2010-9-20 15:57
休みでも休みじゃないよ一時も。
あたる心の俳句(笑)
のんびりしたいよー。誰にも邪魔される事なく、まったり土銀したいよー。
『愛はお金じゃ買えない。7F』
※内容黒いので注意してください。
こいつらが、銀時の両親なのだろうか。
想像より幾分か若かったが、銀時と似ているところは一つもなかった。病気での疾患がなかったとしても、顔立ちも纏う雰囲気も何もかもその面影を銀時から感じることはない。
だからか、と思った。
だから、欠片も銀時に愛情が湧かないのか。
銀時の真っ直ぐな眼差しを受け止めることが出来ない者にとって、この白銀は眩し過ぎる。
カタカタと怯えるように銀時の身体が震えた。安心させるように俺は銀時を抱く腕に力を込める。
「おい、聞いてんのか?」
「……テメーらこそ、ここでこいつに何をさせてた」
「ガキにゃ関係ないことだ」
「あんた……ちょっと、アタシこの子見たことあるよ」
女が男の袖を引いて、俺たちのやり取りを遮った。
ああ、覚えのある眼差し。権力や金や名声に靡く、ハイエナ共の眼差しが「ご馳走見ーつけた♪」と舌嘗めずりをせんばかりに俺を見詰めた。
「確か土方グループの次男坊サマさ。トシ何とかって……」
「へえ……そのお坊ちゃんが何だってこの薄汚れたガキを連れて行こうとしてんだ?」
「買い取ってくれる……ってことかねえ?」
物扱いもいいところだ。
自分の子供にそこまで出来る親がいることに、俺はゾッと鳥肌が立った。よく子供を虐待した親ってのが新聞やテレビなんかに出て来るけれど、それともまた次元が違う気がした。
悪意と忌避とで持って、人はここまで辛辣に残酷になれるものなのか。
悪い、高杉……
約束したけど、絶対余計な真似をするなって釘を刺されたけど、やっぱ俺には勘弁出来ねえよ。銀時が許したとしても、俺はこいつらを許せないよ。
「テメーらみたいな屑にくれてやる金なんかびた一文ねえよ。そこを退け」
「おやおや、お坊ちゃんともあろう人が他人のものを黙って持って行く気かい?そいつはあたしたちの息子だよ、放しな」
「退けってのが聞こえねえのか」
パシュッ!!
サイレンサーを付けた拳銃が微かな音を立てて弾丸を放つ。頬を掠めて血が噴き出した。
硝煙を吐き出す銃口を俺の眉間に狙い違わず突き付けながら、男は皮肉気に口を歪めた。
「聞こえてねえのはテメーだろうが。次は威嚇じゃすまねえぞ」
「………………」
俺はゆっくりと銀時を下ろした。
どの道、こいつらが事実を知った俺をただで帰すような輩には見えなかったけれど、
俺は、
銀時を守るためなら何だってやるぜ?
「おー、そうそう。お利口じゃねえか。しかし、血筋がいいとやっぱいい面構えしてんなあ」
ほら、来た。
予想通りの言葉。
俺が大人しくなったと思って、男は無防備に近付いて来る。
まだ射程距離じゃない。
もっと、
もっと近付いて来いよ。
「だけど、あんた。その子はどっちかと言うと男ウケはしないよ」
「別に構いやしねえだろ。ウチの客には淫乱女だって腐るほどいるじゃねえか」
「まあ、片方でしか稼げないなら数を増やせばいいか……」
「まだ10代だろう?一日に4人、いや5人くらいは楽勝だよ」
3、2、1……
「なあ、お坊ちゃん。お前気持ちいいこと仕事にするつもりはねえか?」
0!
パシュッ!!
空気の突き抜ける音。
俺はだらしなく下げられたままにしていた男の手を――手にしていた拳銃を掴むと、銃口を男の腹に突き付けて躊躇なく引き金を引いた。
一度、二度、三度。
男の顔が信じられない、と言う風に歪む。ゆっくりと身体を傾がせた男が、じわりと赤い華を咲かせたのが明らかになったのだろう。
女の金切り声が上がった。
「あんた……っ!!」
パシュッ!!
男の背中越しに今度は女の胸元を狙って引き金を引く。人形か玩具のように衝撃に身体をクルクルと回転させて、女は床に倒れた。
フローリングにとろとろと血が流れて行く。
俺は二人が事切れたのを確認してからようやく、盾代わりにしていた男の身体を投げ捨てた。
「どんな時でも、使わねえならセーフティーはかけておくべきだぜ」
返り血が――他人の体温が気持ち悪い。
「それに……弾丸が貫通しにくい頭を狙うのは馬鹿げてる。抜けても抜けなくても致命傷を負わせられるのは、胴の柔らかい部分だろ」
ゆっくりと振り返る。
全ての物事を見聞きしていたはずなのに、銀時はニッコリ笑って俺に両手を差し出した。
クスリのせいで解ってないんじゃない。
俺だって解った上で、俺が成したことを解った上で、尚且つ手を伸ばしているのだった。
俺は銀時の傍らに跪く。そっと銀時の両手が頬に触れ、愛おしむように労るように俺の髪を撫でた。俺は銀時の手を取り、優しく口付ける。
「よくやった、土方」
俺のキスを甘んじて受け止めながら、銀時は強く俺を抱き締めた。
「お利口で忠実な犬を持って、俺は幸せだよ。ありがとう土方」
「イエス、マイロード」
俺はお前を守るためなら何だってやる。
例えそのせいで人が死のうが、世界が滅びようが知ったこっちゃねえんだよ。
ガキにはガキなりの方法があるってもんだ。
→続く