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柚多佳。夢見たよ!。




「俺!今日めっちゃ調子良かったんすよ!!」
「へぇ」


今朝も藤代が柚多佳に絡む。
その相手をする柚多佳も慣れた様子で軽く流していた。
確かに今日の朝練の藤代は調子が良さそうではあったのだけど。

「なんでか分かります!?」
「いや、興味ないし」
「ええぇ!!」

相変わらず柚多佳は容赦ない。
ここで情けをかけたら藤代が調子に乗るのは目に見えているからだ。

「もー!冷たい柚多佳先輩も好きですけど!」
「それはどうも」
「実はですね」
「や、訊いてないし」

『好き』と言われても顔色を変えない柚多佳はきっとこれからも、そういう態度を貫くのだろうと、勝手に思う。


「柚多佳先輩が夢に出てきたんですよ!」

「「は?」」

思わず三上と声がハモった。
どういう状況で柚多佳が夢に出てきたのか、問い質したいところではあるが、それでは俺の余裕のなさが露呈してしまう。


「夢だと柚多佳先輩が俺の頭撫でてくれてー」
「有り得ないな」

間髪入れず、三上が反論する。
そのやり取りを見ていた柚多佳は、何を思ったのか、一緒にいた笠井の腕を引っ張って、会話の輪の中に入れる。
それを不思議に思っていると、笠井も何故引っ張られたのか分からない状況。

すると。

柚多佳はニコリと人の良さそうな笑みを浮かべて、迷うことなく笠井の頭を撫でた。

その場にいた俺たちは、笠井を含めて、硬直してしまう。


「なっ!」

一番に現実に戻ったのは藤代だった。
ぼぅとその様子を眺めるに留まった俺と三上は反応が遅れる。

「なんで笠井はいいんですかぁ!!」
「藤代は夢で撫でられたんだろ?」
「そ、そうですけど!」
「三上には有り得ないって言われたからさ、そんな事ないんだぜって」
「なんで笠井なんだ?」


何が起きたのか、未だ分からないらしい笠井の肩を藤代が揺すっていた。
ハッと我に返った笠井は俺や三上からの視線で顔を青くしてあるのが分かる。

「だって、笠井も今日頑張ってたし」
「…俺たちが頑張っていないとでも?」
「そうは言ってないだろ、でも」
「「?」」
「お前らの頭を撫でるのにどれだけ勇気が要るか知ってる?」
「…勇気?」
「ファンクラブって怖いんだぜ」

そういえば、ウチの蹴球部の一部選手にはそういったものがあると訊いたことがある気がする。
…そんなに怖いのか?
女子の考えることは分からないが。

一番近くに居た俺はおもむろに、柚多佳の頭を撫でた。
三上からの視線は痛いが、どうしてもそうしたかったのだ。
サラサラの髪は撫で心地がよく、手を離すのが惜しい、と思っていたら、藤代から容赦なく手を叩き落とされた。

「キャプテンがよくて俺がダメってことないですよね?」
「いや、不意打ち。許さん」

そう言って、柚多佳は笠井の後ろに隠れる。
盾にされた笠井はオロオロとするばかりだった。






俺の特権と思っていたが、図書室で柚多佳の髪に触れる三上を見て、敵が多いことを改めて思い知る。

柚多佳も満更でもない感じ。
俺は不利かもしれない。

柚多佳。踊ろうぜもっと。*


夕方。

シゲに呼び出されて、桜上水中に足を運んだ。
先に着いていた制服姿のシゲは私を見るなり笑顔を浮かべて、近付いてくる。

「ちゃんと来たな」

偉い偉い、と頭を撫でられて、睨み上げるとシゲはしれっとした態度で私の手を握った。


「もう残っとる生徒もおらんねん」

それが何を意味したのか、すぐに察してしまう自分が嫌になる。
手を引かれ校舎に入り込んで、空き教室なのだろう、少し埃っぽい教室に連れ込まれる。


「意味、分かっとるやろ?」

その返事をする前に、シゲに唇を塞がれる。
最初こそ触れるだけのキスだったのが、酸素を求めて口を広げた隙に、舌を滑り込ませる。
頭がぼーっとするのだけど、ブラウスの下から忍んで来たシゲの手に、思わず体が跳ねる。

「ウチの姫さんは可愛ぇなぁ」

シゲの呟きは私にも聞こえて顔に血が集まるのが分かった。
普段から「格好いい」「王子」と言われるのには慣れていたが、まさかの「姫」扱いに戸惑うばかりだ。
私はどんな表情をしているだろう。

