「手でも繋ぐか。」
新政府軍からの総攻撃を控えて、戦いの準備を終えた私に土方さんは突然そんなことを言ってきた。
「え?!」
「何だ、嫌なのか。」
驚いて出てしまった声に、土方さんの眉間のしわがよる。
「嫌だなんて、滅相もないですけど。」
ただまさか土方さんの口からそんな言葉が出るなんて思いもしなかった。
しかも、こんな状況のときなのだから尚更。

私の考えなど知らないように、返事を聞いた土方さんは私の手をとった。
握られた大きな手から伝わる暖かさと優しさに、ほっと体の力が抜ける。
無意識に力んでしまっていたのだと、そのときに気づく。
ふと土方さんを見ると僅かに笑みを浮かべていた。

ああ…私、そんなに顔に出ていたのかな。
土方さんに気づかれてしまうほど、不安や緊張が現れてしまっていたのだろう。
今回の戦いで最後だと、分かっている。
私たちは戦って戦って、そして散るのだと。
分かっている。
迷いも、不安も断ち切ったつもりでいたけれど。
「土方さん。」
「…もう平気か?」
「は…。」

はい、と言おうとしたらさらにぎゅっと手を握られてしまった。
「ひ、土方さん?!」
「何だ?」
せっかく不安は消えたのに。
これじゃあ別の意味で緊張して、体に力が入ってしまうんですけど!