2009-12-31 11:08
今日で終わりですね。
何か全然実感がないですが……人間が勝手に区切ってるだけで、時間はいつも通り淡々と流れてるんですもんな。
体感する時間の流れも人それぞれ、気分によっても違うかと思いますが、今年は陽野にとって激動の一年でした。来年も益々忙しくなりそうで、今から気合い入れて行こうと思います。
ともあれ、今年一年皆様には大変お世話になりました。来年が皆様にとって平和で楽しい年になりますよう、お祈りしております。
2009年12月31日
陽野あたる 拝
『煩悩のない人生なんてつまらない。』
ごーん……ごーん……
遠くで除夜の鐘が鳴っている。『行く年来る年』をテレビでぼーっと眺めながら、銀時は蕎麦を啜っていた。向かいの土方も同様で、唯一違うとすれば丼がマヨネーズ塗れなくらいか。
子供たちは紅白の終了と共にさっさと退散してしまい(もしかしたら気を使ってくれたのかも知れない)、先程までの騒がしさが嘘のような静けさだった。
「何か今年も家畜の勢いで終わったなあ……」
「それを言うなら破竹な。まあ、確かにぎりぎりまでいろいろあったし仕方ねえだろ」
「来年……ってか、もう今年か?はもっとマッタリ過ごしたい」
「マッタリしてんじゃねえか、いつも。働け」
「ウチは旦那が稼ぎいいからいいんですう」
「………………」
「あ、こっち来るなよ。テメー鐘の中入って一緒に打って貰え」
「あんなところに入るくれえなら、テメーの中に入るわ」
「……サイテーだなお前。どんどんエロオヤジになって行くな」
「鐘叩いたくれえで煩悩が消えるなら誰も苦労しねえよ。受験生の邪魔になるだけだ」
「まあ、確かに」
俺も煩悩だらけだしねー、と笑う銀色。
「煩悩なんて全部人間の楽しみじゃん?それなくなったら、人生つまんないよなー」
「食う、寝る、えっ……」
「黙れ」
指折り数える土方に、銀時は雑誌を投げ付けた。言っていいことと悪いことがある。
「まあ、普通に生活してりゃあ仙人みたく悟れはしないわな」
それは誰とも繋がれない、きっと寂しい生活だ。人の温もりを知っている自分たちには到底送れるはずもない。
「いいんじゃねえの?何かしたいって気持ちなくしたらお終いだろうよ、俺たちみてえなのは」
「そだね」
「人生楽しんだもん勝ちだ」
「お前は?」
「あん?」
「今年楽しかった?」
「……そうだな。楽しかった」
「俺も楽しかった」
にへ、と笑う銀時に、つられて土方も柔い笑みを浮かべた。
「年が明けると生まれ変わるって言うけど、嘘だな」
「生まれ変わったらストレートになってるはずだしな」
「いやいやいや、それはない」
「生まれ変わりたいとか、十四郎は思ったことないの?」
「ねえな。俺ぁもう一度人生やり直しても、同じ選択するって間違いなく言えるし。あ」
「何?」
「でももし……んなことあったら、今度はもうちょいスマートにお前を口説く」
「…………馬鹿」
「その馬鹿が好きなのはどこの誰だよ」
四つん這いでこちらににじり寄って来る土方を、腕を振って牽制する。
「だから駄目だってば!去年コタツでシて、神楽から散々ボコられただろ!?しまいにはお前、簀巻きで粗大ゴミに出されるぞ」
「…………解ったよ」
チッと舌打ちと共にようやく了承した土方は、銀時を横抱きに抱え上げた。あたかもお姫様のような扱いに、アワアワと銀時の頬は一気に赤くなる。
「何やってんのお前!何するつもりなのお前!年の瀬ぎりぎりまでイタいやつだな、おいいっ!!」
「うるせえな。煩悩は実現して消化しねえと晴れる訳ねえだろ」
優しく布団の上に降ろされて、額に口付けが落とされた。
「どうせ塗れんならお前と一緒がいい」
「…………どんな誘い文句だよ、全く」
ぶつくさと不満をこぼしながらも土方の腕に収まったままの銀時は、言外で行為の了承をしているようなものだった。
微かに赤らんだままの頬を見遣ってペロリと舌なめずりをしてから、土方は悪たれな笑みを浮かべてみせた。
「さて……先ずは四十八手でヤり通すか。三が日使えば楽勝だな」
「はあっ!?馬鹿ですか?お前は馬鹿ですかあああああっ!?」
「何だよ……これで一気に48消化してやんだから有難く思えや」
「意味間違ってるから!っつーか、お前の煩悩は108全部それかあああっ!?」
「仕方ねえだろ。何つったって、ひっくり返したら801になるしな」
「もう誰かこいつのドタマをかち割って下さーい!!」
銀時の声に答えるように、除夜の鐘がまた一つごーんとかぶき街に響き渡った。
以上、完。
大晦日話。
ぎりぎりまでケンカップルでぎりぎりまで下品なイタい馬鹿な大人たち。