そんな事をぼんやり考えていたら、ブラウスのボタンは外されていて、シゲの手は下着のホックに回っていた。

「、ちょっ!シゲ!」

私の言葉は御構い無しに、首筋や胸に顔を擦り寄せてきて、時折舐めるのだ。
くっ…と身体が反応する。
それが面白いのか、シゲは何度も胸の突起を執拗に舐める。反対の手は下半身に伸びていた。

身体が動かない。かろうじで動いた腕でシゲの手に対抗するが、快感が体を走って全然効果は無かった。

「萌える」

そう言ったのを聞いて、逆効果だった事を知る。
スルリと、いつの間にかスカートのホックも外されていて、簡単に衣服は脱がされてしまった。

まだぼーっとした頭のまま、シゲの次の動きを見ていたら、私の脚の間に身体を滑り込ませて、秘部を指で撫でてきた。

「ちょっ!シゲ!!」

そう漸くぼーっとしていた頭がクリアになって抗議すると、ニヤリと笑ったのが分かった。
事もあろうか、シゲは私の抵抗むなしく秘部を舐めた。
ヒイィ、と声にならない声が出る。

「気持ちえぇのやろ?」

舐めながら喋るから、変な感覚に襲われる。
口から声が漏れないように、両手で口元を押さえた。
すると、舌ではなく、今度は指を挿れてきた。
節くれだった指がナカで、ゆっくりと動く。
痛みに、生理的な涙が出る。
するとシゲは私の目元にキスをして、そのまままた唇に触れるだけのキスをする。

ナカがだいぶ解れてきた頃に、シゲはそそり立ったソレを、私に見せつけるように下着を脱いだ。

絶対入らない!
そう
思うと、それを察知したのか、苦笑いを浮かべるシゲ。

「安心しぃ。無理にはせぇへんから」

そう言ってゴムを付けて私の腰に手を回す。
右手で器用に私の両手をまとめ上げ、腰が進められる。
無理にこじ開けられる感覚に、顔をしかめる。
それを見たシゲは、またあやすように額、頬、鼻、瞼と、キスを落としていく。
唇に達する頃には、シゲのソレは奥まで入っていた。


「動くで?」

疑問形ではあるが決定事項に、何度か頷く。

快感というのだろうか。
その波が押し寄せてくる。

閉じていた目を何気なく開けてみると、シゲが愛おしいと言わんばかりに、私を見つめていた。

何度かの快感の波に溺れていると、シゲが爆弾を落とす。


「この箱、終わるまで止めへんからな」





合成ゴム。

柚多佳。赤い糸の先。



シゲに会った。
それも、卒業式の日。
両手に紙袋を提げたその姿はさながら結婚式帰りのようで笑ってしまった。


「高校、京都?」
「おん。離れ離れになるん淋しいんか?」
「いや別に」
「冷たいやっちゃなぁ」
「蹴球やってりゃどっかで会うだろ」
「せやな、なんせ俺ら赤い糸で繋がっとるしな」
「それ、どこまで本気なのさ」

そう言うと、シゲはケタケタと笑い紙袋を地面に下ろす。
と思ったら、両手で頬をホールドされた。
思ってもみない行動に驚いていると、片手が前髪を掻き分け、額に触れる。

思わず目を閉じると、額に温かいものが触れる。
ちゅっ、と音がしたのを考えると、キスされたのだろう。

「顔色変えへんねんな」
「いや、驚いてるよ」
「普通やったら慌てたり、真っ赤になったりするもんやん?」
「赤い糸で繋がってるから大丈夫なんじゃない?」
「な、なんなんその殺し文句」

