その10
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徒然なるままに日々の話や本の話やゲームの話時々駄作
冬樹が2人を即座に黙らせる。
先ほどのドアが閉まった音以外は何も聞こえない。
“鬼”かな
さあな
3人に全身を耳にしてなにか音がしないか探ろうとした。
引き戸じゃないドアのある部屋、この近くだとどこ?
確か職員室です…あ、
職員室は3人が今いる階にある。
中央廊下を曲がってすぐそこである。
つまりそこのドアが閉まったのだとしたならば“鬼”はすぐそばにいるということ――
3人が息を殺してじっとしていると、さっき曲がってきた角から人影が現れた。
“鬼”――
手元で何かが鈍く光る。包丁だ。
なるほど、『一撃必殺』ってのはこのことだね」
「落ち着いてる場合か! 逃げるぞ!!」
走り出そうとした冬樹は腕を捕まれて動けなかった。
「逃げるの、ちょい待ち」
そう言って連はポケットから“比較的威力の弱い爆弾もどき”を取り出した。そして皐月を見る。
「カッターの刃をパキッと1枚ちょうだい」
言われるままにカッター刃を折って渡す。連はそれと“比較的威力の弱い爆弾もどき”を少しいじっている。“鬼”が接近してきた。
「何やってんだ、来るぞ!!」
「――完成」
連の手から自家製武器が放られた。“鬼”がそれを叩き落とそうと包丁を振りかざす。
「走れっ!!」
その掛け声に、冬樹と皐月は弾かれたように走り出した。
包丁が爆弾に触れた――爆発。
「な、何だ…?」
状況が理解できていない皐月は思わず足を止めて爆発の方を見る。その手前で頭をカリカリと掻く連の姿が目に入った。
「…思ったより威力強かったかなー」
「…爆弾、ですか」
「うん、もどきだけど。なかなかに良い爆発だったと思う」
「爆弾の製造って犯罪じゃ…」
「そこはまあ、正当防衛ってことで。だって向こうだって包丁持ってんだし。目撃者もいないから別に良いでしょ」
「お前、カッターで威力上げただろ」
続いて冬樹からも突っ込まれる。
「良いじゃない良いじゃない、どーせ誰も見てないんだから。それに相手は大した怪我してないよ、ほら」
連は“鬼”の立っていた場所を指差した。そこには微量の血痕が。
「折れた刃1枚じゃ致命傷は与えられないよ、あの爆弾じゃ」
見た目が派手なだけだし、と連は冷静に爆弾の威力を分析する。
「まあ、致命傷与えるくらいのやつが作れないことはないけどね」
真顔で言い放つ連に、冬樹と皐月はわずかに恐怖心を抱いた。
性 別 | 女性 |
誕生日 | 6月4日 |