を青くしたのは跡部だった。


「お前ら、止めろ」


勝てるはずがない。
珍しい弱気な跡部の言葉に、一同が耳を疑う。


「なんや跡部、何か知っとるんか?」


疑問の声に、跡部は顔を青くしたまま、近くの椅子に倒れるように座り込んだ。


「気付かないし、分からないだろう君たちに教えてあげるよー」


跡部の代わりに口を開いたのは暗野だった。


「私たちは世直しに来たのです!」

「世直し?は?」

「悪い事した子にはちゃんと罰を与えないとね」


ウィンク1つ。
元木の肩を抱いて、ニッコリ笑う。


「私たちは元木でも暗野でもありませーん」

「は?」
「だからなんなんだよ、それ」
「つか、早くここから出せよ!」

「うーん。野次もそれらしくていいねー」


そう言って、答え合わせのように、元木と暗野はウィッグを外す。


「見覚え、あるはずですよ」


元木、基、藍が声を落とす。
2人の本性に、唖然とする空間。

確かに。
いつか跡部のパーティで会った、跡部の婚約者と、その友人だった。
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