やった方が赤面するって。
因みに私は殺し文句を吐いたつもりはない。

「あー、あかん。柚多佳には敵わへんわ」
「突然キスしてくる奴に言われたくねぇよ」
「サプライズっちゅーやつや」
「ふぅん」
「全っ然、効果なかったけどな」

シゲが提げていた紙袋を1つ持つ。するとシゲは頬を緩めて改めて私を見る。

「柚多佳はホンマ王子やな」
「何それ意味分かんない」
「まんまの意味やで」

そんな柚多佳も好きやけどな。シゲは言葉を続けた。
シゲの言葉はどこまで信用していいのか分からないから、深くは考えないようにした。


「まぁ、卒業おめでとうっちゅーことで」
「そうか、シゲは学年1つ下になるんだよな」
「王子先輩」
「キモいから止めろ」
「ハハッ、せやな」


シゲとは寺の前で分かれて、私は仕事の為に駅に向かった。

シゲにキスされた額に触れる。
まだ温かい感覚が残っていてなんだか落ち着かない。

柚多佳。いつか届くと信じて。


高等部に上がった。
また一からのやり直しに、初心に戻る気分だったが、王子は相変わらず王子だった。

話す機会は増えた。
中等部は男女別棟だったのが、今は共学である事に、どの生徒も喜んでいるようだった。


「渋沢、人気者。流石だなぁ」
「柚多佳こそ、」

それに続く言葉は出すことが出来なかった。

柚多佳は王子だ。
男子が一緒にいてもそれが霞むほどに、格好いい。
そして、同性であるが故に、女子たちからの支持も厚い。そして熱狂的だ。

「…どうした?」
「あ、あぁいや」

何でもない、と首を横に振れば柚多佳はクスクスと笑う。
あぁその表情も好きだ。

柚多佳への気持ちはひた隠しにしてきた。
伝えたところでNOと言われるのは分かっていたし、その後が気まずい事も含めて、俺は友人として振る舞う。
実際はきっと気を遣わせないように、友人としていてくれるような奴だとは思ってはいるのだが。
そういう点でも、王子なのだ。
全ての好意に平等に対応する。

ひた隠しにしていた気持ちだったが、俺だけを見てほしいという感情が顔を出す。

そんな中だった。

「王子と渋沢くんって付き合ってるのかなぁ」
「えー」
「でも、凄く仲良くない?」
「あの2人ならお似合いだよねー」

盗み聞きするつもりはなかった。
だが女子生徒たちが話す、俺と柚多佳の関係。
「お似合い」という言葉に、気持ちが躍る。

そんな気分で教室に戻ると、柚多佳と親しげに話す三上の姿があった。
それを見て、密かにキャーキャーと声を上げる女子生徒たちもいる。

ぬか喜びなのか。

少し冷静になれば分かることだ。
柚多佳は王子であって、誰にでも平等なのだ。


俺の気持ちは宙ぶらりん。

柚多佳。吐く息白く。



「正月から精が出るな」
「…柚多佳か」
「悪かったな、私で」
「そういう意味じゃねぇよ」

実家帰りになんとなく学園の方に寄ったら、グラウンドに人影。
その人影には見覚えがあったから、声をかけた訳。

「なに、お前帰省は?」
「近くだし戻ってきた。りょうは?」
「今夜から帰る」
「その前に自主練って?」
「…落ち着かねぇんだよ」

人影の正体、りょうは蹴っていたボールを足元で止めた。
都内組の私は1日だけ帰省して、その日の内に寮に戻るのだけど、地方組のりょうは三ヶ日くらいは帰省するらしくて。危うくすれ違うところだった。
いや、なにも危うくもないんだけどな。

蹴球のない日なんて慣れないのだろう。しれっとグラウンドで自主練に励んでいるなんて、なんてランナーズハイならぬ蹴球ハイ。いや、蹴球馬鹿か。

「お前、今失礼な事考えただろ」
「んーどうかな」
「否定しねぇのかよ」
「あぁそうだ」
「転換早ぇな」
「例のショップの店長が、りょうの事気に入ったらしくてさ」
「あー…」
「また頼みたいって」
「は?」
「大胸筋触りたい訳じゃないから」
「っ!当然だろ!!」

落ち着いてるように見えて、年相応というか、からかうとちゃんと反応してくれる辺り、楽しい。
この前、店長に大胸筋を触られたのを思い出したのか、りょうは苦い顔をする。

「パス練くらいなら付き合うけど?」

話を切り上げて、蹴球の話に変えると戸惑ったように私を見るりょう。

「ブーツで言われてもなぁ」
「あー盲点。悪い」
「いや、俺ももう上がるわ」
「そ。じゃぁこれやる」

ポカンとしたりょうに差し出したのは、実家から待たされた蜜柑。
その蜜柑を見た時のりょうの表情が面白くて、思わず噴き出してしまう。

「ほら」
「おま、食べ物投げるなよ」

蜜柑1つを投げて渡すと、母親みたいな一言をもらった。


「じゃー次会うのは4日か」
「そうだな」


どちらともなく、しっとりとした空気。
冬休みとはいえほぼ毎日と言っていいほど顔を合わせてたから、なんだか変な感じだ。
毎年そう感じる。

吐く息は白い。


「あと3ヶ月か…」
「早いよなぁ」


気付けば私たちは3年生になっていて、今最後の冬を迎えている。
エスカレーター式で、今とあまり変わらない時間を過ごすかもしれないが、やはり何か違うはずだ。


「じゃぁ、お先。風邪引くなよ」
「お前もな」
「おー」



さて。戻るか。
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