2014-7-13 22:03
話題:二次創作小説
一次創作しか基本しないんですが、めっずらしく二次創作書きました。
Twitterの方でリクエストをいただいたので頑張って書いた。
ザクエアです。
CCFF7のザックスとエアリスです。
ゲーム自体も好きだし、何よりこの二人は私も大好きなのでうまく書けてればいいな、と願うばかり。
追記から本文です。
『心の在り処』
「…せっかく作ってくれたワゴン、壊れちゃった」
陽の差し込む教会の中央、花が咲き乱れるそのすぐそばのベンチに腰掛け、エアリスは小さく息を吐いた。
「…待ちくたびれちゃうよ」
彼女が想いを馳せるのは、今は任務でここを離れている愛しい人。
その人――ザックスが任務に就く前に作ってくれた花売りワゴンは、タイヤが取れて動かなくなってしまった状態でエアリスのそばに置かれている。
実はこのワゴン以外にも2つ、ほとんど使っていないワゴンがあるのだが「かわいくない」という理由で仕舞い込んでいる。作った当人は不満げな様子だったが、かわいくないワゴンで花を売る気はエアリスにはなかった。
何度か自分で直そうと試みたが、いまいち仕組みが分かっていないのと、いかんせんこの手のことは不得手なもので、結局タイヤは取れたままだ。
ザックスが帰ってきたらお願いしよう。そう決めてから、花は籠に入れて歩いて売るようになった。そんなある日、ザックスの友人だというソルジャーがふらりと立ち寄った。彼はワゴンを直そうかと申し出てくれたが、ザックスに直してもらう、というエアリスの意思が揺らぐことはなかった。
「ザックスに早く帰ってくるようメールしとくよ」
彼はそう言って、ワゴンを修理する代わりにと花を少し買って行ってくれた。
そういえば、とエアリスは花を眺めながら思い出す。
「お花の勉強、してくれてた、よね」
出会った当初は花になど無頓着でしばしばエアリスに「こら! お花踏んじゃダメ!」と怒られていたザックスも、やがてどこかで知識を仕入れたのか花の世話を手伝うようになった。どうして、と尋ねると「ミッドガルはお花でいっぱい、財布はお金でいっぱい、だろ?」とはぐらかすような答えしか返ってこない。しかし彼女は知っていた。誰もいない間を狙ってザックスがこっそり教会を訪れては本とじょうろを持って水遣りの仕方や肥料のやり方を勉強していたのを。
しかしそんなザックスは今、ここにはいない。
――俺がいないからって泣くなよ〜?
そう言って教会を後にしたザックスの姿は未だに目に焼き付いている。
カンセルと名乗ったザックスの友人曰く「長期の任務みたいだ」とのこと。帰ってくる時期は未定らしい。
そういうことも相まってか、エアリスの心はしばらく前からざわついていた。何か嫌な予感がする。ザックスに限ってそんなことはあるはずがない、と祈る反面、昔からエアリスの予感というか虫の知らせというか、何かそういう第6感とでもいうべきものが外れたことがなく、そのせいで不安が拭いきれなかった。
エアリスはそっと頭のリボンに触れる。
「早く、帰って来て…ザックス」
***
メールを確認したザックスは「マジかよ」と呻いた。
エアリスの花売りワゴンのタイヤが外れて使えなくなってしまったという。ついさっき彼女から電話を受けた時にはそんなこと全く言っていなかったのに。
「何はともあれ、とっとと任務片付けて帰るしかないな」
神羅屋敷を見上げ、呟く。クラウドの案内でたどり着いたこの場所は、かつて実験が行われていたとかなんとか。セフィロスの様子もなんだかおかしいし、早く片付けて引き上げるに限る。そして何より、
――早く会いたい。
任務に出る前、「俺に会えないからって泣くなよ〜?」と茶化すように言ったのは自分の寂しさを紛らわすためで。エアリスから電話がかかってきただけで自分の頬が緩むのが分かる程度には彼女に惚れ込んでいる自覚がある。「会いに行く」という約束もしたからには何が何でも早く帰らなければならない。
「さーて、そんじゃいっちょ仕事しますか」
気を引き締めて屋敷の門をくぐる。待ってろよ、エアリス。帰ったら一番に会いに行って、ワゴンも直してやるからな。
そして、
その後彼が再びミッドガルの地に戻ることはなかったという。